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全ては鍛冶屋で起きている!  作者: メグル
ギルベルト編
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14 長い休暇の終わり

「あー、あいつのか」


 ハリツバメに水を用意しながらナナシは受け取った手紙の宛名を確認してギルベルトに渡した。


 まあ宛名を確認せずともギルベルトの商会が飼っているハリツバメだというのはすぐにわかった。ハリツバメにも制服が着せられていて、どこかキリッとしているから。


「……そろそろ帰らねばなるまい。もう少し休めるとは思っていたのだがね」


 商会でトラブルが起きたらしい。人材は優秀とはいえ、ギルベルト不在では解決出ないこともある。

 やれやれとギルベルトは息を吐いた。


「もう帰っちゃうの?」

「そうなんですか?」


 ルーグとローワンは寂しそうな表情でギルベルトの方を見る。


 ギルベルトにしては長期滞在していただけにルーグもローワンもかなり打ち解けていた。それに遊び相手が少ないこの街では貴重な存在である。


「また近いうちに遊びに来よう」


 それが分かるだけにギルベルトは苦笑しながらルーグたちに返した。


 童心にかえって遊ぶのもなかなか悪くはなかった。そもそもこんな子供時代があったかも少々疑わしいが。


「引き止めんのは程々にしとけよ、お前ら。こいつがこっちに本社移しても(越して来ても)面倒だかんな」


 名残惜しそうにする子供たちとは反対にナナシはつれない対応をする。ギルベルトはそれを照れ隠しと受け取っている。


「そうしたらギルベルトさんにもいっぱい会えるから嬉しいけどさ……」

「出来るできないか言えばたぶん出来るぞ、こいつは」


 ナナシの言葉をまるきり冗談とは受け止めないルーグは素直な気持ちをこぼし、ナナシは冗談じゃないと返した。


「だろ、ギル」

「出来ないわけではないかな」


 少々時間はかかってしまうがねとギルベルトは否定をせず、ナナシはほらみろと分かりやすく息を吐いた。


「そうしたいのは山々だが口うるさいと逃げられるのも困るからね」

「オレもそれはやだ」


 ナナシがいなくなるのはもっと嫌だとルーグが言えばくすくすとギルベルトはそれを笑いナナシを見た。ナナシは何も言わないが頭をかいていた。

 何食わぬ顔でいるが照れてはいるのだろう。


「やはり休暇に遊びに来るほうが良さそうだ」

「おー、そうしとけ」


 投げやりに言うナナシは魔道具をいじり始めた。

 ギルベルトがこの休暇の初めにナナシに要望してした試作品だ。


 商品化するしても持ち帰るのに回路がむき出しのままでは良くない。それに試作としてだいぶ簡単に作っただけなので細かな調整は必要だ。


「つーわけで俺は相手出来ねぇから、ギルに遊んでもらえ。休みつったら遊び倒すのが鉄板だろ」

「以前知り合いにも似たようなことを言われた覚えはある」

「だろ?ルーグ、ローワン、思い切り遊んでやれ」


 そう言ってナナシはおもちゃ箱を引っ張り出して、自身は部屋の隅に移動して魔道具をいじる前に飲み物を取ってくると奥に引っ込んだ。


「もーナナシは……。でも何して遊ぼうかな」

「ルーグ君、これはなあに?」


 ナナシに呆れながらルーグはおもちゃ箱の中身を外に出して広げる。箱はそこそこ大きいので下の方のは上のをどかさないと見れないのだ。


 そうしているとローワンが見慣れない形の用途が分からないものがなにかとルーグに尋ねた。

 網目状の円盤に棒のついたもの。


「それはね、えーとあった。この羽を打ち合って遊ぶんだって。どこかの国のやつらしいんだけどね」


 半球に長い羽のついたものを底の方から引っ込りだしたルーグがラケットを軽く振って遊び方をみせる。


 やるなら外でということで庭に出て遊ぶことにする。ルーグは前にナナシとやったことがあるので遊び方は分かっているのだが、出来るかというと別の問題なのである。


 ラケットに球が当たらず上手く打ち替えせなかったりもしたがそれでもなんだかんだ続き、満足したら次の遊びに移る。


 そうして遊びを変えながら遊んでいく。

 遊び倒してというか、その様子は完全に子守りだ。


「魔力ゴマはやったし、次は……」

「ギルベルトさんはどれがいいですか?」

「ふむ、何が残っていたかな」


 ソファに座り優雅にお茶を飲むギルベルトは広げられたおもちゃを見る。


 それにしても改めて見るとこの店は異様におもちゃが多い。まぁその大半がギルベルトとオーウェンが持ってきたものだったりするのだが。


「それではすごろくはどうだろうか。これならば、ナナシ()も出来るだろう」

「お前なぁ……」

「提案者にも少しは入ってもらわねばと思ったまでだよ」


 言い返したところでギルベルトには負けるのも分かっているので呆れるだけでナナシは何も言わなかった。

 それにナナシが余裕がないほどだったらギルベルトはそもそも巻き込んで(誘って)こない。


「おーし、その勝負受けて立つ。さっさとどれやるか選べ」

「勝ち負けはあるけどさぁ」

「運、だよね」


 まぁナナシがやる気なので放置だが、ルーグにはそれがああ言えばこう言うギルベルトへのものなのか、通常運転から来るものなのか判断がつかない。


「まだやったことないのがいいよね」

「うん。左の真ん中のはそうだと思う」

「じゃそれにしよう」


 選んだものを机上に運んで中のものを広げると、ナナシが真っ先にコマを取った。なにやらこだわりがあるらしい。


 途中からはほぼナナシとギルベルトの一騎討ちになっていて、ルーグとローワンはそれを応援していた。


 一発逆転を狙うナナシと、優雅さに恥じない運の良さをみせるギルベルト。

 どちらが勝ってもおかしくはなかったが僅差でギルベルトが勝利し、ナナシは他の勝負なら負けねぇんだけどなと言ってたと追記しておく。

おもちゃ箱


ナナシが世界各地で手に入れたおもちゃや、ギルベルトやオーウェンが持ってきたものが入っている。


今まではあまり使われてこなかったがローワンが来てからちょこちょこと遊ばれるようになった。




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