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誰だって一度は、一番になりたいと考える。

私だってそうだ、一度で良いから一番になりたかった。




未だにVRゲームはカジュアルとサンドボックスが主流の中、AI、つまり人工知能搭載の乙女ゲームとして売り出されたそのタイトルは、多くの人は半信半疑で、ある人は好奇心を刺激されて、あとはビジュアルと声優に惹かれて、それなりのユーザーが購入をしていた。

かくいう私もその一人。と言っても先発組ではなく重版二回目くらいの購入だ。

どれかといえば友人の圧に負けた。

好きな絵師がデザインをしたメインキャラクターが好きな声優の声で本当に耳元で囁いてきて、の後は悲鳴に埋もれていて言語としての理解はできなかったが、気持ちはすごくよく伝わった。


とはいえこちらは乙女ゲームとの相性が悪く、きちんとプレイしたことのない身だ。

それをわかった上で推してくるので、おそらく面倒くさがりでせっかちな私でも選択肢が出てくる前に投げ出すような冗長性はないだろうと攻略サイトをウェブ検索をしてみれば、見つけてしまった。


ゲーム名は「牢獄のような愛の檻の中へ」。

ストーリーはなんちゃって中世ヨーロッパを舞台にした学園モノのテンプレのようだけれど、タイトルになんとなくエロスを感じる全年齢対象作品。

メイン攻略は基本に忠実に、金髪碧眼の王子、黒髪メガネ男子の宰相息子、騎士を目指している赤髪緑目の少年、チャラそうな薄茶の男。


主人公の女性の姿は黒く塗りつぶされた影になっていて、これは自身でメイキングしたキャラクターが反映するかららしい。

選べる身分も色々あって、平民の女性だったり、元から攻略キャラの婚約者だったり、姉弟だったりと種類が豊富だ。

メインで進むストーリーがあるけど、各個人の行動様式によって各キャラクターたちの動きも変わるし、背景や世界観も変わる。

ゲームでは、スローライフしたり産業革命したり、それこそ異世界転生モノと思いながら楽しんでいる人もいるようだ。スクリーンショットを披露できる掲示板もあったけれど、本当に諸所浦々で、スチームパンクっぽい世界もあった。


フリー選択シナリオ、マルチエンディング、乙女ゲームをしても良いし、無視しても良い。

その中で一際私の目を引いたのは、RTA、リアルタイムアタック、どれだけ早くゲームをクリアしたかというチャレンジボードの数字だった。

公式集計の数字らしい。MOではないものの、テンプレシナリオを外れていくような行動をすればAIコンサルがオンラインでデータを収集、更新しながらゲームが展開されるため、その過程で公式側がデータの解析も行うようだ。


「でも確かに、これなら私でもできるかも」


選択肢を待たなくてもダラダラ続く会話を見なくても次に進める。

バッドだけどエンディングまで最短で十七分。ちょっと遊ぶくらいの時間なら、きっと我慢もできる。

確かに、私のことをよく知る友人ならではの慧眼だ。


VRゲームの起動方法は簡単。

有線接続したヘッドギアの側面にゲーム用のメモリを差し込み、あとは好きな体勢で器具をオンすればおーけー。

本格的に楽しみたい人用の付属機器やゲーム専用カプセル、珍しいところでは全身タイツなんかもあるけれど、お手軽に楽しむならこれと手袋型コントローラーがあれば問題ない。貧乏人御用達セットとも言われている。


「そんじゃ行きますか」


ゲーミング座椅子に座って、いざ愛檻の世界へ。

何度でも思うけれど、タイトルのセンスがなさすぎる。


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