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「ほら、ここ見てください……」


「まあ……!」


「なんてこと……!」


私は急速にクラス中の人間と仲良くなった。

そして精力的にお茶会に参加し、先日の顛末を大げさに語って聞かせる。

未だに赤味の残る頬を差し出しながら。


「本当にもう、生きた心地がしませんでしたわ……! あのように怒鳴られるだけでも、恐ろしいというのに!」


「でも、このような目に遭ってまで忠言をされたのでしょう?」


「いえ、私など……スカーレット様の勇敢さに比べたら!」


「聞き及んでおりますわ! まさに王妃の器に相応しい佇まいだったとか!」


「殿下を諫め、ロートリシュ令嬢への配慮もされて、あまりに素敵であったと人づてに話を聞いたのですけれど……本当ですの?」


「当然ですわ! 彼女が王妃でなく、誰がその地位にふさわしいものかと感じ入りましたもの!」


なぜか私の悲劇のヒロイン演技がスカーレット様の談議にすり替わっている気がするが、私もスカーレット様の話をしたいから問題ない。

女性なのに格好いい女の人っているじゃん? まるきりそれなんよ! さばさばしすぎているわけでもない、ウェットすぎるわけでもない、優しいけど甘くない、毅然と自分の足で立って当然のごとく先頭を切って歩いているんだけど、それが様になっている。その後ろをついていこうと自然と思える感じ。


「なのに、スカーレット様に比べて、その」


「ああ、ええ、わかりますわ……」


「王族の悪口は言いたくありませんが……」


「スカーレット様がお可哀想……」


よしよし、イイ感じに王子の立場を下げられているぞ。

私がしめしめと内心でほくそえんでいたら、こちらの姿を認めたのだろう、黒髪眼鏡がズガガガガという効果音が聞こえそうなほど速足で近付いてきた。


最近はずっと悪口を言って貶めているので、監視対象になったようだ。


「あら、先ほどぶりですわねヒューレル様。お忙しいようで何よりです」


「ロートリシュ令嬢……貴女という人は性懲りもなく……」


「どうも、うるさい人が参りましたので私は失礼しますわね。皆様は引き続きご歓談をお楽しみください」


別に主催者ではないが、そんなことを言って席を立つ。

さっさと移動すれば、後ろからじっとりとした目のクロードがついてきた。

なんだよ、まだなにかあんのかよ。


「貴女のせいで、あの方の根も葉もないうわさが横行しています。それを鎮めるのにどれだけの労力が必要だと思っているのですか」


「放置しておけばいいのでは」


「王族への敬意がなさすぎます。そんなことでは王国は内部から崩壊してしまう」


それ、早いか遅いかの違いだけじゃない?

それに、私がちょっと言いふらしているだけでここまで噂が広まるはずないじゃん。

精鋭部隊を使って延焼させているに決まってるじゃないか、それを一人で鎮静化できると思うなよ。


「ともかく、もう余計なことはしないでください!」


「はいはい、わかりましたよ」


「その傷ももう治るのですから、小道具にはできませんからね」


元よりチーク盛ってるだけだからねぇ。

まあ、このネタも潮時ではある。

さっさと足早に次の現場に去っていく背中を見送り、小さくため息をついてから、近くの小庭を散歩する。

この学園、なんとかの庭っていうのがいくつかある。何の配慮かは知らんけど。

そのうちの一つ、あまり人気のない庭に足掛かったところで、何やら言い争う声が聞こえてきたので、スッと物陰に潜んで様子をうかがう。


「……って、いるのです。彼は、ただ、王家に尽くそうと……」


「ですがそれが、貴女がいつまでも我慢する理由にはなりません」


黄色の花を模った髪飾りを付けた、たおやかな女性がレースのハンカチで目元を拭う。小さくて優しげで気弱そうな見た目が庇護欲をそそる美少女だ。

相対する藍色の髪が綺麗な男子生徒は、覗き込むように上体を屈め、少し困ったような笑顔を浮かべる。それはどこか可愛らしさがあり、きざったらしいのに憎めない、絶妙な表情であった。


「貴方はもう少し、わがままになってよいと思いますよ、マッシブ令嬢。このままではいつまで経っても、彼は貴女の元にはやってきません」


「で、ですが……今は大変な時だから、もう少し我慢してほしい、と……事態が収束したら、必ず時間を作ってくださると……」


「それはいつですか?」


「いつ、って……」


「卒業まで、いや卒業後も、彼は王家のために時間を使って、貴女は蔑ろにされる。家のための結婚、それは結構です。それで、あなたの幸せは? 根拠のない約束で貴女を拘束し、報われるともしれない我慢を強いられた先に、本当に幸せはあるのですか」


「なら! どうすればいいというのです……」


トトルくんが頑張って説得している。

こちらから指示を出したわけだが、ここまで踏み込んだ話ができるほどに仲良くなっているとは思わなかった。

というか、あいつそもそも十歳以上は年上なのに違和感なく学生に交じってる辺り、演技力があるのが周りが気にしなさすぎなのか。


「本当に大切にされているなら、何をおいても貴女の方にやってくるとは思いませんか?」


「……どういうことですの?」


「協力いたします。その代わり、貸し一つ、こちらが望むときにお返しいただければ。ああ、無理なことは言いませんので」


口約束でしかありませんし、と続けて、相手の出方を待つトトル。

マッシブ嬢は逡巡していたものの、決意を固めたようだった。


「わかりました。お願いします」


「ご用命、承りました」


にっこりと笑って、執事の礼をするトトル。

泣いている娘を前にして慰めるでもなく口車に乗せるって辺りが、仕事人よね。


まあ、やってほしいことはきちんとこなしてくれたし。

私の方でも仕掛けていきますかー。





珍しく友人の方から連絡があって、ラインに伝言が残っていた。


『雄っぱい』


何があったかわからないが、本懐を遂げられそうな雰囲気という事だけは伝わった。


実はVRゲームのことを詳しく知らなかったので調べたら

ADVやらパズルやらシューティングやら、そりゃシングルプレイならあるわな!

リズムゲームは知ってたんですが、マルチプレイまであるって…

日進月歩ですね。

次のゼルダがVRでも驚かない。いやキャラ確立してるゲームじゃ逆に難しい?

むしろ人気キャラと共闘的な…むむ

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