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3 今日から冒険者

「んじゃ、挑戦者にはこれを貸し出そう」


 鍛治師は少年に向かって木剣を投げた。

 何度か少年の手の上で跳ねたが、床に落とさずに少年は木剣を掴むことが出来た。


「あ、ありがとうございます」

「それとこれも。ここ数年の自信作」


 動きを邪魔しないような小型の盾も鍛治師は渡してくるが盾も木製で若干の不安は残る。

 それが顔に出ていたのだろうか、鍛治師は得意げにふふんと笑い、ルーグは使われている素材について簡単にだけ教えてくれた。


「それはサイクロンウッドっていうAランク以上の冒険者推奨のモンスターから作られてるから、初級モンスター相手に壊れることはないはずだよ」

「そんな、すごいものを……」


 少年がまじまじと剣と盾を眺めていると鍛治師は大したことはないと言う。


「かったいだけで、壊れにくいだけのただの木だし。つなぎなら十分ってな」

「壊れにくいだけって、そんな扱い」

「事実だろ」


 上級素材をただの硬い木だと言ってのける鍛治師にルーグは呆れてため息をついた。

 方向性の決まっていない、持った才能が分からない新人が使うには適しているとは思うがいささか説明が雑すぎる。


 鍛治師は頭をガシガシとかいて面倒そうに一つだけ機能を口にした。


「一回限りだーけーど、ピンチになったら(それ)を地面に思い切り突き立てろ。切り抜けられるはずだ、たぶん……」


 たぶんと付け足した鍛治師は、そのあとは全速力で逃げろとだけ言った。


「それでステップアップその1は?」

「そうだなー。一角兎あたりでいいか、角を3つ」

「グミゼリーじゃなくてですか」


 初心者冒険者の定番といえばグミゼリーと呼ばれるモンスターで、プヨプヨと柔らかい拳大ほどの大きさのモンスターだ。


「あれを千体とか互いに面白くねーし、第一あれじゃ時間がかかりすぎ。第一装備のつなぎだかんな、あんなん」


 つーかグミゼリーの方が危険が高いと鍛冶師はグダグダと説明をしていく。


「いいか、グミゼリーは窒息させてくるが、一角兎は気絶させてくるがあとは放置だ。あの辺は掃除屋(スカベンジャー)もいないし安全だろ」

「ああ、一応考えてたんだ」

「もち」


 なにやら紙をサラサラと何かを書いていく鍛冶師は、少年が剣術をかじっているようなので一角兎にしたと笑う。


「剣術の心得がありゃ囲まれなければ問題ないって。安心しろ、お前が素材持って戻ってくる頃には、アドバイザーを用意しておくから」

「そんなにすぐ戻ってこれると思わないけど?」


 何か知っているようなルーグが口を挟むと、鍛治師は問題ないと紙を畳んで窓を開けると鳥を呼んだ。


 呼ばれた鳥はピュイとひと泣きするとすぐに鍛治師の元に飛んで来て窓枠を止まり木にして止まった。


「これフィーに渡してきて。あとは……」


 鳥は手紙を足に結ばれたがすぐに飛ぼうとはせず、鍛冶師はちゃっかりしてるなと小言を言いながら一枚のコインを鳥がかけている小さな透明のリュックに入れる。

 すると、鳥はピュイと鳴いてすぐさま空に飛んで行った。


「俺も雇った方がいいのかね。でも鳥ども(あいつら)高給取りだかんな」

「今は必要ないんじゃない?そこまで連絡する相手もいないでしょ」

「グッ、痛いところをつくなよ!」


 漫才をしかけたところで鍛冶師はルーグとの会話を切り上げると、少年に向き直る。


「とりま、一角兎の角を3つ。手に入れたら持ってこい。ま、来てくれたらアドバイスくらいは送るけど」

「はい。ありがとうございます」

「あとはルーグに聞け。街のことならルーグの方が詳しいから」


 ルーグも家に帰るついでと少年への街案内をかってでた。


 この場所(職人街)で生まれ育ったルーグはそれなりに街に詳しく顔が利くようで、少年の宿の手配を手伝うと冒険者ギルドの位置を教えてから家に帰って行った。

職人街


様々な職人たちが集まる街で、一流たちが日々切磋琢磨している。実力がなければ店を出すことも出来ず、衰えば廃業になることもある。


メインの客層は冒険者と貴族というちょっと変わった街。

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