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全ては鍛冶屋で起きている!  作者: メグル
ギルベルト編
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14 久々の常連客

「あ、ロイ!」


 ルーグは元気よく声を上げた。


 無事な姿で来てくれること、そしてなにより友達に久々に会えたことが嬉しい。


「うん、久しぶり」

「待ってて、ナナシ呼んでくるから」


 ルーグはすぐに立ち上がると店の外に出て、洞窟内にいるナナシに声をかけた。

 中からはちょっと待ってろと返事が聞こえた。ナナシのことだから数分もすれば出でくることだろう。


 ルーグはお茶を淹れ終わったところに、ナナシもちょうど戻ってきた。


 虫取り網の中には大量のジュエルフィッシュのウロコが入っていて、またイルミネーションでも作るのかも知れない。


「待たせたな」

「いえ。ローワンちゃんが話し相手になってくれていたので」

「お、そうか。でかした、ローワン」


 ナナシは適当な感じでローワンを褒めてからロイの対面にルーグとローワンを座らせ、自身は座れそうなものを適当に持ってきて3人から90度の位置に座った。


「今回手に入れた素材です」

「トルネードスコーピオンか。で、こっちはコカトリスの尾か。よく倒せたな」


 コカトリスはロイのレベルではまだ難しいはずとナナシはこぼす。

 まぁ、色々と駆使すれば勝てない相手ではないのだが、ロイにはまだ難しいだろう。


「コカトリスは襲われていたところを冒険者さんに助けてもらって、若い冒険者の応援に渡すと言われて」


 断ったらしいのだが、その冒険者は必要ではない素材だとか色々言われてなんだかんだ強引に渡されたという。


「すごい人だね」


 コカトリスの素材は鍛治のいい素材になるし、売ってもかなりいい金額になる。それを若い冒険者に応援だと躊躇いなく渡せるというのはすごいことだ。

 冒険者として成功している人なのかもしれない。


「ほー、気前がいいというか……。ま、そういうやつはいないわけじゃねぇかんな」

「それはそうだけどさ」


 そうやって若い世代を応援する冒険者たちも少なくはない。

 まだまだ若い世代に譲る気はないと言っても、モンスターに太刀打ち出来る戦力は多い方がいい。


「どんな人だったの?」

「助けてくれた人は不思議な(見慣れない)格好の人で、名前はおじさんは名乗るほどじゃないって言われて教えてもらえなかったんだ」


 一人称がおじさんの、見慣れない格好の冒険者――。


 ロイの説明を聞きながらナナシたち3人は顔を見合せた。


「それってもしかして」

「アサヒさん?」

「おかしくはねぇな」


 アサヒであればやってもおかしくない行動だ。

 コカトリスくらい簡単に対処も出来るし、ナナシに言わせるとアサヒにコカトリスの素材は必要ない。

 それにアサヒはあれでもフィリーたちよりも強い冒険者だ。金にはそこまで困ってない。


 ルーグとローワンがアサヒの特徴をあれこれロイに伝えて、かなり一致しているのでロイを助けたのはアサヒなのだろう。


「お知り合いなんですか?」

「まー常連って言っても差支えはねぇか」


 年に1回でも来ればいい方で3回か4回くらいしか来たことはないのだが、この店で考えると常連とカウントしてもいいのかもしれない。

 他の鍛冶師ではなくナナシに頼みにくるのだから。


「ひとまずこっちだ。コカトリスは祖父の剣(本題)に使えってけどどうする?」


 自分で倒したわけじゃないのでその辺で、ロイがどう思うかとナナシはお伺いをたてる。

 使わない場合はロイの防具の強化に使えると付け足して。


「えっと、防具の強化に使います。祖父の剣はやっぱり自分で手に入れたもので修理したいので」

「りょーかいっと。あと使えそうなもんは……」


 ロイが今回取ってきた素材と過去に取ってきた素材で必要なそうなものを選んだナナシは、残しておいた方がいいものも選り分けて置いた。

 分からないことがあったらルーグに聞くといいと言って自身は奥の工房の部屋に引っ込んだ。


「ちょっともう……」


 押し付けられたルーグはため息をつく。

 ナナシも知った顔だけに任せたのだろうけど。


「飲み物、用意してくるね。ルーグ君は教えてあげて」


 そして、ローワンが気を使って飲み物の用意にこの場を離れたため取り残されたルーグは、せっかく作ってくれた時間だとロイと話すことにした。


「コカトリスでロイがやられなくて良かった。強い冒険者さんたちでも油断出来ないって言うから」


 机に置かれた素材を見ながらルーグは言う。

 冒険者たちから冒険譚を聞く時にコカトリスは苦労するとよく聞く話だ。間一髪だったと言うことも多く、危険なモンスターだとは知っている。


「うん、アサヒさんが通りかからなかったどうなってたか。常に危険と隣り合わせだって改めて実感したよ」


 特に今回はパーティーを組んでいたわけではなかったので、1人で出来る対処は限界がある。パーティーであれば強いモンスターにでも太刀打ちのしようもあったかもしれないが。


「そうだ、ロイ。この前、オーウェンが持って来たゲームがあるんだけど一緒にやらない?」

「いいよ」


 ルーグが持ってきたのはカードゲームで、モンスターの特徴や弱点などが遊びながら学べるというものだった。


コカトリス


ニワトリにヘビの尾を持つモンスター。

尾のヘビと目が合うと石化の状態になる。


Cランク以上の冒険者でないとコカトリスの討伐依頼は受けることが出来ない。



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