18.青島美術館
A駅に着きバスに乗り換え、知らぬ穏やかな町並みを窓に映し揺られていると、二十分ほどして「ここ」と首を上げた薪さんに連れられバスを降りた。
到着してすぐ大きな白い建物が見えた。青島美術館だった。看板や建物に鎌田洋のスケッチ画をポスターにしたものが宣伝用にたくさん張られていた。上手な絵じゃなかった。絵の具の塗り方は、技法なんかまるでなくて、ぐちゃぐちゃに筆を置かれている様なんだけど、綺麗と感心しながら見るような感傷は、この絵には無用だった。いったん網膜にその絵が映ると、いきなり心臓を抉られるような濃密で乱暴な躍動感を突きつけられるだけだ。
青島美術館はホールがいくつかあるようで、入り口もひとつではなかった。目の前に二階へ伸びる幅広の階段があったが、それを無視しまっすぐ奥へ進むとガラス扉があり、そこから目的のフロアへ進めるようだった。
ここまで来て、私たちは一度も手を繋いでいなかった。せっかく誰も知らない場所に来ているのに。美術館に入るために手を離す必要もないことが寂しい。
フロアまでの道を歩いているあいだ、予想していたけどお客さんはあまりいなかった。一九七七年に事故死もしくは自殺(不明)した少年の完成作品とはいえない落書きを、こんなところまでわざわざ見に来る人なんてそうはいないはずだ。死んで四十年経っている。そろそろ忘れられても仕方ない。




