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35 ロイの進む先

 解体されたグリフォンの素材が職人街に届けられた。


 素材を見て鍛冶師やウォルバーグらはひどく関心をしていた。とても丁寧かつ綺麗に解体されていたからだ。


「ほぉ、こりゃ見事なもんだ」

「うちで雇いたいくらいやな」


 職人たちに絶賛されるこの解体を行ったのはロイの故郷である村の住人たちだ。日頃から家畜などの解体をやっているだけに慣れているのだろう。

 下手な職人がやるよりもよほど優秀だ。


 モンスターの素材は討伐者が総取りしても暗黙のルールがあるため誰も文句を言うことはないが、ロイやフィリーたちは自分たちの力だけでは倒せなかったと協力者たちと分けることを望み、今日は代表者たちが集まっている。


 兵に関しては討伐に参加した兵に陛下から特別報酬を与えるので必要なく、グリフォン討伐の報酬として全てロイたちで受け取っていいとギルベルトを通じて連絡があったが、それもどうかと思ったロイやフィリーたちはグリフォンの核を贈っておいた。

 仲介役を担うギルベルトは気にする必要はないのだがねといつも通り優雅に笑っていたが。


「ここはやはり討伐者さんからが妥当ですね〜」

「ですので冒険者(あなた方)からどうぞ」


 それがルールだと長たちに背中を押される形でロイたちから選ぶことになった。


 ロイはフィリーが選んでからと一歩下がってフィリーが素材を選び終わるのを待とうとして、フィリーに声をかけられた。


「ロイの必要な素材ってどれなの?」

「えっと、それは……」


 ロイは助けを求めるように鍛冶師を見た。

 鍛冶師は言っていたはずなのだが、しっかりと聞いていなかった。あの時はグリフォンどころか剣を直すことすら手の届かないものと現実味がなかった。


「ああ、爪だな。風切羽もありゃ相乗効果も望めんな」

「普通のグリフォンじゃないけどいいの?」


 ルーグが疑問を口にする。

 鍛冶師はグリフォンはグリフォンなので問題はないと言ったあと、爪に関しては同一個体(ネームド)だとけたけたと笑った。


「え?」

「どういうことよ?!」

「運良く取れたから使ったんじゃねぇの」


 倒せずとも素材を落とすことはあるのでおかしくはない。

 ゴーレムなど硬いモンスターなどではよく使われる手だ。身体の一部であれば確実に攻撃が通るのでちょっとずつ素材を集めては武器を強化して倒すこともある。

 ロイの祖父がそれを狙っていたかどうかは分からないが。


 話が脱線したがロイに必要な素材が分かると、ガラドがそれを遠慮がちなロイに強引気味に渡した。


「ぼ、僕に――」

「あたしは羽もらってくわ。今日はこれでいい酒飲むわよ〜」

「では私は皮を。袋の新調がしたいので」


 と、それぞれ理由を付けて自分たちの欲しいものを取っていく。

 フィリーはグリフォンの尾についた毛を、何に使うのか分からないが気に入ったようで選んで、ガラドは選んだのは頭の羽で装備の重さを軽くしてもらうと言う。


「みんな被らなかったね」

「理にかなった選択ってな。例外のやつもいるが」


 ルーグの言葉に同意した鍛冶師は、長たちの番だと進めていく。


 それぞれが欲しい素材を選んだ後、残った素材が分配されロイたちはそれらを保管して置くため鍛冶師と一緒に鍛冶屋に戻った。


「ロイはこれからどうするの?」


 鍛冶屋に戻って、素材の片付けが終わったフィリーがロイに問いかけた。


 祖父の剣の修理のためにここに来たことは知っている。けれどその目的の最大の目的は今回討伐したグリフォンのためだった。

 だから、ロイが冒険者を続ける理由がほぼなくなったと言っていい。


「そう、ですね……」


 フィリーからの問いかけにロイは言葉を詰まらせた。

 先を考えなかったわけじゃないが、どうするべき答えが出せずにいたのだ。このまま冒険者を続けて憧れだった祖父の剣を直すか、今まで通り故郷でゆっくりと暮らしていくか。


「簡単に決断できるもんでもねぇよな。ま、()()()()()()()()を選ぶこった」

「普通は後悔しない方でしょ」


 シーナが突っ込めば鍛冶師はやる気がなさそうに箱の上で横になったまま答える。

 きっとどんな道を選んでも後悔しない道があるとも思えない。それなら、後悔する日が来るとしてもそれさえ受け入れられる方を選ぶべきだと。


「分からなくはない、かも」

「鍛冶師さんらしいね」


 ルーグが言ってガラドが賛同して小さな笑いをこぼした。


 それから、やや間があってロイは見つめていた自分の手のひらを握りこんだ。揺らいでいたものを決断に変えるように、力強く。


「続けます、冒険者。おじいちゃんに直してくるって約束してきましたから、投げ出したら怒られます」


 そうハッキリと鍛冶師に告げたあと、きっと化けて出てくるだろうとロイは困ったように笑って、今度は駆け足じゃなくしっかり強いモンスターとも太刀打ちできるように頑張ると続けた。


「そっか、頑張れ」

「困ったことがあれば相談に乗るから」

「ありがとうございます」


 応援してるとフィリーとガラド。

 シーナとアルゼルは意外とこのパーティーの悪くなかったと言って鍛冶師にからかわれていた。


 ――ここから見習い冒険者を卒業したロイの冒険者としての冒険譚がはじまる。

ゴーレム


古代遺跡や岩の多い地域でよく見かけるモンスター。

魔法で作られた生命体なのか、自然生成なのかは未だに解き明かされていない。


時折、意思疎通がとれる個体も存在している。


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