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20.つまんなかった?

 子供だったからだろうか? 存在価値を誰からも認めてもらえなかったからだろうか? 己を肯定するにはまだ経験が足りなかったからだろうか? 多分そうじゃない。才能が膨張し周囲に順応できず、持て余してしまったせいだ。


 美術館では冷房が効いていたが、一歩外に歩き出すと、ジージーと蝉の声がし、直射日光に容赦なく照らされるが、ここもまだ広い青島美術館の敷地内だ。


「なんか、ほっとした。爆発しそうな何かを抱えてる人って、やっぱりいるんだなって思い知った。綺麗なものや楽しいものもいいけど、ときどきは絶望を垣間見るのも精神衛生上いいよね」


「そんなこと思うんだ」

 

「うん。薪さんだって、ああいうのが好きだから、見に行きたかったんでしょう」


「もともとはあまり。どっちかといえば苦手だったんだけど……」


 木陰に入り、太陽が届かなくなった。葉、一枚一枚に日光が反射している。


「そうだね。希望はあるんだと思い出すためにも、絶望に触れるのは良いことかもしれないね」


 と薪さんは言い直した。

 

 バスに乗り市街地に戻ってくると、さっきまでと打って変わり人が溢れていた。


「どうする、どこか行く?」


 騒がしい通りを目的もなく二人で歩いていると、頭上から問いかけられた。まだ夕方だった。


「見たいものがあったらつきあうよ。疲れてたら、どこかお店に入ってもいいし」


 長めの前髪から覗いた目が細くなり、微笑んでいた。線路がすぐ近くなので時折轟音が届いた。


「帰りたいかな。見たいものもないし、それに少し疲れちゃった。飲み物もいいや」


 言い終わって、はっとした。まるで今日のデートがつまらなかったように聞こえたんじゃないか。慌てて薪さんを見上げた。


「薪さんが見たいものがあったら、どこでもつきあうよ。薪さんが見たい物は私も見たいな」


 ああ、そうだ。服が見たいとか言ってくれないだろうか。薪さんに服を見立ててみたい。これもこれも似合うよと言ってみたい。


「僕もない。疲れてるのも同じだから帰ろうか」


 そう言って私を見下ろす目は、笑っていた。


 外でデートをするのは「薪さんは私の彼氏です」と世間に公言しながら歩いているようで誇らしい。だけど、となりを歩いている人の手に触れることもできない。


 だから一刻も早く私の家に帰って、すがりつくように、絡め取るように、背中にぴったり腕を回し抱きつきたい。実際にはそんな鬱陶しい行為はできないけど、外にいるよりは、家の方がきっといい。


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