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二回目の長期休みが終わり、最後の調整パートに入る。
凡そのイベントとしては、オペラ鑑賞、聖人の祝祭、期末テストに卒業パーティというところか。
ちゃんと乙女ゲームをしてきた人であれば、この時点で好感度が高いキャラが一人はいるはずで、今後のイベントはそいつとこなしていくことになるわけだが。
私の場合、攻略キャラたちは全員誰かしらのパートナーであり、恋愛イベントのフラグは一切立たない状態になっている。
通常であればノーマルもしくはバッドエンドなのだろうけども、私は一発逆転の目を狙っている。いやゴールがどこにあるかはわかんないんだけど。
ということで、今は普通に授業中だ。
学園は三年制。それぞれのメインキャラの学年は、三年にスカーレット様とクロード君、クローディアちゃんに猿。二年がテルジオ君にマッシブ嬢。一年にリリアナちゃんとタックル小僧。私も一学年だ。
地味にバラバラなんだけど、授業以外の交流の時間が多く取られているのでゲーム的には問題なしって感じだね。
もちろん、学園モノにはお決まりの放課後勉強会とか一緒にランチとかそういった細々したイベントも用意されている。
若い頃ってさ、話題が尽きなかったよね。何をそんな話すことがあったのかと思うくらいに。
それはさておき、私の場合は誰とも授業が被らない。
ので、ここら辺はスキップ。
じっくり派はこの後の休憩時間で攻略対象に突撃とかかますんだろうけど、そんな面倒なこと誰がするか。
最後の詰めってことで、念のため友人に報告及びアドバイスを求めてみた。
『クラフトしてればおk』
知ってた。
何の参考にもならんかった。
「クラフト以外で気を付けることある?」
『そこまで行くと個別案件だから すぐリセットできるよう備えといた方がいいとしか言えない』
「それもそうか~。ありがとー」
『結局どうなったの』
「王位継承をめぐって勢力争いしてるとこ、いまんとこ五分五分」
『本当意味わからん』
「リドケイン様はどうなったのさ」
『思った以上に雄っぱいがふっかふか』
触っとるやないかい。
どうやら本当に合法的なおさわりができる地位を手に入れたらしい。
いやもしかしたら襲ったのかもしれん。やり直しがきくから。
『他の団員と比べても抜きんでた触り心地だった』
他の雄っぱいも触っとるやないかい。
比較してるんですけど。吟味してるんですけど。
「なにしたの。犯罪に手を染めてないよね?」
『リセットもしてないよ 新作としてアップロードしてるから気になるならチェックして』
「ものによってはイイネ送っておく」
『運営に顔向けできなくなるからやめて』
アップロードしている時点で手遅れだ。
ログインして、自室で合法ロリにぷんすこされてデレデレする。
UIを放り投げるところまでのルーチンを終えたら、執務室まで移動。
今日はオペラ鑑賞会のある日だ。
劇の内容は相手との好感度次第で変化するはずで、これで進捗具合を確認できるようになっている。
つまり、私は見る必要がないってことだな。
ならば自由行動のできる日だと思っていい。
「よし、すぐできて解決を急ぐ案件があったら今日やっちゃおう」
「ありますよ」
あるのかよ。
トトルが手紙をわっさと渡してくる。
「なにこれ」
「返事が必要な手紙です。主にレイオラルですね」
「捨てて良いよ」
「仕分け済みです」
でも捨てていいと思うよ。
要するに面倒だから返事を書きたくないってことだけど、ぺいって捨てたらさくっと戻ってきた。
「増やしますよ」
「やめて、わかったからやめて」
笑顔で追加の山を持ってきたので、必死に抗議した。
最低限の分だけは終わらせるからそっちは廃棄してください!
久々にミッドラン夫人からも手紙が届いていたし、他のマダムからも連絡がなくて寂しいという訴えがあった。
そうだ、私には彼女達がいた。
卒業までにスカーレット派をできるだけ大きくしておかないといけないし、少し頑張りますか。
ラストア教もついでに布教してっと。
あ、そうだ。
「トトル、お茶会を開こうと思うんだけど」
「どの程度の規模にしますか?」
「避暑休暇と同じ感じでやろうと思う。それと、レイオラルにも招待状を送って……卒業式に合わせたほうが良いか……んー」
「……ラストア教を巻き込むんですか?」
「違うよ、結びつけるんだよ」
こちらが何をしたいのか察したのだろう、トトルが手を差し出してきた。
山になった手紙の一部を乗せてみた。
思いっきり顔に叩きつけられた。




