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10 元気か?

 レオンの居場所を吐かせたナナシは、その場でへたり込む男2人に視線を合わせ礼を言った。


 ついでに慈悲というわけでもないが、ここでは何もなかったのだとナナシは2人に念を押す。


 まぁ、ここであったことを素直にボスに報告して痛い目に合うのと、全て新入り(ナナシ)が勝手にやったことだと知らぬ存ぜぬを通すこと、どちらが賢い選択かわかっているだろうけど。


 去り際、震える声で男がバケモンと言う声が聞こえて、ナナシは振り返ってよく言われると笑った。人間なのとか疑われることもあるので慣れっこだ。


 日が完全に沈むとナナシは早速その場所に向かうことにした。アサヒにはレオンに会いに行くことは伝えてある。


「さーてと、行くか。ゴミ捨て場のさらに奥つったか」


 雑多に置かれたゴミの山は異臭を放っていて、用事かなければわざわざ誰も近づかない。それほどまでに酷い悪臭だった。


 寄ってくるハエを魔法で蹴散らしながらナナシは奥に進んだ。半壊したほぼ使われてない2階立て、あの2人から聞いた通りだ。


「どこにいんのかなっと」


 なんの躊躇いもなく中に入ったナナシは、埃や砂利がない道を選んで進む。小綺麗なのはそれだけ人の出入りがあると言うことで、侵入した痕跡を知られにくい。


 吹きさらしの箇所は床が抜けていて、申し訳程度に木の板が置かれていた。子供がなんとか修理を試みたとでも言った感じだ。チビ助が1人いたからきっとそいつだろう。


 それを飛び越えたナナシはさらに奥に進む。

 射し込む光が少なくなって暗くなってきたのでナナシはマジックバックからヒカリゴケを詰めたランタンを取り出した。煌々と辺りを照らすヒカリゴケはむしろ眩しい。


 やがて道は1つの扉の前で途切れ、ナナシはドアノブに手をかけて中からの攻撃に警戒しながら軋む音を響かせる扉を開いた。


 強烈な光に声を上げ目をきつく閉じた人物に対しナナシは気楽に声をかけた。


「よ、レオン。元気か?」


 傷だらけライオンの獣人が鎖に繋がれてた。そいつは威厳のある低い声でナナシに返す。


「あまり万全とはいえぬな」


 少々視界は突然の光にやられ、まともに目の前の人物を見ることは叶わないがレオンは、嗅覚や聴覚からナナシが来たのだと判断ができた。


「鍛冶師殿が来たということはあやつ(リジー)は無事にたどり着けたということか」

「おうよ。もうちょい立派に育ててくれねぇと。あいつ、地名もルートも覚えてなかったぞ」

「善処しよう」


 レオンは呆れたように息を吐いた。

 やる気は溢れているのだがどうにもリジーは頭が弱い部分がある。職人街に無事たどり着けるかも賭けだった。


「すぐにってわけにゃいかねぇが、とりあえず回復薬」


 そう言ってナナシはマジックバックから職人街で買い込んできた回復薬を次々と取り出し、レオンの前に並べていく。


「ならば痺れと毒の解毒を」

「了解。んじゃ、これとこれか」


 薬で弱らせるとはアサヒの言う通りだ。

 ナナシはレオンに瓶を渡してレオンを繋いでいた鎖を切ってレオンを自由にしてやる。


「助かった。鍛冶師殿は1度隠れるとよい。そろそろ食事が運ばれる時間だ」

「チビ助だろ。いいよ、潜入中だから不審者にゃならねぇから」

「ふむ、そうであったか」


 ナナシにも足音が聞こえてきて、足音が止まると扉の前でカチャカチャと音が鳴り扉が開いて子供が入ってくる。

 暗いはずの部屋の異様な明るさに驚いている。


「ごは――え、なにこれ?」

「案ずるな、ローワン」


 レオンの一言で落ち着いた子供(ローワン)は、レオンの他にいるもう1人に気がついた。ほとんど関わりはないが面識はある。


「え、あ、ナナシのお兄さん?」

「そ、名無し(ナナシ)


 ナナシがいることにも驚いてはいたが、ローワンはレオンの前に食事を運んだ。いつものように鎖に繋がれているレオンが食べやすいように手を貸そうとして、レオンに鎖が繋がっていないことが気がついた。


「あれ、鎖がない?」

「俺が切った」

「あれは特別な鎖だってボスが言ってたのに」


 ナナシは鎖を手に取って普通の鎖よりは丈夫だけどなと感想をもらした。弱体化の効果がかかっているわけでもなく、ナナシというか職人街の連中からすればなんの変哲もない鎖である。


「そうなると、毒は飯に入ってたっぽいな」

「……どく?」


 ナナシの言葉にローワンは狼狽え、涙を流しながらレオンにごめんなさいと何度も何度も口にした。


 食事を運んでいただけのローワンは食事に毒が入っているとは知らなかったのだろう。それにしてもこの組織にいて心優しい子供である。


「これくらいの毒、故郷ならばごく一般的だ。慣れたものよ」

「でも、でも……」

「確かに知らなかったじゃ済まねぇかもな」


 レオンとは対照的なナナシのトドメのような一言にローワンは何も言えなくなって俯いた。レオンは黙って様子を窺っている。


「で、ローワンはどうしてぇんだ?」

「え?」

「申し訳なさに泣くのはいいけど、それじゃレオンは変わらねぇ」


 過ぎたこと(やった事)は仕方がないとナナシはローワンの意思を尋ねた。


「助け、たい。けど、何もしてあげられなくて……」

「じゃいくつか聞いてもいいか。例えばこの部屋にローワン以外が来るのかとか」


 レオンに聞いても分かるような内容も多いのだが、ナナシはローワンに聞いていった。


 それからナナシはローワンに自分たちがレオンを助けに来たのだと言って、ここであったことは誰にも話すなと伝えた。まぁ話すことはないだろうけど。


 今日はレオンの確認に来ただけだと、マジックバックから適当な食事といくつかの回復薬を置いたナナシは、念の為に鎖に細工をしてレオンを再びを繋いで宿に戻った。

ヒカリゴケ


洞窟内などによく生えている苔。


魔力を吸うほど明るくなり、探索中の冒険者などには重宝されている。しかしヒカリゴケが主食のモンスターがやってくることもあるので油断は禁物。


ナナシのはドリアード印なので光の強さが少々異常。



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