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全ては鍛冶屋で起きている!  作者: メグル
ギルベルト編
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2 ギルドに引取りに

「お、届いたか」


 ハリツバメからから届いた手紙にナナシが歓喜の声をあげた。


「この前ギルドに頼んだっていうやつ?」

「おう。散歩がてら取りに行くか」


 出かける準備をしたナナシに空のお弁当箱を持ったルーグがついてくる。今日はそのまま帰る帰るらしい。


 まぁ、何度も長い階段を昇り降りするのは大変なのでルーグはその方がいいだろう。

 魔力欠乏症の後遺症があるので負担になってもいけない。待っているのは高熱と激しい痛みだ。


「アイアンホークだっけ?」

「そ、それと大量のグミゼリーな」

「何に使うの」


 長い階段を喋りながら下っていく。


 ナナシはよく下級モンスターであるグミゼリーを量が溜まったら連絡をもらってギルドから安値で買い取っているが、使っているところをルーグは見たことがない。


「ちょっと染料でも作ってみようと思ってな」

「染料?」


 大量にあれば高い防御力をもつ防具が出来るのはルーグも知っている。ただ、膨大な数が必要となるので誰も作ろうとしないが。まぁ、集める人間もいない。


「グミゼリーは他の素材との親和性――どんな素材とも仲良くできんだよ。それを上手いことやりゃ装備の色を変えられるんじゃねぇってことだな」


 ルーグはよくそんな思いつきをと呆れるが、ナナシは昔に白いはずのオパールドラゴンのウロコがオレンジ色に染まったのを見たことがあると言う。


 それを使った防具は、防具に出るはずのオパールドラゴンの特徴も色が変わったままだったらしい。


「ま、実験だな」


 そう言ったナナシは最後の1段を飛ばすようにジャンプして長い階段を降りた。


「それって出来たらすごいことだよね。装備の色は変えられないっていうのが常識なんだから」

「かもな」


 実現出来れば鍛治界や魔道具界などの大革命になる。まぁ、ナナシはやりたいからというだけなので、そんなこと微塵も思っていない。


 それから通り道なのでルーグが家にお弁当箱を置きに行き、それから冒険者ギルドに向かった。


 ギルドには冒険者がまばらにいて、ナナシがルーグと共に入るといくらかの視線が飛んできた。

 ナナシを知らない冒険者は、冒険者とも職人とも違うラフな服装の子連れに妙な視線を、知る者は親しげにようと手を挙げた。


「またギルドに頼まれたのか」

「んにゃ、逆」

「お、鍛冶師の兄ちゃんか。1ゲームどうだ?」

「イカサマしていいんなら」

「そりゃダメだな」


 声をかけて来た冒険者たちと適当に喋りながら奥に進んで受付までナナシは向かった。ルーグは冒険譚を聞いていけとそうそうに捕まったので後で回収することにしよう。


「アイアンホーク受け取りに来た」

「はい。スライムの素材もでしたね」


 すぐに持ってきますと受付嬢が素材を取りに向かう。受付嬢が戻ってくるとなぜかギルドマスターも一緒にやってきた。


「鍛冶師さん、今連絡しようとしていたところだったんですよ」

「素材の調達か?」


 連合国にしか出現しないモンスターの素材や、珍しい素材が急遽必要な時ギルドマスターはナナシに相談することがある。


 だからナナシはそうかと思ったのだがギルドマスターはそれを否定した。


「足止めはしているようですがリンクルに続く林道にイビルプラントが出現と連絡があり、誰か冒険者を派遣して欲しいと言われまして」


 職人街は他の街など比べると高ランクの冒険者が多く立ち寄るため救援の依頼も多く届く。


 ただ、今の時間帯イビルプラントを任せられそうな冒険者は外に出たあとで、街にいる冒険者も宿を探す必要があるので想像よりも時間がかかってしまう。


 森や林のの奥で植物に擬態してじっと獲物を待つはずのモンスターがわざわざ道に出る。近くの林に何かがあったか、それか強くなりすぎた個体が更なる餌を求めて飛び出したか。


「あー、あいつか」


 ナナシは頭をかくと、こめかみを軽く叩いてアイテム名を列挙する。


「モンスター避けの匂い袋、塩、聖水。もしくは目くらまし用の煙玉」

「えっと?」

「弱体化させるアイテムのレシピ。煙玉は食わせて、匂い袋は混ぜてまきゃいい」


 イビルプラントを足止め出来るくらいの冒険者ならそれで倒せるはずだとナナシは言う。それにナナシが行くよりもその方が早い。


「急ぎ連絡を」

「はい」


 一応オーウェンからの知識だと付け加えたナナシはアイアンホークとグミゼリーの素材を引き取るとルーグを連れてギルドを出た。


 ギルドを出たナナシは特に行くあてがあるわけでもなかったが店のある方へ向かった。ルーグもついてくる。


「出てけ!!」


 歩いていると大きな声がして、1人の男が店から投げ出された。


 話がつかなかったのだろう。

 客が自分の要望だけを通そうとするとよくあることだ。理論上可能であれば請け負うこともあるかもしれないが職人たちは決して無理な要望を飲むことはない。


 追い出された男になんとなく見覚えがあるような気がして記憶を辿ろうしたが、それは容易く崩された。


「あー!鍛冶師さん!」


 服飾の長が声をかけて来たからだ。

 面倒なやつに見つかったとナナシは一瞬虚空を見つめていた。


アイアンホーク


鉄でできた鷹みたいなモンスター。

アイアンホークのテリトリーにさえ入らなければ比較的温和な性格をしている。


攻守共にバランスがとれている上、飛んでいるので意外と厄介なモンスターではある。

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