24.接客業
後ろから、まだ見つからないの、早くしてよね、とでも言いたそうなお客さんの視線が突き刺さる。在庫データに表示されていた棚に、ルンバマンの『希望の彗星』が見当たらない。きっとどこかに紛れ込んでしまっている。検索して出てきたアニメの棚にはなかったから、次はタレントの棚でも探してみるか。
「なかったら注文するわ。何日くらいかかりますか?」
急かすようなお客さんの声が痛い。
「恐れ入りますが、もう少々お待ちいただけますか?」
在庫データは九枚上がっている。よほどのことがない限りどこかにあるはずなのだ。探し方が悪いのか、見落としたのか。それとも九枚全部ストックに入り込んでしまっているのか。たまに店頭に出したものが全部売れたまま補充されていなかったり、もしくは搬入したまま紐が解かれず、ダンボールに入ったまま倉庫に眠っていることがある。そうなっていてはアルバイトの私にはお手上げだ。見つけることは不可能。売り場作りを担当している社員か、バイトでも早番に聞かなければわからない。とりあえずアニメの棚に戻って、下のストックを開いて見てみよう。腰を曲げ、ストックを引っ張り出そうと取っ手に手を掛けると、
「なに?」
と頭の上から落ち着き払った声がした。三船さんが書類を抱えたまま、私とお客さんのあいだに立っていた。
「ルンバマンの『希望の彗星』が見当たらないんです」
しゃがんだまま相談すると、すっと三船さんの手が一点を指し示した。
「そこ」
指の先に、黄色い派手なジャケットで、ルンバマンがでーんとふんぞり返っているCDが並んでいた。
「お客様、すいません。こちらにありました」
アニメの棚ではなく、となりのサウンドトラックの棚の中央に平積みされてあった。場所は近いが、明らかなジャンル違いだ。
「これよ、もらうわ」
お客さんは黄色のCDを手にとって、表裏としげしげと眺めてから私に渡した。
「あちらがレジになっておりますので、お並びいただけますか」と、お客さんに改めてCDを握り返させた。




