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15 専用ボックス

 ギルベルトが鍛冶屋に問答無用の滞在を始めてから数日――。


 ロイが再度のゴブリン退治から帰ってきた。


「おー、おかえりぃ」


 鍛冶師の態度から彼がそのロイだと推測したギルベルトは、不躾になる視線をその優雅さでかき消してロイを見る。


「君がロイ君。ふむ、純朴そうな少年だ」

「あっと、お客さんがいるなら出直して――」

「客じゃないからいいぞ」


 ギルベルトのことは放っておいて構わないと付け足した鍛冶師は、ひとまず今回はの成果について尋ねることにした。


「んで、どうよ。装備の具合からいって前回よかマシになったみたいだけど」

「はい、皆さんのおかげでなんとか戦えるようになりました。群れはまだ難しいですけど」

「それがわかんだけ上出来だ」


 そこにギルベルトに頼まれたお茶を淹れたルーグがやってくる。ロイが来ていることに気づいて、自分の分のお茶をロイに回す。


「おかえり。フィリーさんたちは?」

「ありがとう、ルーグ。フィリーさんたちなら後で来るよ。ギルドに寄ってるから」


 一緒にここに来る予定だったのだが、その道中でギルドの職員に話があると呼び止められたという。

 上級冒険者なので色々と呼び出しも多い。


「 おや、フィリー君たちを指導者に据えるとは期待値が高いのだね」

「ちげーよ。封印の都合上そうしてるだけだ」


 ギルベルトの考えをすぐさま一蹴した鍛冶師は、ロイの置かれた状況についてざっくりと説明を始めた。細かな説明をしなくてもギルベルト(この男)は理解するし、友人という繋がりでくみ取ってもらえることも大きい。


「そういうことであれば私も協力しよう。何年も放置されたグリフォンか、古くからある改善点というべきものだな」

「どーにかできねぇの」

「改善書は出せるがおそらく間に合わないだろう」


 やっぱそうなるかと鍛冶師は言って頭をかいた。仮に対策をしてもらえることになったとしても国主導であれば数年単位の時間がかかる。

 特に首都のような場所ではないなら目を向けられることは少ない。


「ロイ君が強くなることと策を打つ方が、よほど有意義な対策と言えるだろうね」

「こっちもそのつもりだ」


 ここでフィリーたちがやってくる。

 ギルドとの話は長いものではなかったようだ。


「久しぶりだね、フィリー君。シーナ君たちもね」

「ギルさん。どうしてここに?」

「友人に会いに行くのも悪くないかと思ってね」


 ギルベルトがいることに驚きながら会えたことに嬉しそうなフィリーは上機嫌だ。その後ろではギルベルトが苦手らしいシーナが苦い顔をしていた。


「お疲れ様です。フィリーさんたちもどうぞ、ギルベルトさんからの頂きもの。オレが淹れたから味は出し切れてないと思うけど」

「謙遜することはない、ルーグ君。ここまでの技術があれば誇るべきものだ」


 家で家事を手伝っていることもあってルーグはそれなりしっかりとお茶を淹れることができる。ただお湯を注ぐだけな鍛冶師よりは本格的だ。


「家で飲んでたのと変わらないよ、ルーグ」

「うん。美味しいよ、ルーグ君」

「いつもながら雑味が少ないというのはいいですね」

「フィリーとアルゼルが言うなら、間違いないんじゃないの。ギルベルト(あいつ)も褒めてるんだし」


 とフィリーたちがそれぞれルーグを褒め、ルーグはそれなら安心したと胸を撫で下ろした。

 ルーグからすると1級品の代物を自分が台無ししたらと不安だったようだ。


 ロイの持って帰ってきた素材を眺めていた鍛冶師は上機嫌に素材を選んでいく。今回は道中に出会ったモンスターからもいい素材が多かったようだ。


「そろそろ強化素材集めてもいいかもな。ルーグ、空いてる箱ってあったか?」

「探せばあるよっていうより、ガラクタ片付けてくれればいくらでも」

「それは今度な」

「絶対やらないやつでしょ、それ」


 細かいことは気にするなとルーグの意見を一蹴した鍛冶師は、小言を言うルーグに指示を出して空の箱を用意してもらう。


 工房側ならどこに何があるかなんとなく鍛冶師も分かっているのだが、店側だとものの配置がいまいちよく分かっていないためだ。掃除や管理などほぼルーグがやっているためにルーグの方が詳しい。


 大げさなため息をついたルーグはガラクタの積まれた山から両手でやっと抱えられる程の箱を取り出し、ガラドか運ぶのを手伝ってロイの前まで運ぶ。


 ルーグは鍛冶師に言われる前にすでにイラストが描かれた紙を持ってスタンバイして、鍛冶師が流れるような口調で説明を始める。


「売りたくはないけど置く場所もない、かといってカバンに入れっぱなしはカバンの容量が圧迫されて邪魔っていう要望に答えるために――って長い説明は面倒だ。ようは預かりボックスだな」


 そう言って鍛冶師はルーグが運んできた箱の上部に貼り付けてあるネームプレートにロイと書き込む。


「これはお前専用ボックス。必要そうな素材については後でまとめとくわ」

「ありがとうございます」


 ロイ専用ボックスはガラドの手によって、他の預かりボックスの集まっている場所に運ばれる。


 箱は大量に置かれているのだが、ネームプレートはほぼ数人の名前しか書かれておらずそれはこの店の常連客の少ないさを感じさせた。

鍛冶屋(店側)


中央に机とそれを挟むようにソファが置かれている。


壁際には鍛冶師が作ったアイテムが箱に入って雑多に置かれていて、一応簡単には片付けられているがものがとにかく多い。

ちなみに管理というか掃除とかをしてしっかり把握しているのはルーグである。

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