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メイクアップ! 見知らぬ幼馴染との逆転関係  作者: 長久
1章 嫌いな自分たちに、好きな自分たち
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1話

 プロローグ


 陰気で病的に肌が白くヒョロヒョロ、モッサリしてる僕が大嫌いだ。

 身長が低いのなんて、コンプレックスを増して街のショーウィンドウに写る自分すら見たくない。


 だけど、今……この鏡の向こうにいるのは誰だ?


「似合ってる。最高だぞ」

 

 この中性的なイケメンは、誰だ?

 僕のなりたかった格好良くも美しい姿をした人間が、僕の部屋にいる。

 理想を体現したような見知らぬ人間から、聞き慣れた幼馴染みの声がする違和感。


(かおる)、めっちゃ可愛いぞ」

伶桜(れお)も、格好良い。胸板、うらやましい」

「胸板じゃねぇよ。ぶん殴んぞ」


 男の人が着る服と、女の人が着る服とメイク。

 僕が女装を、伶桜が男装を。

 僕たちは、普段の姿と逆転した服装をして……。

 互いの理想の姿を、見知った幼馴染みで体現してしまった――。

 

  

1章


 校舎裏には光と闇がある。




「――伶桜さん! 私と付き合ってください!」




 幼馴染みの女の子が、女の子に告白されているシーンを目にしてしまった。


 いや、これが初めて目にする瞬間って訳でもないけど……。


 伶桜は男の僕より、遙かに格好良い女の子だから仕方ない。


 まぁ僕も望んで校舎裏に来た訳じゃないけど……。


 やっぱり羨ましいな。


 高校の校舎裏における光と言えば、やはり告白シーンだよね。


 昔から映画やドラマでも多く目にして来た舞台だ。


教室で誰かと感想を言い合う機会すら無い、僕のような男でも知っている定番シチュエーションだ。




「ごめん。俺は誰とも付き合う気が起きないから」




 まさに青春とも呼ぶべきワンシーン。


 それを億劫な表情、声音で断っているのは、かつて兄妹同然の関係だった僕の幼馴染みだ。




 クールに女の子からの告白を断ると――伶桜はクルッとスカートを翻し、颯爽とこちらへ向けて歩いて来る。


 1人称の俺といい、仕草といい……。所作の1つ1つが爽やかで格好良い。


 男の僕よりも女の子の伶桜の方が、何倍……何百倍も格好良い。


 伶桜を見ていると、劣等感に潰されそうになるよ……。




「……ちっ、花崎伶桜か。面倒だな。おい、絡まれたら面倒だ。顔合わせねぇように反対側から回り込もうぜ」




「だな。……それにしても、花崎に告白してた子……。可愛かったなぁ、本郷」


「あいつ、女子からは滅茶苦茶モテるよな。……王子様扱いされて、さぞや気持ち良いんだろうよ」




 気持ち良いなんて、伶桜は思っているのだろうか? 僕は――そうは思わない。




 あの億劫そうで物憂げな立ち居振る舞いを見る限り、抱いているのは真逆の感情じゃないだろうか?




「女が女にモテるせいで、男の俺たちが女にモテないのは気にくわねぇな……。おい、蓮田はすだ。早く歩け」




「……うん」




 体格の良い男たち――本郷とその取り巻き2人が、ドンと僕の背中を押す。


 もっさりと伸びた前髪が揺れ、髪の隙間から伶桜がこちらへ視線を向けているのが目に入った。




 オラついた雰囲気で僕を囲む3人に背を押されるまでもなく、僕は伶桜を避け反対側から校舎裏へと向かい歩き始める。




 女の子同士でも、告白は告白。


 光り輝く青春だ。


 これからイジメという校舎裏に潜む闇へ向かう僕と伶桜では、生きる世界が違う。




 体格の大きなイジメっ子3人に囲まれていたのは、幸いだったのかもしれない。


 物心がついた時からの幼馴染みの女の子――花崎伶桜に、僕のこんな惨めな姿をマジマジと見られずに済んだのだから。




 男の僕と……女の子の伶桜。




 幼い頃は、僕と伶桜は仲が良かった。


 小さい頃は性別の違いなんて些細な問題だったけど、中学になれば周囲も囃し立てる。


 


 あいつと付き合ってんのか、好きなのかと。




 それが煩わしく自然と2人の距離は離れて行き――高校1年生となった今では、滅多に話す事もなくなった。


 幼稚園から、この県立蛍雪けいせつ高校までずっと一緒だと言うのに。




 でも僕は、これで良かったんだろうなと思う。


 伶桜は身長も170センチメートルを超えていて、見た目も中身も格好良い女の子だから、昔から女子に凄くモテるし。




 一方の僕は、今でも身長は160センチメートルあるかないか。


 僕が欲しかった理想の格好良さを、伶桜は全て持ち合わせている。




 もしも伶桜と一緒に居たら――僕は暗い劣等感に押し潰されてしまう。




 大きな校舎の裏側に、別方向から回り込んだ。


 校舎裏は普段から人気が少ない。


 僕にとって昼休みは、1人で昼食を食べられる憩いのオアシス。




 放課後の今は告白スポットになっていたり――僕のような地味で気弱な生徒をイジメやすい場所だ。


 校舎裏には告白のような光と、イジメという闇が共存する。


 それはまるで、太陽輝く明るい昼と、雲に覆われた夜闇のように。




「蓮田、こんなとこまで付いてきてもらって悪いな。これ……昨日ファミレスに行った時のレシートなんだけどさ」




「……うん」




「身に覚え、あるよな? 俺たち、一緒に行ったもんな?」




 僕は行っていない。呼ばれてもいない。身に覚えなんてあるはずが無い。

本作をお読みいただきありがとうございます┏○ペコッ


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最初は「ありがちな展開なのか?」と思っていたけど 読み進めていくと「先が気になる〜」「あ、なるほどね!」 「面白い…」と、あっという間に読んでしまったw これからも応援してます!
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