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全ては鍛冶屋で起きている!  作者: メグル
ミミック編
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12 衝撃の事実

 今日は久しぶりにローワンがやってきた。


「お母さんとマフィンを焼いたからおすそ分け」


 ――とのことである。


 最近は養女となって忙しくしていたことと、ナナシ(この店)モンスター(ミック)が来たこともあって、ローワンもなかなか遊びに来れなかった。


 モンスターが苦手なローワンからするとやはり、ミックに害はないと分かってもまだまだ怖いところがあるようだ。

 まぁ、いきなり巨大なモンスターに飛びかかられたりしたので、そのトラウマが拭えないのだろう。


「ありがとう。ナナシ呼んでくるね」

「うん」


 マフィンの入ったカゴを机の上に置いたローワンはソファに座る。

 ミックはローワンと適度な距離になるようなところへ移動し、『ハロー』とカードを出した。


「……ミック君、こんにちは」


 ローワンが返事を返してくれた事で、ミックはパコンと蓋を閉めるとワタワタとしながらカードを取り出す。

 カードには『サンキュー』と書かれていた。


「よ、ローワン」

「こんにちは、お兄さん」


 ナナシとルーグが席につく。

 お茶はさっき淹れたのがあるのでカップだけ持ってきてそれにルーグが注ぎ、ローワンが持ってきたマフィンを並べる。


「ミックも来い。そこじゃ食えねぇだろ」

『気遣い』『出来ますから』


 ローワンに気遣い、距離を保ったままのミックをナナシは掴んで机上に置いた。

 一瞬、ローワンがビクッとしたがナナシはお構いなしだ。


「ここじゃ俺がルールだ」


 堂々とナナシが言い切りルーグが全くと呆れていると、そこにオーウェンがやってくる。


 遅かれ早かれミックと会うことになっただろうが、これは色々と大変そうだ。


「おじゃましますぞ。おや、そこにおりますのはミミックでは?!」


 ローワンに家族が決まったことを祝いながら入ってきたオーウェンは、机の上にミックがいることに気がついて飛びついた。


 ミックはオーウェンの圧力に怯え、ルーグの膝の上に避難をした。


「なんとテイムされて?鍛冶師殿、こちらのミミックはどなたの?」

「俺の」

「それは素晴らしい!ぜひとも、ミミックの生態研究に御協力お願いしますぞ」


 テイムされたミミックにテンションが上がりっぱなしのオーウェンは、ミックを調べたくてうずうずしている。


「あー、本人に聞いてくれ。会話はできっからな」


 ナナシが投げやりに言った。


「では失礼して。ミ、ミミック殿、拙者はモンスター学者をしておりまして、御協力お願いできませんでしょうか」

『お断り』

「おお!知能まで高いとは、とても強い個体なのですな」


 断られたショックよりもオーウェンはミックが人と劣らないほどの会話が出来ることに感動している。


「ネームド級だろうな」

「やはり!解明するにはもってこいですな」

「ローワンさん、悪いんだけどカップ持ってきてもらってもいい?」

「うん、大丈夫」


 オーウェンを警戒してミックが膝の上に乗っているルーグは動けず、オーウェン用のカップを持ってくるのをローワンに頼む。


 ローワンがオーウェンにお茶を差し出したところでオーウェンは我に返ったらしく、1度落ち着いてソファに座る。


 座席はナナシの対面にオーウェン、ナナシの隣にルールで、その対面がローワンだ。

 これはローワンがずっと真正面から見られ続けられるミックが可哀想だとローワンがミックに気をつかったためだ。


「それはめでたいことですな。関係も良好のようで安心ですぞ」


 ローワンが養子になったことを知ってオーウェンは自分のことのように喜んでいた。

 フィリーの時もそうだが、ローワンの行く末に心配はしていたらしい。


「拙者にも娘がおりますゆえ、心配はあるのですよ」

「え、そうなの?」

「前に会ったのは随分前なので忘れられてるかもしれませんが」


 そう言ってオーウェン妻と娘が描かれている姿絵を取り出した。


 服装からして田舎の方のようだが、姿絵にはかわいい系の美人の女性と、その女性によく似た幼い少女が描かれている。


 それを見たナナシが呆れたように声を出す。


「その感じだと前に帰ったきりか」

「て、手紙は細かく送っていますぞ」


 図星らしいオーウェンは手紙ならというがそれにしてもであるし、オーウェンは昔たまには帰らなくてはとか発言してたらしい。


「あれ、ナナシは知ってたの?」


 ナナシはオーウェンが結婚していたことに驚いてなかった。それどころか色々と知ってるようだ。


「会ったことあるぞ。10年前にな」

「10年前?」

「えっと、それから会ってないってこと?」


 信じられないと言ったふうな視線をルーグとローワンが向けられたオーウェンは、研究が忙しくついと言い訳を重ねていく。


「研究を中断して帰ってくるなら戻ってくるなと」

「頭の隅にでも存在があるならそれでいいんだと。奥さんの方はな」


 幼なじみだけあって、オーウェンのことをよくわかっているからそこらしい。無理に引き止めてオーウェンが苦しくなるならこの形でいいと。


「忘れるところでした。今日もお菓子を持ってきたゆえ、これも食べましょうぞ」


 オーウェンが取り出したお菓子は子供に人気のカラフルなサクサクのお菓子だった。


 ローワンとオーウェンが持ってきたお菓子を食べながら始まったのは、オーウェンによるミミック講座だった。


 オーウェンなりに危険なモンスターばかりではないと伝えたかったらしい。

オーウェンの家族


妻と娘、それとお互いの両親がいる。


オーウェンが娘に会ったのは数える程しかないが、手紙や姿絵、旅先で見つけたものは細かく送っている。


妻は幼なじみなのでオーウェンに理解があり、そのため結婚後すぐに子を儲けた。

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