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全ては鍛冶屋で起きている!  作者: メグル
ミミック編
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13 お頼み申す

『お断り』


 オーウェンの頼みをにべもなく断ったミックは舌を伸ばしてお菓子を頬張った。


「そこを、そこをどうかお願いしますぞ」


 モンスター学者として滅多に研究のできないミミックがテイムされて目の前にいる状況は千載一遇のチャンスなのだ。

 しかも意思疎通が出来るときたら、オーウェンとしたらもう研究するしかないのだ。


 テイムしたミックの主であるナナシは本人がいいのならと言うのでこうしてオーウェンはミックに頼み込んでいるのだが、ミックはオーウェンの研究熱を嫌って拒否をしている。


「鍛冶師殿、なにかミック殿をその気にさせるようなヒントはありませんか」


 ミックから許可を得るためになにか方法はないかとオーウェンはナナシに助けを求めるが、ナナシは首を傾げた。


「あいつがもので釣られるとも思わねぇかんな」

「ふーむ、そうなるとやはり説得しかないですな」


 しかしとオーウェンは唸る。

 あの手この手でオーウェンは説得を試みてはいたのだが、今のところミックからは断られてばかりである。


 なかなかミックに頷いてもらうための材料が見つからない。


 そんな悩めるオーウェンを一瞥したミックはお茶を一気に飲み干すと、カパンと音を鳴らして注意を引いた。


『ルーグ』『ローワン』『提案』

「なに?」

『すごろく』『みんなで』


 みんなですごろくをやりたいとミックが申し出る。


「いいよね、ローワンさん」

「う、うん」


 ルーグもローワンもそれを了承すると、ミックは2人に感謝を伝えてオーウェンはパクッと咥えてすぐに吐き出した。


「あっ!」

「ひっ」


 テイムされたモンスターがいきなり人を襲う衝撃にルーグとローワンが短い声を上げたが、ナナシはミックの意図を瞬時に理解しミックのあくどさに小さく笑う。


『1回勝負』『勝てたら』『認める』

「言質は取りましたぞ。証人もおりますし、その言葉、絶対ですぞ」

『誓う』


 そうして、すごろくが始まった。


 この時、オーウェンはミック(ミミック)に噛まれたことと勝てたら研究させてもらえることで、テンションが上がりすぎで忘れて気づいていなかった。


 この勝負がミックによる出来レース、オーウェンが勝てることはないのだと――。


 ローワン、ルーグ、ミック、オーウェンの順番でサイコロをコロコロと転がしてはその出目の数だけコマを進めていく。


 序盤を過ぎ中盤を過ぎたころ、ルーグは妙な違和感を覚え始めた。


 オーウェンの出目は小さい目が多く、しかもマイナスの効果のマスにばかり止まっている。

 運が悪いだけと言ってしまえばそれまでなのかもしれないが、どうにもそれだけには思えない。


「また1ですぞぉ!」


 サイコロを振ったオーウェンが大層悔しそうに嘆いた。

 現在3位のルーグともかなりマスが離れている。


「うーん、なんかやっぱり……あ」


 ミックとオーウェンのやり取りを思い出したルーグは1つの心当たりにたどり着く。


 そういえばオーウェンはミックに喰われていた。

 少し前にミミックに喰われた人はしばらく地味な不幸が続くの聞いたというか見た。


 つまりこの勝負はミックがこれ以上オーウェンにつきまとわれないためにやったこと。

 それに気がついたルーグはお菓子を摘むナナシを見る。


 ルーグの視線に気づいたナナシは、ルーグの視線に含まれた考えを理解し黙ってろと人差し指を口元で立ててにっと笑った。確信犯だ。


 それでもなんとか順調に進んで行き、ミックスが1位でゴールするとぶっちぎり最下位のオーウェンが床に崩れ落ちながら悔しがっていた。


 目の前に夢にまで見たテイムされたミミックがいるのに調べることが出来ないと非常に残念そうにして。


『残念でした』『モンスター学者』『様』


 ミックがオーウェンの元まで来てそんなカードを見せてくる。


 その瞬間――オーウェンはこれが仕組まれていた勝負だと気がついた。


「ミ、ミック殿。出来れば正々堂々とした勝負でお願いしたいのですが」

『男ににごんは』『?』

「ない、ですぞ。……のぉぉ」


 またも乗せられたと悔しがるオーウェンに、1人理解が出来ていないローワンが戸惑っていると、ローワンの頭にナナシの手が乗せられる。


「ミミックに食われるとしばらく地味な不幸が続くんだよ」

「え?えっと、じゃあオーウェンさんのサイコロだけ小さい目しか出なかったのって……」

「うん。ミックが確実に勝つためにやったんだと思うよ」


 しかもミックはあの短時間でオーウェンの性格を見抜いて、自分の不正が気づかれないようにあとから勝負を申し込む手の込みようだ。


 まぁただルーグもローワンもミックのやったことを卑怯とは思うのだが、あれだけつきまとわれるミックの気持ちも分かるのでオーウェンの味方も出来ない。


 オーウェンはどうかとミックに対し必死に頼み込んでいるが、ミックは相変わらず素っ気ない。

 誰だって研究対象としてジロジロ見られたり、触られるのは嫌だろう。


 どうしたらミックが心を開いてくれるか思案するオーウェンのそば、3人は極々普通に接すればいいだけだと思ったが何も言わなかった。


 たぶん、このモンスター学者(オーウェン)には無理があるだろうと感じているからだ。

ミミックに食われると


能力値が一時的に減少すると言われている。

微々たるものなので気がつかない人が多いため推測でしかない。


ナナシというか、レイン曰く、幸運については急に下がった運気の帳尻合わせのためだろうとのこと。


だいたい2、3時間で元に戻る。




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