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Real  作者: 小日向 慧
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僕の世界

  世界仮想現実論が囁かれたのは僕がまだ学生の頃だった。その頃はまだメタバースやVRゴーグルなどの仮想現実が主流だった。逆に現実世界に投影する技術はプロジェクションマッピングが主流でホログラム技術は想像を超える事は無かった。

 僕はパソコンが好きで高校を卒業した後はコンピュータの専門学校に通った。入った学科が出来たばかりの学科で講師も何をどう教えて良いのか手探りで、ろくに身についた物は無かった。

案の定。就職先も大した所も見つからず、僕はとあるパソコンメーカーのコールセンターで働く事にした。コールセンターの職場はセキュリティの為、スマホやカメラなど電子機器類は持ち込めず、沢山のパソコンが並んだ机が何列にも並ぶ広い部屋で電話や電子メールを使ってパソコンの使い方やトラブルの解決方法を案内していた。

コールセンターに相談してくるお客様は操作方法が分からないご年配の方が多く、案内していると間違って先生なんて呼び方をされる事もあった。ただずっと同じ部屋で電話対応をしていると結構なストレスがあった。

 僕はストレスに耐えられなくなると仕事の帰り、家の近所にある森林公園に行った。

森林公園は駅と繋がっていて駅から出るとすぐ公園に出る事が出来る。駅を出ると広場にベンチが並びさらに公園を少し歩くと池があり沢山の鯉が泳いでいた。森林公園というだけあって少し山の中の遊歩道を歩く事も出来た、子供たちが遊べる遊具があったり野外音楽堂があったり市民の憩いの場といった所だ。

森林公園で何をしていたのかと聞かれても何もしていないと答えるしかない。僕はベンチでぼーと物思いに老けったり池の鯉に無心にパンくずを与えたり、のんびり遊歩道を歩いてみたり。まぁ何をしていたかと言えば何もしていない。

 ある日から僕は僕の世界にノイズを感じる様になった。

目眩でも無い頭痛でも無い、それはノイズだった。一瞬左右にブレる様な視界が崩れる様な、耳鼻科や脳神経外科に診てもらっても異常は見つからなかった。しかし体調はあまり良くなかった。

体調が良くないと人は誰かに救いを求めたくなる物だ僕は何度か安易に人を信用して詐欺にあってしまった。

その頃から僕は精神を病んでしまい僕の感じる世界は人間の欲望に満ちた暗黒の世界にしか見えなくなってしまった。鬱病だった。僕は実家に戻り人を遠ざけ部屋に引き籠る様になってしまった。

 ある日、僕は夢を見た。

内容は思い出せない。

しかし、僕は泣いていた。

そんな事が何度かあった。


何故かあの公園に行かなければならない気がした。

そして、何かを、誰かを探さなければならない気がした。

僕は時間があるとまた、公園に通う様になった。

以前と違うのは僕の世界のノイズ。

僕は僕の視界の僕が意識していない視界に異常を感じていた。

僕の意識していない世界は明らかにその解像度が低下してた。しかし僕がそれを意識すると鮮明さを取り戻すのだった。


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