29
貴人の罪人の場合、拘留されたとしても貴賓室みたいなところに収監される。
事情聴取ってことだったけど、最悪そうなることを予想して動いたわけだけど、手を回していて良かったなって結果になった。
嘘こいて宰相さんの名前を出したからか、最重要参考人として監察官預かりになっちゃった。主担当がレニーさんであることが救いだろうか。
私が捕まったことで王子への外部圧力は多少軽減されるだろうけれど、すでに出来上がった対立構造がなくなるわけもない。元より、私が関わらなくとも事態が進むように規模を拡大してきた。コントロールを視野に入れた拡充ではなく、後は野となれ山となれとやりたい放題しただけなので、下手人一人が抜けたところで今更どうにもならんのだ。
ということで、差し入れを堪能しながらのんびり過ごしているところだ。
ある程度の時間が経たないと結果が見えない計画ばかりなので時間を潰している次第である。
こういう状況だとスキップ機能が使えないみたいなんだよね。早いところ解放してほしいわ。
あと、面会は許可されている。
どういうやつと連絡を取っているかっていうのを把握したいみたいだけども。
私の所に来る女性陣は派閥を問わないし、生徒達も同じく。使用人だけを寄越してくる場合もあるけど、まあ交友関係という意味では顔がそれなりに広いからなぁ。
お見舞いと称した贈り物も多い。
今回の拘束が不当なものであるという訴えもドドンと届いているそうだ。
うーん男装効果すごいな。アイドル気分だぜひゃっふー。
クッキー食べながら小説読みつつゴロゴロしていたら、次のページにメモが挟まっていた。
現在の進捗状況についての但し書きだ。証拠が残るからやめろっつってんのに。
「ん-、なになに? 宰相から課題が出たとか」
こちらで用意した奴だ。
殿下は南との交渉で塩の交易量を増やすだけでいいが、スカーレット様は宗教国と交渉して新しい交易路を拓かなければいけない。
どちらがより簡単で短期的な効果としてわかりやすいかと言われれば、誰だって同じ結論に行きつくだろう。時間制限があるなら新規開拓より現行改良の方が効果的だ。
「だからこそ、挑む価値がある」
ガーベラ商団とデリトス、デメトルを使って下地は作り上げている。
向こうが求めているのは教区の拡大。ならばこちらとしては求めるものを提示すればいい。
元は一神であるが、政教分離で宗教の権威はそこまで高くない。金を持っている連中から搾り取れないもんだから、教会自体も規模が小さくてそこまで熱心な信徒というのはいないのだ。
そういう設定なのか、そもそも考慮されてない不備なのかは知らないが、利用しなきゃ損でしょ。
それに、レイオラルの主神は女神だ。
神が豊穣と幸福を約束するというわかりやすい教義なのもいい。
ウメダシュウヘンは男性優位で後継者が指名されてきた。国王も同じくだ。
そこに、女神を主にする宗教を入れる。同時に女王が即位する。
これほどわかりやすい暗示もないでしょう。
それに合わせて、レイオラルの持つ販路をこちらも使わせてもらう。
つまり、かの国との同盟はその先にいるいくつもの国との取引も含まれることになる。
確かに塩は必ず売れる消耗品でとりっぱぐれることもない。だが同時に、必須品であるからこそ、値上げが不満につながりやすい。
安定しているけれど発展する余地がないものが塩だと言ってもいい。
じゃあ、儲けを出そうとしたらどうするか。砂糖や調味料を持ってくればいいわけだ。
「ま、それをどこまで素早くできるかって話だけど」
ここまでお膳立てして、期日内に終わらないとかないっしょ。
というか、それくらいできなくて王位を求められないわな。
ということで、私にできるものはない。
から、大人しく捕まってるってのもあるんだけどね。
ということで、次の機会まで休憩ってことで。
ゲーム内でもゴロゴロしてるってどういう事なんだろうと思いつつ。




