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全ては鍛冶屋で起きている!  作者: メグル
ギルベルト編
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9 通常運転

 ソファの上に寝転がったナナシは起き上がる気配もなく腕を伸ばして机上の上を探る。


 最近ちょっと忙しかったからか、完全にだらけモードになっている。


 それを見てもローワンは何も言わなかったが、ルーグは違った。


「もう、ナナシ。余計な手間増やさないでよ!」


 ルーグは不機嫌そうに床に落ちた物を拾い上げながらナナシに小言を飛ばす。


 ナナシが机上の物を漁るせいで机の上の物がちょこちょこと床に落ちるので、ルーグとローワンがそれを拾っては元に戻しているのだ。


「へいへい」


 起き上がったナナシは大きく伸びをした後、作っていたものを一気に作り上げると端に置いてあるガラクタ入れの大きな箱に投げ入れた。


「うし、息抜き完了」

「じゃあ、はいこれ」


 その途端、ルーグからほうきとちりとりを手渡される。


 テキパキと机の上を片付けているルーグはナナシに床をはくように言って、昼食を食べるための準備を始める。


 ローワンもカトラリーを運んだりとルーグの手伝いをして、ナナシの掃除よりもどんどんと昼食の準備が整っていく。


 ナナシはほうきではくのが面倒になったのか、途中から風魔法を使って散らかしたものを片付けていた。魔法の無駄な有効活用である。


「待たせたな」

「ううん。準備も今終わったところだから」


 トマトスープの量が思いのほか多く温めるのに時間がかかったとローワンが付け足す。


 今日はすごい重いからと言われてマジックバックで運んでいたので、ルーグも取り出すまでどれだけの量のご飯が入っているか知らなかったのだ。

 実際、1人では持てずローワンに手伝ってもらった。


 メニューに関しては作っているところを見ているので知っていたが、まさか鍋ごとだとは思っていなかった。数日は持ちそうである。


「トマトづくしだな」

「あ、うん。実りがいいから……」

「なるほどな」


 ルーグが歯切れ悪く言い、それを理解したナナシは呆れたふうだ。


 ドリアード製の苗はやはりドリアード製だったらしい。ちょっと実りがいいだけで終わればそこまでではないのだが、一年中次から次へと成るなど異常である。


 害があるものではないのでそのままにしておいても問題ないのでいいのだが、今度ドリアードが来たら苦情は入れておこう。


「あれ、そう言えばナナシも植えてたよね?」

「でかくなりすぎたからマジックバックにいれてある」


 半ば強引に押し付けられた苗をナナシも植えたはずと聞いてみれば、そんな答えが返ってきた。


「わ、わたしのせいなの……」


 スプーンを置いたローワンが申し訳なさそうにする。


「もっと元気に育つようにって栄養剤をあげたら……その、すごいことになって」

「面倒になりそうだったから引っこ抜いた」


 あげたのはごくごく普通の植物用の栄養剤だったらしいのだがそこはドリアード製の植物。急激な成長をして、木のようになってしまったという。


「そうだったんだ。たぶんね、ローワンさんは悪くないよ」

(あれ)が特殊だったかんな」


 自分を責めるようなローワンにルーグはフォローを入れる。

 元々、ナナシが言うように普通の苗じゃなかったので仕方がない。


 希釈用だったのを知らずに原液のまま苗にあげてしまったということを差し引いても、ナナシに言わせればドリアードが全面的に悪いという結論である。


「ま、お前ん家のも気をつけろよ」

「そうする。変な騒ぎになる前で良かった。ローワンさんお手柄だよね」

「だな」


 ナナシの店であれば、騒ぎになってもギリギリまたあいつかと思われるだけなので助かったとも言えるのだ。


 失敗を感謝されて戸惑うローワンは困ったように笑う。そんなこと今までなかったから。


「あ、そうだ。母さんがご飯のリクエストがあったら言って欲しいって言ってたんだ。特にローワンさんの方に」


 チキンをフォークにさしたルーグは今思い出したと頼まれていたことを言う。


 ローワンの好きなものや苦手なものは何度もあっているので分かるのだが、気に入った料理があれば作るつもりらしい。たまにナナシはリクエストすることもある。


「おばさんの作るのはどれも美味しいから」

「急には思いつかないよね。また食べたいって思うがあったら教えてね。献立が決められるから楽になるんだって」


 もちろん美味しいからまた食べたいと言われるのも嬉しいようだが、毎日の食事はメニューを考えるのも一苦労だ。なので、リクエストがあると悩まなくて済むので助かるらしい。

 まぁ、必ずしも要望に答えてくれるわけではないが。


 雑談をしながら食事を続け、食べ終えると食器を持ってナナシは2階に上がりそれらを洗って魔法で乾かしておく。あとはルーグが持って帰るようにまとめてから1階に置いておく。


「今日も美味かったって伝えといてくれ」

「うん。今ローワンさんと話してたんだけど、ナナシの好きなご飯って何?」


 食事中の話がまだ続いていたようだ。


「気にしたことなかったな。ご馳走って意味で言うならネームドの肉とかか?」


 ひとまず腹を満たせるならこだわりがないとも言えるナナシは、そこまで好物といったものが浮かばないらしい。


 まぁ、ナナシはレインに拾われてからしばらく食べるものにも苦労していたので仕方ないかもしれない。


 そうして今日も客の来ない店では、他愛ない話をしながら1日が過ぎていく。

だらけモード


依頼などが立て込んだ時や、あまりにも客が来ないとだらけ始める。


けっこうルーグもナナシにつられてだらけてたりもするが、ナナシと違って人が来るとすぐにきちっとする。



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