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25.親切で恐ろしい三船さん
見つかってよかった。接客業をやっていながら、お客さんと接するのが苦手だった。幽霊のようにいつの間にか後ろに立って、助言を与えてくれる三船さんに私はいつも助けられている。
お客さんが満足した様子でレジに向かうころには、三船さんはもういなくなっていた。
多い日は一日に二度、三度と三船さんがそばについてくれる。私が問い合わせを受けたCDを先に見つけて、持って来てくれることもある。
しかし怒るときは、ドスの利いた小さな声で、言葉を掃き捨てるように話すので、とてつもなく恐ろしい。この人にだけは怒られたくないと思う。
さらにいうと三船さんは美人なのだが、とにかくお洒落に無頓着な人だ。社員さんはエプロンの下はシャツと決まっていて、仕事が終わればシャツを着替えたらいいのに、三船さんは夏はエプロンを外すだけ。春と秋はエプロンを外して、シャツの上にカーデガンを羽織るだけ。冬は追加でコートを羽織るだけで、他の社員さんと比べて、仕事終わりにどこかへ繰り出しそうな雰囲気がまるでない。




