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補習の一環ということで、二の丸まで来ている。

何かというと、先生のお使いで書架から資料を借りてくることになったのだ。

これ絶対に良いように使われてる。


「ん? お前がどうしてここに」


「あら、お父様」


目的地に向かっていたら、途中で父親に遭遇した。

夏休みは大体の貴族が同じような避暑地に向かっていて、そちらの方での社交がにわかに活気づくのだが、父のように王城での仕事がある場合はそうもいかない。

家族だけがバカンスに行くこともあるが、今年は私もこちらで用事がある。

領地も管理して、城で別の仕事もして、意外と忙しい人だな。

まあ、いろんな会社で相談役やら役職持ってたり、妙な団体の肩書が連なってるようなもんか。知り合いどころか会ったこともないけど、たまになんかのホームページとかで見るよね、そういう妙な経歴。


「学園は長期休暇なのだろう? 友人でも連れて領地の方でのんびりしても良いんじゃないか?」


「それが、先生からの特別な配慮があって、こちらに残ることになったんです」


「そうか……ビリケンサンとは仲良くなったのか?」


導入すらできていないな。

むしろ、世界観がなんちゃってジャパン交じりになってもやもやした思いを抱いている。


「なかなか難しいです」


「そうか? ダンスパーティ用のドレスを用意したのだろう?」


ん? それはリリアナちゃん……。

なんでこのおやじはリリアナちゃんの事をビリケンなんて呼んでるんだ?


「だからといって、領地にご招待するほどの仲ではありません」


「確かに、平民を呼ぶとなると尤もらしい理由が必要だな。王都の屋敷にしても、お前はタウンハウスを借りているしな」


「学園に通うにはそのほうが都合が良いんですもの」


屋敷住まいだったら招待しろとか言われてたのか。

そこまでしてリリアナちゃんと接点を持ちたいのかこいつ。気持ち悪いな。


「まあいい、ビリケンサンの事は任せたぞ」


「はい」


やっぱただの大阪を諦めきれないおっさんだわ。




先生の助手という肩書で城郭への出入りに理由が付いた私。

まあ、学生服着用なので入れる範囲は決まっているけれど、つまり、その縛りは私にだけ適用されるものだ。


「トトル」


「はい」


「この前言ったあれ、あった?」


「ございました。複写はこちらです」


こういう時に優秀な執事がいると楽で良いよねー!


彼に頼んだのは、ロートリシュの税収記録の写し。

なんかね、最近ちょっと屋敷に寄ったんだけど、内装が豪華になっていたというか素敵になっていたというか、やもめ暮らしにそれいらないよなっていう装飾加減でね。

新しく事業を始めたわけでもなし、私の持つ商団から資金が流れているわけでもなし、元からそこまで貯金もなし、どうやって金を作ったのか気になったわけだ。


そこで疑ったのが二重帳簿。

領主には既定の範囲内での課税が許可されていて、そこから王室へ納税を行うことになる。

国へ収める額は定量に対する申告制で、大体の領地が農耕を主にしている所から、不作凶作でもない限り毎回ほぼ一定額を国に渡している。

ここら辺の設定は素人でもわかりやすいくらい簡潔明瞭。あまり凝った設定にすると脳死する私みたいなアホの子にはシンプルでちょうどいい。


つまり、家に金が増えたイコール領地への増税かつ減免申請ではないかと。

ここ最近は気候も安定しているし整地もできているから、減収する理由がない。

なのに、それをでっち上げていたとしたら、父の不正でも一族連座で処刑である。

そんなことないよねって。


「思いたかったんだ」


トトルにもらった資料にざっと目を通したけども。

長ったらしく意味不明な装飾が付いた文章であるが、まとめると「強雨で作物駄目だった。収穫四割減っちゃった」という言い訳のしようもないほどに見事な脱税であった。

これ多分自分で通しているよね。ダブルチェックの機能くらいはあると思うけど、誰も疑わなかったのだろうか。

っつーか! そもそも領地を持つ人材をそんな部署に据えるんじゃないよ!

どうなってんだ!

なんて考えてもどうしようもない。


「どうしよ……」


「どうなさいましたか?」


「親父がアホ過ぎる……」


「遺伝では?」


向こうが先だろうがよ、なんで私から発生している言い方なんだよ。

じろりと睨み上げるがそ知らぬふりをされた。


自分達しかいないタウンハウスで良かったというべきか。

基本的にうちの領から連れてきた子しかここにはいないため、ここではスパイを気にする必要がない。


ちょっと攻略サイトとかネタバレブログとかもう一回見て来よう。

なにがしかのヒントくらいは掴めるだろう。

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