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卒業パーティは天守閣で行われる。

そのため、学院生は会場まで移動するわけであるが、全員が馬車を使うと列がひどいことになるので、一定以下の爵位の場合は徒歩で移動がデフォルトだ。

まあ、いうて学園から地続きなんでそこまで距離はないんだけど。

ドレスで移動するってのが地味につらいんだな。


私は今日ばかりは父親のエスコートで会場に向かっている。

婚約者いないし、トトルに頼むのは金がかかるだけだし。

まあ、在校生だから別に良いんだよ。飯食いに行くだけだし。


「あっ、ロートリシュさま!」


二の丸辺りで声を掛けられた。

リリアナちゃんじゃん、久しぶり。


「ビリケンサンじゃないか」


そういえばこのおっさんは未だにリリアナちゃんの事をビリケンと呼んでるんだった。

コイツのせいで舞踏会場が天守閣になるしよ。


「あっ、ロートリシュ様のお父様ですね! お嬢様にはお世話になっています!」


「おや、靴擦れですか? 足元が少し……失礼」


「ひっ!」


笑顔で近付いてきて挨拶してくれたリリアナちゃんに向かって、なぜか親父が動いた。

いきなりかがんで彼女の足に手を伸ばす。


そして、素直に悲鳴を上げるリリアナちゃん。


「に、においを嗅ぐ気ですか?!」


「はあっ!?」


「衛兵!」


セクハラ発言許すまじ!

乙女が嫌がって身を引いたところを、すかさず衛兵に確保させる。

ちょっと周りの目が痛いけれど、セクハラするやつが悪い。


「いいタイミングでしたよね?」


にっこにこ顔で登場するトトル。

仕込んでたのかよ。何するかわかってるじゃねぇかよ。


「自発的に動いてくれて良かったですね」


「何のことやら……」


父には衛兵が到着する前にボディブローをかましておいた。

しばらく痛みで喋れないはず。後は隙を見てステルス護衛の誰かが意識を刈り取ってくれるだろう。


リリアナちゃんと会えば何かしでかすと思ってた。

そもそも、ちょっとしたトラブルを起こして無理矢理連行させる気だったけど。

思った以上にすんなりいって満足だ。


「ごめんなさいね、リリアナさん。父がご迷惑をおかけして……」


「あっ、い、いえ! あの、ロートリシュ様も、大変でしたよね……!」


なぜか私も経験者だと疑われている。

手慣れた捕縛だったからだろうか。


「エケル様、リリアナさんのエスコート、お任せしましたわよ」


「は、はい! 次こそ気を付けます!」


暗に彼女を助けるのはお前の役目だったと言えば、ぎゅっと口元を引き結ぶタックル小僧。

まあ、もうセクハラ親父は出てこないと思うから大丈夫だよ。

二人に別れを告げ、トトルと腕を組んで天守閣へと向かう。

結局これだよ。万が一の時のために懐に隠し財産を忍ばせているのだけど、それを取り出す羽目になった。


「結構持ってましたね」


「万一の保険でね。もう持っていないから、家につくまで警護を頼むよ」


「本当ですか? ちょっと跳んでみてください」


お前はどこぞのチンピラか。

令嬢に言うセリフじゃねーよ!


人の波に紛れて会場入りすれば、外見とは裏腹に中は広くて豪華絢爛な飾り付けがされていた。

外見は木造だったのに、中は普通に石造りのように見える。

時空が歪んでいることはさておき、ここがラストシーンだ。

参加したのでクリアは確定している。後は自分の望む結果が得られるか、それだけだ。

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