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次のパーティでの打ち合わせと称して、スカーレット様と応接室で二人きりになる。

そこでさっそく口火を切った。


「スカーレット様、アストアール様の事をどう思われますか」


「え? どう、って……?」


「国王として見た時、それに足るだけの器はありますか」


「……今は足りないと思うけれど、まだ先は長いのよ。それに、周りが支えれば良いでしょう?」


「図に乗って無茶苦茶を言いませんかね。プライドだけが高い無能を支える気にはなりませんよ」


「不敬よ、それは。貴女が彼を嫌っていることは知っているけれど、唯一の王子なのよ。どうやっても、彼が戴冠するわ」


「果たしてそうでしょうか」


じいっと見返せば、ぎゅっと口元を結ぶ。

こちらの言いたいことはわかっているのだろう、私程度でも気付くことを彼女が想定しないわけがない。


「王の子は彼だけですが、王妹の子もいるでしょう。具体的には、公爵家になりますか」


「……確かに、私にも継承権はありますわ。だからと言って、彼を退けてまでなんて」


「それは遠慮ですか? 自信がないからですか? スカーレット様、女王でも王妃でも構いませんが、貴女はこの国で最も尊い女性になる。決めるべきことも負うべき責任も出てくる。それを、背負いきれなければ投げ出すような人に委ねますか」


「違うわ! 彼は……アスト様は優しいのよ。だから、私がついていないといけないって……」


DVモラハラ夫に尽くす健気妻かよぉー!

半ば洗脳されてるんじゃない? 大丈夫?


「いや、そいつが居なかったらもっと楽に暮らせますよ」


「でも……」


「捨てなさいそんなの。スカーレット様が気にかけるだけ時間の無駄です。貴女にとってはかけがえのないものかもしれませんが、一つも益になりません。砂漠に一滴の水を探すんじゃないんですから、さっさと住みやすいところに移住しましょう。それくらいなら手伝います」


「でも私、諦められないわ。アスト様はそんな人じゃないって知っているもの」


「情をうつすのは結構ですがね、それで身を削られているなら、フェアな付き合いじゃないなら、しんどいと思うことがあるなら、さっさと離れたほうが良いです。薄情なんじゃなくて、自分を守るためですよ」


などといっても、納得しないんだろうな。

言葉でどうにかなるなら、そこまでのめり込んでないっていうね。

こういうのは周りの、肉親とかが強制的に隔離して会わせないようにするのが一番なんだろうけども。

まー、家同士で決めたことだから無理だわなー。

ここまでひどいとは思っていなかったけど、まあどっちでもいいや。

結局のところ、私の意志は変わらないので、否応なくスカーレット様には上に立ってもらう。

本人の意思がついてきたら儲けものってだけなので、ぐずぐずするなら仕方ない。


「貴女の気持ちは分かりました」


「わかって、いただけましたか?」


「はい、とても」


にっこりと笑って、その後は約束通り打ち合わせをして、笑顔で場を辞して。

家に帰って速攻でメニウェルちゃんを通じて各地に伝令を走らせた。

スカーレット様を女王様にしちゃうぞ計画、本格始動です。





さてはて、学園内では王子の無能を晒し、お茶会を通じてスカーレット様を擁立させ、何なら恋敵的な者も出てきて、子供側の心情を揺さぶることはできた。はず。

だがしかし、実際に国を動かしているのは大人たちであって、子供がやんやしたところで、次の王様はアイツ! ってやられたらひとたまりもない。


ので、夫人達を通してさりげなくスカーレット様の優秀さと王子の愚図さを吹聴して回った。

政治をするのは彼女たちの配偶者なので、単なる噂話とはいえ、動揺を誘うことができるだろう。

ここで、ミッドラン夫人をスカーレット派にできたら一番良かったのだけど、さすがにそれは無理だった。彼女は自分の影響力を知っている。


ということで別の経路からのアプローチである。

つまり、王子派の設立。

コークサス侯爵を筆頭とした、王子推進派である。

その原動力はイェレネ嬢。

スカーレット様と殿下の不仲を利用して、殿下に近付きあわよくば婚約者の地位の奪取を目指す。


という青図を引いてイェレネ嬢に提案してみたんだけど、かなりあっさりと乗ってくれた。

その理由がまあ、なんというか……。


「ああっ、やはりロートリシュ様は藍色の衣装が似合いますわっ!!」


これである。

私の男装姿に惚れ込んで、姿絵をくれるなら二つ返事で引き受けるという、なんていうかこう、欲望に忠実な令嬢だった。


「これでデメトル男爵と並んで立っていただけたら……あわよくばお姫様抱っこで見つめ合っていただけたらっ……!」


腐の……道を往く者よ……。


なかなかオープンだな。そういうの、本人の前で堂々と言えるの、嫌いじゃないぜ。

指定のけだるげポーズをしている私をキラキラした目で見てくるイェレネちゃん。

これで彼女相手にテルジオ君を出したら解釈違いって言われるんだぜ辛いわ。


「それで、私の演技はいかがでしたか?」


「うん、迫力はあったかな、うん」


「皆様が勘違いなさったのですね? 良かった!」


まあ、うん、はい。

振る舞いが自然だったのは良かったと思います。


「まあ、本番は学園に戻ってからだからね、それまでに腕を磨いておいて」


「お任せくださいませ!」


ふんすと気合いをいれる令嬢に儚げに微笑んで、遠くを見やって目を細める。

思索にふける美青年だオラァー!


「ああっ、見えます、その視線の先にデメトル男爵がっ!!」


超解釈はオタクのたしなみ!

さてはて、こっちでできることはもうほとんどないし、王都に戻ってせかせかと小細工をやったりますかね。

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