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いろんな孤児院を巡って仲の良い子供が何人かできた。

寄付をするついでに、遊びと称して読み書き算術、体術の素養を確認する。よし。


「トトル」


「なんでしょうか、お嬢様」


「技を教え込めそうな、見込みのある子はいる?」


「何をさせたいかによります」


「情報収集と、情報拡散と、それに伴って発生する戦闘への対応、かな。護衛は別にいらない」


「あー、それなら……大体が見込みありです、はい」


どうやら領内の孤児たちは戦闘民族のようだ。

ここに居るのは争いや病で親を亡くした子供、奴隷として売られてきたけれど、買い手がつかなくて捨てられた子供もいる。

先に言うけど、ここの領内はマシな環境だからね。もっとひどいとこはざらにあるからね。

それを救い出すシナリオが各女性キャラに用意されているからね。


どの女の子を主人公にしても、国歴のいついつにどういったことが起こるかは予め決められている。

だからこそ、周回する人が予言と称して災厄を阻止できたり、ステータスを向上させることで乗り越えることができるのだ。

私だって攻略サイトには目を通している。覚えているかは別として。


つまり、味方を増やすということは、その決められたイベントに対抗するための手段を用意するということだ。

覚えていなくても対抗手段があれば問題ない。年号を覚えるの苦手過ぎるんだ。今年が西暦何年で和暦換算すると何年なのかもわかってないから。


「じゃあ、鍛えてもらえる?」


「人目に触れずにですよね? まずは環境を整えていただかないと」


それもそうか。

いきなり屋敷に子供たちを連れて行って、どこで鍛錬を積ませるという話だわな。


「お父様にお願いして離れの屋敷と山でも貰おうかな」


「いいですね、山。魔物が出ても良いですし」


ストーリーには関係ないが、この世界、当然のように魔物もいるし魔法もある。

本当にどうしてこの設定があるのに学園生活に何の絡みもないのかわからないけど、魔法を使える人はいる。

あと、国境になるような大きな山とか川にはだいたい強い魔物がいる。

そのおかげで国家間の戦争が最小限になっているとかなんとか。そりゃゲームだし後付けで何とでもいえるわなー。


そういや鉄鉱脈がどっかにあるんだっけ。

別のお嬢さんのシナリオだったかな? 色々見たからこんがらがってる。


「んじゃ、用意出来たら鍛錬開始ね」


「雇用ってことなら予算がいりますね」


「……山のふもとで孤児院開業ってことにしよう。他の孤児院から良さそうなのを引っ張りこむ感じで」


「初めてお嬢様主導で行う福祉事業、という体で行けば、面目を立たせるために目をかけた子供を集めても違和感は少ないでしょうね」


うんうん。トトルの言葉に頷く。

彼くらいの教官が何人も用意できるのであれば場所を分散させられるんだけど、如何せん今は人手がない。

だが、まずは着手するという先例があればいい。どうせ先は長いのだし、今の子供が育って次世代の育成をしてくれるというのなら、先行投資として割り切れば悪い話ってほどじゃないし。


「よい顔をなさいますねぇ」


執事に謎の指摘をされた。


「ま、いろいろあるのよ」


仕込みが上手くいきそうだったら誰でも笑顔になるじゃん?

私はここまでのことをセーブした。

こまめなセーブが攻略の鍵だと友人に聞いたので。





表には出てこない数値として、信頼値と運命値というものがあるらしい。

今日も今日とてお互いの進捗状況をラインしあっていた私と友人であるが、あると思われていた裏パラメーターがほぼ確定情報になったとのことで、少し興奮気味に語られた。


『ひゃっほおぉーーー! これでやっとリドケイン様にドナドナ歌わせってああばばばっばあ』


「落ち着いて人間に戻って」


『人間だわ落ち着いた で、信頼は相対的だからガードを緩めて打ち込めばいけるらしいのね』


「ボディブローのようにじわじわ効いてくると」


『そんな感じ? こっちが信頼できる人物だと証明できればある程度のお願いは聞いてくれるらしいから、これでやっと渋声ボイスで超低いドナ聞ける』


なにをどうしたらそれが楽しみになるのかはわからないけれど、友人が少女の頃から病みつきになっている声なので、彼女なりのこだわりがあるのだろう。安元ボイスで安眠できない歌を聞きたい気持ちはなんとなくわかる。

というか、わざわざゲーム内で聞かなくても、超有名声優さんなんだからどこかで披露してそうなもんだけど。


『クラフトしまくってた苦労が報われる!』


「で、具体的にクラフトでどうやるの? 信頼値を運命値で削り殺すんでしょ?」


『違う 相手の信頼値よりも高い信頼と相手の周囲に対する運命値を下落させて相対的に自分への信仰心を上げる』


たちの悪いマッチポンプじゃねーか。


「まあなんとかやってみる 成功したら報告するね!」


『楽しみにしてる! 頑張って!』


ここら辺の裏パラメーターは、ゲーム内で必然性を演出するために必要だそうだ。

攻略サイトを見て初見でそのままの言葉を発するより、相手と交流をして知人友人になってから言葉を発したほうが威力が高いと、そういう事だね。


やってくれるな人工知能。

やや面倒くささが目立ってきた。ともあれ、友人にも先が楽しみと言われてしまったので、もうちょっと遊んでみよう。

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