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5 取ってこれました

「あの、すみません」


 カラカラと入口の引き戸が開く音が店の中に響いて、ルーグはペンを机上に置くと客の相手をするために席を立った。


 鍛冶師はこの前の4人組の装備の手入れをしているため奥の工房にいて、集中している時は人の声が耳に入らないこともあり、とりあえず話が分かるルーグが対応する。


「この前の……。採ってこれたんだ」

「あ、はい」


 少年が頷き、ルーグはイスを勧めると机の上を素早く片付けて話を聞くために冷えた水と毛の生えたトレイを用意してから少年の対面に座った。


鍛冶師(あれ)なら作業中だから、とりあえずオレが話聞く」

「お願いします」


 ルーグの指示通りに採ってきた一角兎の角を6つほど少年はトレイに載せる。採れたものは全部持ってこいと言われていたからだを

 それから、借りている剣などを礼を言いながら返却する。


 装備はまだ持ってていいはずだとルーグは言いながら、少年が持ってきた素材を手に取るとまじまじと眺めて値踏みする。

 鍛冶師たちほどはいかずとも、少しは善し悪しはわかるのだ。


「これと、これは決まりで……あとはどれがいいんだろう。とりあえず、これはないな」


 武器の素材にするのを簡単にだけ振り分けたルーグは、窓から身を乗り出してフィリーたち呼んで来てもらうように鳥に声をかけると、少年にちょっと待ってて伝えてから工房の方に鍛冶師を呼びに言った。


 工房の出入口付近でしばらく鍛冶師の仕事ぶりを眺めていたルーグは、鍛冶師のキリのいいタイミングを見計らって声をかける。


「一角兎のお客」

「ん、おぉ、そうか。やぁっと来たか、待ちくたびれたぜ」


 ついでにフィリーたちに連絡したことも告げておく。


 すぐに作業を切りあげた鍛冶師は少年のいる部屋へと向かい、少年に手を軽く上げて挨拶すると視線は少年の持ってきた素材の方へ向いた。


「ふんふん。これならけっこう質のいいやつが揃ってんな」

「そうなんですか?」

「おう。素材の質ってのは作ったものの性能に直結するからな、それを分かってないやつが多くて困る」

「鍛冶師の腕も大切だけど、意外と素材の善し悪しも大事なことだよ。料理なんかに例えると分かりやすいかな」


 どれだけいい腕を持つ人がいても、素材が腐っていればまともに作ることは出来やしないのだ。


「それはそうと他に手に入ったもんがあれば見せてくれ。今回の加工に使えるもんがあるかもだし」

「はい。えっと、他に手に入れたのは……」


 少年はカバンから他の素材を取り出して机の上に置いていく。

 あまり数は多くないがグミゼリーの核、一角兎の毛皮など冒険者になりたてなら上等な戦利品だ。


 鍛冶師はこめかみを人差し指でトントンと軽く叩きながら、少年の入手した素材をみていくつかの素材を一角兎の角と一緒に取った。


「今回はこれで作るか。あとは必要がなければ売って資金にするといいぞ」

「出来るだけギルド推奨。相場だとうーん、銅貨10枚から7枚くらい?」

「そんくらいそんくらい、上でとっていい。それ以下ならその場で売らずに別んとこに持ってくのがいい」


 ルーグの問いに適当そうな返事をしつつ、鍛冶師は軽い調子で続ける。


 ギルドは適正価格で買い取ってくれるのでこだわりがなければその方がいいのだが、時折悪徳職員もいるようで金額をちょろまかすやつがいるらしい。

 特にまだ相場もよく分かっていない新米はカモにされやすいという。


「てなわけで、平均価格は勉強しといた方がいいぞ。大抵は掲示板の依頼から1割引いたくらいでー、あとは買取価格アップとか書いてある看板があったりすっから探してみ」

「わ、わかりました」


 鍛冶師の説明はどうにも軽いのだが、かなり重要なことを言われている気もする。

 1度狙われたらずっとなんてこともあるらしいと聞けば、少年は売りに行くのに怖さもあるが資金が必要なので行くしかない。


 コツコツと机を人差し指で叩いた鍛冶師はルーグの方を見て尋ねる。


「ルーグ、お前帰るだろ?」

「うん。そろそろね」

「ならついでに付いてってやれよ」

「んー、わかった」


 ルーグは鍛冶師の提案を了承すると部屋の片隅に置かれていた包みを持った。

 高さはそこそこあるが、重さはないらしいくルーグは片手で持っている。


「行こっか。さっさと行かないと混む時間に鉢合わせるし」

「はい」


 玄関を出ようしたルーグは見送りをしようとしている鍛冶師に振り返った。


「明日は、昼頃でいい?」

「あー、そうだな。先に微調整のが早いか」

「じゃ、その時間で」

「おう」


 短いやりとりをしたあと、ルーグはさっさと店を出る。


 この鍛冶屋は職人街でもかなり外れに位置しているために、ギルドまで行くにも少々距離がある。そのため混む時間を避けるためにも早く向かわなくてはならない。


 ルーグ曰く、混む時間帯は潰されるとのことだ。

シーナ


冒険者パーティー『黄昏の歌』に所属する冒険者。

ふわっとしたショートカットが印象的な魔法使い。


ハツラツした性格で言いたいことはハッキリと言うタイプ。彼女を探す時は酒場を探すと高確率見つけられるとか。


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