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ブレイクタイム11

 最近ルーグはオーウェンのところに遊びに行くことが多かった。


 単純にオーウェンのモンスター語りが分かりやすく面白いからというのもあるがもう1つ、ローワンが来たことでモヤッとした気持ちが渦巻いてしまうからだ。


 ようは嫉妬なのだが本人は分かっていないのでだたなんとなく嫌な気持ちになると言う思いだけを抱えている。


 それでもルーグが爆発していないのは、週に何度かローワンが領主の家に文字などを習いに行っていることや、毎日誰かしらナナシの店に遊びに来てくれるからというのも大きく、ナナシのルーグへの態度が全く変わっていないこともある。


 1度、職人街の防衛システムについての話し合いという体で領主も来たこともあった。


 これはリジーから使用人、使用人からメイド長と執事の耳に入り、その2人から領主に伝わったためである。

 領主も思うところがあったのかいくつかの菓子を持ってナナシの店にやってきた。


「そうですな、今日はミミックについてでも話しましょうか」

「うん」


 机にお菓子とお茶を並べてオーウェンがルーグの対面に座った。


 オーウェンは比較的大きめの部屋を数年単位で借りているのでそれなりに部屋は広い。半分ほどは荷物で埋まっているが。


「ミミックといえば比較的有名どころですな」

「宝箱のふりしてるモンスターだよね」

「そうですぞ。宝箱だと思って近寄って来た人をこうバクっと食べるわけですな」


 身振り手振りを交えてオーウェンはミミックの解説をしていく。右手を挟まれた左手を見てルーグはちょっとだけおびえたような表情をする。


「食べると言いましたが実際は魔力を吸っているだけですぞ。咥えるといったふうですな」


 ルーグの不安を解消するように恐れることはないと笑いながらオーウェンは言う。


 何度か食われたことがあるらしいオーウェンはこの通り元気に生きてますぞとあまりない力こぶを作ってみせた。


「世界各地に存在していますが、産まれるのはどうにも魔力磁場やダンジョンのような特殊な場所のようですな」


 いつかその瞬間をこの目で見てみたいと言うオーウェンは張り込めば行けるかもしれないと何やら思案している。


 オーウェンならやりかねないがいつ誕生するかも分からないようなモンスターを待つのは無謀すぎやしないか。


 苦笑いをしたルーグはお菓子をつまみながらオーウェンが戻ってくるのを待つ。


 オーウェンがこうしてモンスターについて考えるのに熱中してしまうのはよくあることなので気にしない。というか、職人街の職人たちでもあることなのでルーグも慣れている。


「……失礼、ルーグ殿」

「ううん、大丈夫」


 考えごとをしてルーグを置き去りにしていたのをオーウェンが謝れば、ルーグは気にしてないと首を横にふった。


「ミミックの生態でしたな。まずは宝箱のふりをする擬態。それからとてつもなく足が早いのですぞ」


 昔、ミミックを追いかけるためにナナシに頼みジェットつきホバーブーツを作ってもらったらしいが、オーウェンは使いこなせずミミックを追いかけようとして壁にぶつかるなどして追いかけるどころではなかったらしい。


 ブーツが壊れ、再び作ってもらおうとしたがナナシに断られたという。賢明な判断だろう。


「やはりミミックと言えばドロップアイテムですな!宝箱の形だけあって珍しいものを落とすことも多いゆえ」

「そうなの?」

「他のモンスターと比べるとかなりの確率ですぞ 」


 ついでに言えば、見慣れないようなものを落とすことも多いらしい。古代の遺産とも違うようでオーウェンはミミックが食べたものから生成しているのでのはないかと思っている。


 これ自体はモンスター学者の間で長年の議論になっているとかで、ミミックが生成している派とただのドロップアイテム派に分かれているという。


「昔、ミミックをテイムした学者もいたそうですが、食べたものを吐き出すことはあれど、新しいものは出てこなかったそうゆえ。未だ証拠もないのですな」


 ミミックは追跡調査が難しいこともあって同じ個体を調査し続けるのは困難で、テイムも出来る人間が希少な上にミミックはテイムしづらいのだ。


「中に入って調べことが出来れば確かな情報になるのですが安全の確保が難題ですな」

「うーん、やめといたほうがいいと思うけど……」


 安全の確保というか、生きて返って来れるなら実際にやりかねないのがオーウェンだ。

 たぶん、やってないのはナナシがそれようの防具を作っていないからだろう。


「オーウェンさん。そういえばミミックって強いの?」

「そうですな。ロイ殿でも勝てる個体もいればフィリー殿でも手こずる個体もおりますぞ」


 モンスターの強さは普通ネームドを除いて平均値を大きく逸脱しない。ミミックはそのブレがかなり大きいようで明確な言える基準がないのだ。


「出会ってみないと分からないってことだよね」

「宝箱と言うよりびっくり箱ですな」

「そうだよね。開けたら襲いかかってくるんだもん」


 ミミックに会った時の反応は冒険者の笑い話の定番にだったりする。

 しかも大抵の冒険者が1度被害にあってるのに忘れて(油断して)またやらかすとかで、それがまた笑いのタネになる。


「一瞬にして目の前が真っ暗になるので何が起きたか分からなくなるんですぞ」


 愉快そうにオーウェンは笑っているが、ルーグは同じようには笑えなかった。


 それからオーウェンはミミックに出会った時の対策をルーグに教えていくが、1番の対策は宝箱を見つけても開けに行かないことだった。

テイマー


モンスターを使役する職業。

誰でもなれる職業ではあるが、なる人は少ない。


餌やすみかの確保、しつけなど、テイムしたあとも大変な上、儲かる職でもない。というか稼いでも餌代に消えるとか。

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