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ゲーム内で八年の歳月が経った。

すっと領都で過ごしていた私は、学園入学を機に王都へとやってきている。

色々めんどくさくなってかっ飛ばしてきた。その間にもイベントは起こっていたけど知らん。


「お前ももうそんな歳なのだな」


「お父様。そうですね、月日が経つのは早いものです」


通学路をお父様と同じ馬車に乗って進む。

前回はここで飛び出してアウト判定されたので、同じことはしない。私は反省のできる女。


入学式などの式典では、保護者の参加も認められている。

また、貴族ってことで来賓として招待されることもある。

うちの父は財務のお偉いさんらしいので客扱いであるそうだ。執事から聞いた。


「学園は、小さな社交場でもある。良い相手に巡り合えるといいな」


「私もそう願っております」


言葉だけなら、普通の父親なんだけど。

目が……濁ってるんですよねぇ……。


他のプレイヤーだったらどうするのかな。

幼少期から奮闘して、お父様が闇落ちしないように立ち回るのかな。


馬車止めからは徒歩になる。

私と同じように保護者を連れている人もいれば、一人で、あるいは友人と、護衛らしき騎士や従僕を従えている人もいる。

ここら辺は身分の違いだろうか。学園内では一人の人として互いを尊重しあうように、分け隔てない交流を促されるけれど、結局のところ学生生活も人生の一幕、学校の外でも卒業後にもつながっているのでなかなか難しい話だと思う。


会話もなくお父様と並んで校門まで近付けば、「きゃっ」という可愛らしい声が聞こえた。

ふっと顔を上げれば、女子生徒が、ふざけて押し合っていた男子生徒にぶつかられて悲鳴を上げた所らしかった。


つーかあのピンクブロンド、平民女子キャラじゃん!

そうかあの時の事故死はお前のせいか。平民の子に謝っている赤髪のやんちゃっぽい男子生徒を睨みつけ、ふと、私以上の熱視線を感じて横を向けば、お父様が平民キャラの女の子を夢中で見つめていて。

私が呆然とした顔で見てくるのに気が付いたのだろう。

不自然なほど、にやりと歪めた笑顔を返してくる。


「お前の事だ、この学園の生徒の事を、調べているのだろう? 彼女の名前はなんという」


ごくりと生唾を飲み込む。

私が育て上げた精鋭、情報収集部隊は、時に我が家のために動かしてきたため、もちろん父も存在自体には気が付いている。

だが、言及されたのは始めてだ。

基本的に不介入、よくいえば黙認されていた状況。

答えを拒めばどうなるかわかっているだろう、という重圧が襲ってくる。


彼女のデフォルト名はリリアナ。

珍しい髪色のせいでこの学園へ入学することになった平民。

ふっと脳内をよぎる満開の笑顔。


「彼女はビリケンサンです」


「間違いないな?」


「まちがいありません」


「そうか……ビリケンサン……」


……どうしよう。


娘の同級生に懸想する気持ち悪い父親が、一気に大阪に思いを馳せるおじさんに……。

どこかから怒られそうな気がする!


「足の裏を撫でると幸運に恵まれるそうですよ」


「ほほう、それはそれは……」


いらん情報追加したかも!

でもちょっと楽しくなっちゃったから仕方ない!


「ビリケンサンを我が家に迎える」


それだけ言って、来賓用の出入り口へ向かっていくお父様。


え……それどこの企業に申請すれば……?

いや持ってくることはできないし作るしか!?

クラフト! そうだ、クラフトの仕方を教えてもらおう!!


ここまでをセーブした私はゲームからログアウトする。

まずは大阪について調べないと!

キャラクター生成画面や攻略サイトで平民女子キャラの満開の笑顔を何度も見ていて

満開の笑顔と言えば……せや! みたいな連想ゲームによって出てきたのがよりによって

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