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10 鍛冶師の指導?

 ロイの新しい装備が完成し、いざゴブリン退治!と言うところだったのだが……。


 フィリーたちは冒険者ギルドから呼び出しがかかり延期となった。


「つーことで、この俺がアドバイスをすることになったわけだが……」

「だが?」


 ルーグが歯切れの悪い鍛冶師に続きを促すと、鍛冶師は堂々と言い切る。


「ノープランだ!!」

「だと思った」


 堂々言うべきことじゃないと呆れたルーグは、もとより期待していなかったとため息をついてから一応フィリーたちの次の方針を鍛冶師に伝えておく。


「わかってた。フィリーさんはゴブリンをって言ってたけど」

「それな、誰かがついてないとロイには早いってもんだ。戦いにも相性があるからな、ロイ(こいつ)とは相性最悪」


 鍛冶師とルーグの会話を大人くしく聞いていたロイは小さく首を傾げ、鍛冶師に気になったことを尋ねてみる。


「ゴブリンってそんなに強いんですか?」

「ただのゴブリンならそこまで強くはねぇよ。ただまぁ、新米にとっちゃ鬼門ってとこか」

「つまづくポイントだっけ?」


 鍛冶師は頷く。


 モンスターであっても人型をしていることで攻撃を躊躇ってしまう冒険者もいるらしい。そこにゴブリンは新米冒険者からすると猪突猛進型や単調なモンスターではなく初の小賢しいモンスターということもあってかなり苦戦を強いられるという。


「だからって萎縮は必要ねぇ。充分お前で勝てるレベルだかんな。ただ、さっきも言ったように相性最悪、今は1人で行くのはオススメしねぇな」

「じゃあ、フィリーさんたちの代わりに?」

「行かねぇよ」


 ルーグの予想とは裏腹に、鍛冶師は両手で大きくバッテンを作ってロイについて行くのを否定した。それから、頭をかいて困ったと顔をする。


「お前らが帰った後で急ぎの仕事が入ってな、そっちを片付けにゃならん。ただ作りゃいいだけと違うからちょー大変なの」

「そっか珍しいね。そうするとロイはどうするの?」


 基本的に開店休業状態のこの店なのでこうして仕事が舞い込むことは珍しいために、ルーグは素直に思った感想を口にし、ロイはどうするのかと鍛冶師に聞く。

 普段は適当さが目立つが、この鍛冶師は意外と面倒見がいいと言うか放置はしないだろうから。


「しばらく採取系の冒険者に面倒見てもらうつもりだ。冒険者やってくなら邪魔にならない知識だかんな」

「毒とか見極めるも必要だもんね」

「そゆこと」


 生き抜くために必要なものだと鍛冶師は言う。

 戦闘面の成長も大切なことだが、食べられる食材や薬草を見分けられるようになれば荷物や魔力の節約にも繋がる。

 実際、鍛冶師はそれでなんとか生き延びてきたためにそれが古いくさい知識であっても無駄と切り捨てることはしない。


「ギルドには連絡しとくから紹介してもらえ」

「は、はい。ありがとうございます」


 ギルド宛の手紙を書くと鳥を呼んでギルドまで運ばせる。お金を握らせなければ動かない鳥となにやら揉めていたが。


「あと出来ることは……メンテも終わってるし」

「街でもゆっくり見て回ったら、いつもここの往復みたいだし」

「お、ナイスアイディア!冒険者家業ってのもメリハリは必要ってもんだしな」


 羽は伸ばせる時に伸ばすものだと鍛冶師はルーグの頭をぐしゃぐしゃと撫でながら言う。


「ちょっ、やめてよもう。でもそういえばシーナさんもそんなこと言ってよく朝から酒盛りしてる」

「あいつは酒好きだから。ま、冒険者なんてそんなもんだぞ。常に気を張ってたら疲れちまう」


 冒険者なんてのは自ら危険に近づく職業だ。1歩でも街の外に出れば一瞬の油断が命取りになってしまう。

 そのせいか刹那主義の奴らも多かったりする。


「万全ってのは心身ともにが鉄則。出来るときゃあな」

「そう、ですね。また忙しくなりますし、今日くらいは」


 シーナとアルゼルと提案でギルドのクエストを受けながら素材を集めていたので金銭面に余裕はある。

 それに急がなければならないとはいえ、フィリーたちとの模擬戦からまだしっかり身体が復活していないのでリハビリにはちょうどいいだろう。まだ筋肉痛が残っている。


「あー、そうそう。ないとは思うが絡まれたら俺のことを言えよ」

「被害は最小になる、はず」

「わ、わかりました」


 この前のヤツらがまた絡んでくることはないだろうが、流れの冒険者なんかだとロイの新人さ溢れる雰囲気にちょっかいを出しかねない。


 思い切り楽しんでこいとロイの背中を押した鍛冶師は急ぎの仕事を片付けるために奥の部屋に入っていった。


「まぁうん、この街は少なくともハズレはないかな。人前に出せるレベルにならなきゃ売り出すことも出来ないから」


 鍛冶師を見送ったルーグは机の上を片しながらそういった。


 ここは職人街。

 一流の職人たちが集う街、どの店の一定の水準は保っている。

 個人的な好みを抜きにすれば、ハズレなんてものはあるはずもないのだ。

一角兎


どこにでもいる角が生えたウサギ。


草原などをぴょんぴょんと跳ねる姿は愛くるしいが、モンスターだけあって力は強い。装備なしでタックルが直撃すると骨折することもあるほど。

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