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友人にテスト対策について聞いたら、別にゼロ点でも構わないという回答を貰った。
結局のところ、社交のためにある学園だから成績なんて気にする必要がないんだって。
クラフト優先で学籍だけ置いて出席ゼロの点数ゼロでも卒業まで行きつくとか。
今のところ、成績不良でゲームオーバーになった報告はないらしい。
ただ、限度はある。
カンニングとか不正をした場合は反省房にぶち込まれ、回数によっては退学させられる。
そうなると強制バッドエンド。卒業パーティに出れないから。
逆をいえば、そこまで行けばバッド以外のエンディングにも行きつけるということだ。
光明が見えてきた。
ということで、テストが終わった。
ゼロ点でも大丈夫ってことなので無駄なあがきはしない。
次はダンスパーティである。
「は!? カンニングなどしていないぞ! おいまて!」
「話は学長室で聞きますので」
「そんなことはしていないと言っている!」
「ではこの紙切れはなんです? ともかく、一緒にいらしてください」
俺様野郎が騒いでいて、そのせいで衆目を集めている。
スカーレット様も不安そうな表情をしていたが、教師に連れられて行く王子を呼び止めることはしない。
これまでの行いを思い返しているのだろう。
単なる疑いではあるものの、彼ならもしかしたらやるのではないか、と。
もちろんこれは冤罪である。
うちの子達の仕込みはえげつないね!
「スカーレット様」
声を掛けたら、泣きそうな顔をされた。
さすがに心配か。
「午後からはダンスパーティですよ」
さすが若者の体力、テスト終了同日に打ち上げって。
セーブ機能がなかったら詰んでるプレイヤー続出してそうだ。
「ええ……でも、私は」
「パートナーが居ませんか? それなら私などはどうでしょうか」
王子が心配で、と続けようとした言葉をさえぎって、別の原因だろうと言い切る。
にっこり笑えば、きょとんとした顔が返ってきた。
「いえ、でも、女性同士ですし」
「正式なものでもありませんし、学生の内しかこんなことはできませんよ」
ぱちっとウインクを添えて。
片手を差し出せば、その手をさえぎるように前後左右からわさっと女子生徒が大量に現れた。
「抜け駆けしないでくださいまし!」
「スカーレット様、それなら私と参りましょう!」
「私もお誘いしたいですわ!」
「私と踊ってください!」
「ま、まあ、皆さま……」
よっし混乱しているな。
ここで畳みかける!
「では、スカーレット様親衛隊の皆で行きましょうか。友人同士で参加するのも良いものではないですか?」
「そうしましょう!」
「スカーレット様、お部屋までお迎えに上がりますわ!」
お茶会で知り合ったスカーレット様のファンで作り上げた団体だ。
ぐいぐいと攻められて、さすがのスカーレット様もたじたじだ。
「は、はい、わかりました……」
言質はもらったァ!
「では、準備ができたら集まりましょう。また後程」
「ええ、よろしくお願いしますわ」
「楽しみです」
いい笑顔で解散する親衛隊。
学生パーティなので気軽だけど、慣習として貴族は正装で参加する。
令嬢たちのドレス姿が楽しみだ。可愛いんだろうな。自分がするのは御免被るけど女の子が可愛い格好をしているのを見るのは好き。
ということで、制服での参加も可能なので私はそうする。
伯爵令嬢がそんなことをするとざわつくだろうけど、気にしない。
それよりもやらなければならないことがある。
「メニウェル、タリー」
「はいっ」
「はっ」
自室に向かう道すがら、うちのメイド達の名前を呼べばすぐに応答してシュタッと現れた。
どうなってんだこいつらのスキル。
「打ち合わせ通りにお願いね」
「はい、抜かりないのです!」
「全て主上がお望みの通りに」
「よろしい、任せたよ」
頷くとシャッと姿を消す二人。
隠密の修業をしたとはいえ、ニンジャスタイルを身に着けるとは。かっこえー。
あとは、時間になったら会場に向かうくらいかな。
ふんふんと上機嫌に鼻歌を歌いながら廊下を歩いていたら、がっしと誰かに腕を掴まれた。
何事?!
「って、先生?」
「ロートリシュ令嬢、お話があります」
えっ、なに、カンニングの仕込みをしたことがバレた!?
「貴女のテストの点がゼロだったのですが」
「あ、はい」
「これから補習を行います」
「えっ」
「貴女の場合は夏休み前の今からじゃないと間に合いません」
「いやちょっとまって!!? ダンスパーティ……」
「問答無用です。遊んでいる暇などありませんよ」
せ、成績関係ないって言ったじゃん!
まさかアイツ、こういう系のイベントを全部ぶっちぎってるって意味で大丈夫って言ってたのか!?
先生に連行される。
こんなことならもうちょっと真面目に暗記を頑張るんだった……!
後悔先に立たずとはこのことである。
書き溜めがなくなりました
不定期更新になります




