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全ては鍛冶屋で起きている!  作者: メグル
ギルベルト編
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1 今日も客足は

「すごいね、フィリーさんたち」


 冒険者ギルドの発行する新聞を読んでいたルーグがそうもらす。


 新聞はあまり読まないが冒険者ギルド発行のものは別だ。フィリーを初めとする知り合いが多く乗っている。


 街の特性上、有名な冒険者たちも多く来訪するだけに特集される冒険者の大抵がルーグには見知った顔だったりする。それが楽しい。


「今度はなんだって?」

「ダンジョンついに踏破だって」

「お、じゃあ近々くるかもな」


 ナナシの言葉を聞いて嬉しそうにしたのもつかの間、ルーグはあっと声をあげた。


「どうしたの、ルーグ君?」


 ローワンは首を傾げどうかしたのかとルーグに尋ねるがルーグは歯切れが悪い。伝えておいた方が安全とも思いつつも躊躇いがある。


「あ、いやそのね、フィリーさんが……」

「もしかして悪い人とか?」


 アズライト――ローワンがいた場所では善人そうな見た目でも悪人ということもよくあった。なのでそうだったとしてもそこまで驚きはないのだが。


 ルーグは首を横に振ってそれを否定した。


「ううん、優しい人だよ。ただ、ナナシのことが大好きでそれが問題だったりするんだけど……」


 そう、初めてフィリーと会った時は大変だった。

 10代後半の娘(フィリー)が10歳以上も年の離れた幼子(ルーグ)にケンカをふっかけるというのが出会いだ。


 ルーグのことを邪険にはしてこなかったものの焼きもちと嫉妬に駆られたフィリーはけっこう面倒だった。

 まぁ、パーティーメンバーに怒られ叱られ、ナナシには窘められてとフィリーの味方はおらずと色々大変だった。


「一応そうならないよう考えてっけどな、今回は」


 前回の反省も踏まえ対策は用意するつもりらしい。それにルーグの時と違ってローワンには材料もあるので少しは扱いやすいだろう。


「それならいいんだけど」

「ま、心配すんな」


 ナナシが言うのであればルーグもローワンも何も言わない。ナナシは宣言通り何とかしてくれると分かっているからだ。


「面白い素材でも持って帰ってくりゃいいけどな」

「ダンジョンにしか出ないものとか?」


 ローワンが例えばと聞いて見るが、ナナシはそれよりもと言う。


「スリーピーシープとか、くす玉の実とかな」

「フツーはダンジョン特有のものじゃないの?」


 ルーグが呆れたように言う。

 珍しいものには変わりはないが、ナナシの言うのはわざわざダンジョンで探すようなものではない。闇雲に探すよりはダンジョンの方が見つかる可能性は高いらしいが。


「一通り揃ってるかんな」

「そいうことか」


 ルーグが納得する。

 ナナシは店の裏にある洞窟を使えば素材1個から増やすことは出来るのでそこまで重要視する必要がないのだろう。


 ダンジョンは古代のものが多くあると言うがナナシからすれば特別珍しいものではないからだ。そういうものが当たり前にある場所で過ごしてきただけに普通にそこら辺にあるものという認識のようである。


「ねぇナナシ、ダンジョンと遺跡ってどこが違うの?」

「同じものにみえるけど」


 古代のものが多く眠ることや強いモンスターがいるとか似たような話は聞くのだがハッキリとした違いは分からない。


「簡単に言うなら、遺跡は昔は人が住んでていつしかモンスターの住処になった感じだな。強いモンスターがいるのはモンスター同士の争いの結果」


 モンスターも人も戦えば強く成長していく。モンスターの場合は進化とも言うが、人が寄り付かない場所ほどそうなっていく。

 特に遺跡周りは縄張り意識が高いモンスターが多いようで成長が早いらしい。


「で、ダンジョンは魔力磁場とか魔力が溜まった場所から発生した空間。だから中も訳わかんねぇことが多い」


 未だに詳しいことは明らかになっていないのだがそういうことらしい。一説では高濃度の魔力が異空間への扉を開いたものとか言われている。


「ま、そんなもんか。どっちしろ危ねぇことには変わりねぇよ」


 ダンジョンは強いモンスターがいるかは分からないが中がどんな風になっているのか分からないので、やはりある程度の実力がなければ切り抜けるのは難しい。


「そっか」

「やっぱり冒険者さんはすごい人たちなんだ」


 2人がそれぞれナナシの説明を受けてなるほどと頷いていると出入口の扉を開いた。


「案内所からの紹介で参ったエドワードと申す。店主はいるか」

「俺だけど?」


 やってきたのは屈強そうな男で背中に大きな斧を携えている。冒険者のように見えるが、それにしては佇まいが冒険者らしくない。


「お前のような若造がか?」

「ご不満なら他店(よそ)にどうぞ」


 ナナシを見て訝しげるエドワードに対しナナシは嫌なら引き返せと言うと入口を指さし、同時に万一に備えてルーグに目配せをした。


 その意味を瞬時に理解したルーグは仕事の邪魔になるからとローワンを連れて奥の部屋に向かった。


「そうさせてもらおう。ふん、職人街も信用ならんな」

「またのお越しを〜」


 怒ったように踵を返すエドワードにナナシはヒラヒラと手を振って見送ると、ルーグたちに出てきてもいいと声をかけた。


 奥に行ったついでとお茶を淹れて出てきたルーグはすぐに帰る客は久しぶりだとのんびりと言った。


「そうなの?」

「うん。大体はどの店にも断られてるから、ナナシに驚きはするけど頼むから」


 ロイなんかがその最たる例だ。


 まぁ、ナナシが若く見られることを差し引いても良くてやっと1人前かな?といった見た目なので仕方がない。

 それに才能(技術)を見抜ける人なんてそうそういる訳でもないのだから。

案内所


主に職人街のどの店に行けばいいのかの相談所であり、職人街で一際目立つ冒険者ギルド横に建っている。


初めて職人街を訪れた者は必ずと言っていいほどここを訪れる。


ルーグいわく職人街のことを1番知ってる人たちとのこと。

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