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さて、卒業パーティも終わるわけだし、私もエンディングかな。

タウンハウスに戻ったら終わりかなーと考えていたら、王族がいる方から、バチンッという小気味いい音が聞こえてきた。

ざわつき始めた会場が、またしてもシンとする。


「なっ、何をするんだイェレネ……!」


「信じられませんわ! ロートリシュ卿にあんなことを言うなんて!!」


おっとぉ!?

静かにフェードアウトする予定だったイェレネちゃんが、腰を抱いていた王子をバチコーンとビンタしたみたいだぞぉ!


「ロートリシュって……イェレネ、お前も知っているだろう!」


「ええ、何度も愚痴を言われましたわ。そのたびに我慢していましたの、あんなに素晴らしい方をこき下ろすなんて、無知蒙昧も良いところですわ、見る目がなさすぎますわ、性根が腐っているのはあなたの方ですわっ!」


「なっ、お前!」


「殴りますの? 結構よ! ロートリシュ卿も、貴方の癇癪につきあって、何週間も治らない怪我を負いましたものね! 八つ当たりで忠言をする相手の顔に傷を残すなんて最低クズ野郎ですわ、家畜に劣る所業ですわ、筆舌に尽くしがたいほど、生涯の侮蔑を込めても足りないくらい最低最悪の性格ですわっ!!」


「イェレネ!」


「イェレネちゃん!!」


「きゃっ、」


激昂したアストアールがイェレネちゃんの胸倉を掴む、瞬間にサブリミナル効果ってくらいのスピードで割り込んできたクイーンが王子の胴体を横から抱き込んで、そのまま背後へ投げ飛ばすようにジャーマンスープレックス。


……あっ、頭が!

さすがの私も心配になるくらいの見事な投げっぷりである。


「おばあ様?!」


「王太后様!!?」


「母上!? ここはリングではありませんよ!!」


壇上の人達も大パニックである。

あ、ユスパの人は大爆笑してる。


「甘ったれてんじゃないわよ、クソガキがぁ! ちょっと策略にはまったからって何なの! リングファイトする度胸もないくせに威張ってんじゃないわよォ!!」


「母上! 言葉が! 言葉が乱れています!!」


「うるさいわ、アンタも同罪よ!」


「いやー! 場外乱闘はダメです、誰かゴングを、ゴングをーっ!!」


あ、執事服のおじさまがめっちゃカンカン鳴らしてる。

その音を聞いて正気に戻ったか、クイーンが一番目立つところでウィナーポーズをとっていた。

そして沸き起こる拍手喝采。

わからないのは私だけだろうか。他の人達は感動したとか言って涙ぐんでいる。


もう一度言う。

わからないのは私だけだろうか。





残っていたら、巻き込まれそうだったので早々に帰宅した。

ほら、スカーレット様とかイェレネちゃんとかクイーンとかにさ。

親父を置いてきたけど、この後は王太子任命に関する慶事のあれこれが続くので、そのどさくさに紛れて関連書類を処分する手はずである。

書類だけ抜き取れなかったら、関連部署を燃やす。

その前に、放免状取れるか試すけど。一応は、スカーレット様が王太子になるための立役者だったわけだし。


いつもの執務室。

トトルから書類を渡される。


「スカーレット様より感謝状が届いていますよ」


「やったー」


「此度の活躍を踏まえて、側近として取り立てるか、御父上の免罪しても良いそうです」


「じゃ、横領と脱税とかいうやつを許してもらおう」


「良いんですか?」


父親を切り捨てることもできる。ロートリシュを捨ててデメトルになれば、実子であっても、一族連座の罪は問われない。

それもあって、男爵位を買ってたんだけども。


「ま、あれでも親だしね……。セクハラの罪は残しておくよ、リリアナちゃん接近禁止令を出してもらわないと、彼女に迷惑がかかるし」


「エケル様が、もうちょっとしっかりしていればいいんですけどね」


「それか、リリアナちゃんが魔法を使えるようになるか」


珍しい髪色だから入学したけども、それは魔法使いになることを期待されている部分もある。

そういうのって身体のどこかに特徴があるらしいよ。

実際、リリアナルートで覚醒するパターンもあるし。


「ところで、お嬢様。貴女が思い描いた通りに、ここまで来れましたか?」


いきなりすぎるトトルの質問。

こうやってエンディングに収束していくのか。


「うーん、ここだけの話、ちょっと手に入れたいものがあったんだけど」


「手に入れる?」


「そう」


「なにを?」


この国では珍しい色合いの肌と髪色。

トトルももしかしたら魔法とか使えるキャラなのかもしれない。


「国なんだけど」


「くに」


「そうそう。影の支配者ってやつ? 責任はないけど影響力はあるって良いよね」


うーん、と考えて。

トトルが両手を出す。


「場合によっては、できますけど」


そうなるように動いてきたから、そりゃできるよね。

差し出された手に、自分の手を重ねる。


「パートナーってことでどう」


「取り分が八割あるなら考えます」


トトルはどこまでも守銭奴だった。


ガショっと音がして視界が暗転する。

あ、これ知ってる。


《強制ハッピーエンド!》


「えっ」


いきなり終わった。

だけどハッピーエンドだ、わーい!


……なんか、いろいろとやり残していて気分は良くないけども。


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