表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/45

まずは女性キャラクター作成。

名前を決めて、次に姿を決める。

身分ごとにデフォルトキャラがあるようで、表示をスクロールするごとに外見が変わる。

ゲームってキャラ作成が一番楽しいとこあるよね。


今回のターゲットは王子にしようと思っているので、やりやすいらしい彼の婚約者を選んだ。公爵家のお嬢様だ。

金髪縦ロールで赤いドレスが似合いそうな顔立ちの女性。

釣り目を少し抑えめにして、腰より長い髪を少し短めに。童顔ボーイッシュが好きなんだけど、これ以上、自分の好みに寄せられなかった。

仕方ないので妥協して決定。


ふわんっと浮き上がるような感覚の後に、景色が変わる。


《ここは王宮にある庭園の一つ。今日は婚約者候補として、王子様との顔合わせの日──。》


おっとモノローグだ。

白いあみあみのテーブルと、それに合わせたデザインの猫足の椅子。テーブルの上にはお茶とお菓子。

今日は良い天気らしく、少し向こうに見える噴水は水面も飛沫もキラキラと光って、まるで宝石の海のよう。そんな眩しいほどの陽光を受けながら、花や緑は柔らかい色合いでこちらの目を癒す。

恐ろしいほどの調和。これが庭師によってつくられたものであれば、相当の腕前……。


「おい!」


などと思って感心していたら、幼げな声に呼びかけられた。

顔を向ければ、何かむっすりとした金髪碧眼が腕組みをしてこちらを見ている。

これからお茶会だぜってことでお互いが椅子の横に立っているわけであるが、なんていうかこう、こう。


「お前は俺様に会いに来たんだろう! 庭ばっかり見てるなよ!」


私はすかさず彼の胸倉を掴んだ。力いっぱい持ち上げる。

なんか、ぐえっ、とか言ってる。


「それが王族たるものの態度か! なんだ俺様って格好いいとでも思ってんのか」


「お、お嬢様!?」


「き、騎士さまぁー! こちら、こちらですぅー!!」


将来的に夫婦になるとしたら、必要なのはイニシアチブである。

幼少のころから、どちらが上か教え込むのは必須教育!


「おやめください!」


「私は俺様が嫌いなんだー!」


全身を使ってがくがくと揺さぶる。

うーん、やはり小さいからか力が、力が足りない!


「そんな態度のまま育ったら将来的に臣下を困らせる愚鈍な王になるに違いない! 俺様野郎は唯我独尊のくせに役立たずが多いんだからー!」


「令嬢を拘束しろ! やむを得ん!」


「わ、ちょ、なに!?」


天紂を下していたら、体を持ち上げられた。

そのままどこかに運ばれていく。


「いや、私はあの王子に教育を施していただけですけどっ!?」


「それは令嬢のすることではありません!」


「早期教育が必要な項目なんで!」


それから何度か自分の正当性を主張したけど、何を言っているんだコイツっていう返事しかもらえなかった。

そのまま王城の地下牢に案内され、ポイッと放り込まれ、ガショっと音がしたと思ったら、画面が暗転。


《ゲームオーバー。バッドエンド:早すぎた説得》


「えっ……」


呆然とするうちに、またしてもキャラメイク画面。

私はヘッドギアを外した。


「はぁ……? なんで殴ってもないのに牢屋送り!?」


牢獄のような、っつーか本当に牢じゃん!

愛のじゃなくて鉄の檻でしたが?!


あまりの出来事に、さっそく友人へ連絡を取る。

ラインで、「タイーホされてエンドした」って送ったら、ちょうど見ていたのか速攻で既読と返答があった。


『何をしたかわからないけど、たぶんアンタが悪い』


「いやいや、だって俺様とか言うんだもん。殴らないだけ常識的じゃない?」


『一国の王子相手に喧嘩売ったのか大草原 いや、チャラ男君が良いと思うよ』


「そっか……わかった」


どうやら友人は、私が王子相手にキレ散らかすことまで見抜いていたらしい。

相手を指定されたので、次は茶髪紫目の男を対象に選んでみよう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ