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全ては鍛冶屋で起きている!  作者: メグル
ギルベルト編
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4 ジェムメタル

 今日も今日とてギルベルトの試作品作りに付き合っていると珍しくお客がやってきた。


「おや、ロイ君ではないか」

「あ、と……ギルベルトさん」


 予想もしていない人物がいたことでロイはちょっと戸惑い気味だ。


 まぁただでさえ煌びやかなオーラのせいで近づき難いのだからそうなるのも仕方がない。

 一般庶民からすると貴族など緊張の対象にしかならないのだから。


 ギルベルトはそんなロイを微笑ましく笑いながら空いている席を進め、自分用に淹れていたお茶をロイにも入れる。


「彼は人に呼ばれ街の方に行っていてね。話は私が聞こう」


 これでもナナシの雇い主なのでねとギルベルトは言い、武器や素材を置くためのトレーとロイのボックスを持ってくる。


「ありがとうございます」

「君の冒険が上手くいっているようで何よりだ。ただでさえ客の少ない店なのでね、客人が減ってしまうのはかなりの痛手になってしまうからね」


 ギルベルトの言葉にロイは乾いた笑いを浮かべる。


 ロイ自身、この店の客はフィリーたちとオーウェン以外見たことはなかったし、フィリーたちからもほぼ他の客と鉢合わせたことはないと聞いているだけに冗談でも笑えない話だ。


 もっとも、閑古鳥が鳴きつづけていても潰れるような店ではないが。


「随分と珍しいものを……」


 ロイがトレーに置いた素材の1つを見てギルベルトがそう零した。


 ギルベルトの視線の先には宝石と金属が混ざったようなエメラルド色の輝きを放つ手のひらサイズの石があった。


「ミミックが落として行ったんです。逃げられてしまいましたけど」

ナナシ()が言うにはミミックは倒すものではなく吐き出させるものらしい」


 倒してしまうとミミックが食べていたものがほぼ消えてしまうのでもったいないとか言って倒さないという。


「……吐き出させるもの」

「一般的な考え方ではないのだろうが、珍しいものを手に入れる方法として1つの方法なのだろうね」


 倒さずに素材だけ入手するというのは、たまに強いモンスターに対してあったりはするがそうあるものではない。


 もともとそこまでのメリットもない上、わざわざそんな面倒くさいことをやる必要もない。それに増えすぎないように間引くことも重要なことだ。


 ギルベルトがロイ相手に店番をしているとナナシがルーグを連れて戻ってくる。


「あれ、ロイもいる」

「だな」


 まさかロイがいるとは思わないルーグは驚くが、ナナシはロイよりもロイが持ち帰ったものに視線が釘付けだった。


 まぁ今回に関しては仕方ないかもしれない。ミミックが落としたという石がすぐに目に入ってしまったのだから。


「ほうほう、ジェムメタル。ミミック辺りが落っことしたか」


 ロイが今回入手した素材を見ながらナナシが言って、ギルベルトが感嘆の声を上げた。


「私も今しがた聞いたがそのようだよ」

「だろうな。ロイのレベルじゃ採掘地に行く前にくたばっちまう」


 ジェムメタルの採掘地は幻影の森とまではいかずともかなりの危険地帯だとナナシ。

 しかも洞窟なので戦い方も限られてくるので難易度は上がる。それでも少量でもかなりの金になるので無謀を承知で大金を夢見て向かう冒険者も後を絶たない。


「お金儲けのためって武器とかの素材にはしないの?」

「いい素材になりそうですけど」


 貴重なものはいい武器や防具の素材になったりする。魔道具だって高性能のものには大抵珍しい素材が使われている。


 ナナシは2人の疑問に肯定してこれだけじゃ役に立たないのだと言った。


「ジェムメタルってのは1種類だけじゃただの飾りにしかならねぇんだよ」

「なるほど、共鳴しなければ効果がないということか」

「そういうこと。他の色がなきゃ金策用だな」


 種類が揃えば効果はかなり高いが他のものでも似たような効果のものは作れるため、装備などジェムメタルを前面に押し出したい派手好きじゃないならそこまで必要もないらしい。


「目立ってしょうがない気がするんだけど」

「けど、モンスターも人も警戒して近づいて来ねぇからモンスター避けにゃなるんだよな」

「口ぶりからすると作ったことがあるようだね」


 ナナシはあるぞと言ってマジックバックから篭手を取り出した。1式あるという。


 想像よりかは見栄えはいいのだが、なんというか悪趣味な感じである。金属と宝石の輝きが異様すぎる。


 ジェムメタルはかなり主張する素材のようで、少量でも使ったのが確実に分かるほどだとナナシは言う。そのせいか冒険者の装備としての人気はない。


「まさかナナシ……」

「さすがに俺でも着ねぇな。着たのはオーウェン」


 ジェムメタルにはモンスター避けの効果があるとかで試したいとオーウェンからの申し出があり、持っていたので貸し出したと言う。


 結果は人もモンスターも見慣れてしまえば効果はなかったので、モンスター避けになったのは少しの間だけだった。


「確かにお金儲けようかも」

「うん。ギルドに売った方がいいような気がしてきた」


 話を聞いたロイは拾ったジェムメタルは換金用素材にすることを決める。派手すぎる装備にはするつもりもないので使い道がないと判断した。


「最低ラインでも金貨1枚だな」

「――きっ!」

「妥当だろうね。それより低い価格を提示されたらここに持ってくるといい。私が買い取ろう」


 金貨という言葉に驚くロイをよそに、ナナシもギルベルトも平然と話を進める。ルーグにしてもそういうものが飛び交う街にいるだけに驚くこともない。


「売りに行くなら質の低いのは全部売ってもいいぞ。そろそろ上質なもんで固めねぇとな」

「前にも言ったけど、同じものを作っても質によって性能にだいぶ差がつくから」

「そういうこった」


 ロイの持ち帰った素材から、初級から中級へ上がろうとしているとナナシは判断したようだ。



共鳴


特定のアイテムの組み合わせで何かしらの効果が付与されること。魔剣とも似ているが魔力が必要ないのが特徴。


効果は消費魔力減少や防御魔法付与のようないい効果から、モンスターを寄せ付けるようなものや日焼けしないものまで多岐に渡る。


ジェムメタルの場合は同種が複数揃うと共鳴する。

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