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厄喰  作者: 怒愛たくあん
1/6

1話~異形と少年~

ボイコネという声劇アプリにて投稿してたものです。

設定などがまだ固まっておらず、拙い物ですがお読みいただけますと幸いです。


罪とは遺伝するものか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



自分の肌を夜山の独特の冷気が撫でる。

はぁっと息を吐くと白い煙が空中を漂い、やがて消える。

世間はクリスマスだと言うのに、なぜ俺はこんな人っ子一人いない山の中で座り込んでいるのか。なぜこんな人生になってしまったのか。

何度も繰り返している仕事の一環ではあるのだが、現実逃避に似た自問自答を続けてしまう。

結局辿り着く答えというのは、くそったれな自分がくそったれな家に産まれてしまったという今更考えても仕方ないことばかり。


そんな時、自分の前方の雑木林が激しく音を立て始める。


「やっとお出ましだ。おれはサンタさんじゃないんだからクリスマスに働くとかごめんだねまったく。」


音の主が目の前の林から顔を出す。


それは蛙のような姿をした異形だった。


大きさは二階建ての家に匹敵し、頭部にある目は今にも破裂しそうなほど肥大化し、ギョロギョロと不規則に動き回っている。

こちらを見定めると、久々の餌に喜んでいるのか少しニンマリとした顔でのそりのそりと近付いてくる。


この山の行方不明者の数は年間およそ800人。おそらくその原因はこの『異形魔』が原因だろう。

行方不明になった人は全員がこいつに喰われたとは思わないが、恐らく大半はこいつが原因で間違いなさそうだ。


「起きろオロチ。少し遅いがクリスマスプレゼントだ。」


自分の横の空間から顔を出す巨大な蛇にそう語りかけ、

俺こと『芦屋晴道』は今日も異形を狩る。





「以上が報告になります。新潟県の尾崎山に出現した中級異形魔『大蝦蟇』は『紫紙』の芦屋晴道によって討伐されました。

尚、大蝦蟇の発生により『二次呪災』として尾崎山に大量のヒキガエルの出現と『異力』による空気汚染ならびに水質汚染が発生しており、こちらは現在対処中となっています。」


暗い建物内で蝋燭の明かりが揺れる。

顔を紙のようなもので隠した老人たちが部屋の奥に並び、目の前のスーツの男に問いかける。


「なるほどのぉ。して、芦屋晴道は負傷したのか?」

「いえ、芦屋晴道殿は特に負傷は無く、任務を終えられた後に東京に帰還しております。」


スーツの男に質問をした老人が憎たらしげに吐き捨てる。


「こちらに挨拶も無しにか…!無礼な小僧だ…!薄汚い蘆屋の者の分際で!」

「紫紙だからと調子に乗りおって…!蛙に腕の1本でも喰われておればよいものを…!」


老人達は口々に呪詛のように言葉を吐く。怒りで身体が震えているのか、顔にかけてある紙がカサカサと音をたてる。


「芦屋殿も報告に行けず皆様に申し訳ないと仰っておりましたが、東京にて中級異形魔の出現を聞き、現地に向かわれました。」


スーツの男が手元の資料を捲りながらそう言う。


「ふん…まぁよい。こちらに従順な内はせいぜい可愛がってやるわ。」

「そも、あやつらは体に刻まれた『血の呪い』から逃れられぬが故、我らに盾突くことなどできますまい。」

「そうだ。そうだったな。一生自由になどなれぬ翼をもがれた鳥であった。」


クスクスと。先程までの怒りなど忘れたかのように笑い出す。

そんな老人達を見つめるスーツの男は、やがて老人達の姿など興味を無くし、手元にある資料に目を落とした。





「申し訳ないとか思うわけねぇだろボケ老人共が。」


手元にあったハンバーガーを乱暴に掴んで咀嚼する。

黒髪にひと房だけ白い髪という現代においては少々浮いている髪が乱雑に揺れる。


「クリスマスにわざわざ遠い所まで来させやがって…こっちは毎日休みもなく働いてんのにくそが…!」


新幹線の中で芦屋晴道はボソボソと小声で呟く。隣の席に人は座っていないがやはりマナーなど考慮するとあまり大きな声での愚痴は憚られるのだ。


「『祓い人』の殉職率って今どれぐらいだっけ…?明日は我が身かもしれないのにくそみてぇな上に引っ張り回されて休日も貰えないとかハァー!」


思わず窓際に頬杖を付く。窓の外は自然の風景が高速で横に流れていく。

一瞬映る民家や街並みには日々を平和に暮らす人々が映し出される。


「………」


芦屋晴道は呪われている。


それは多くの意味を含む。


「下級、上級に関わらず100000体の異形魔の討伐及び、『呪災指定異形魔』の全討伐か…」


芦屋晴道は呪われている。


遥か昔、先祖が犯した大罪により、産まれた時から償い続けなければならない。


「なぁオロチ。お前だってたまにはゆっくりしたいよな。」


窓に大きな瞳が映る。その瞳は晴道を見つめると目を閉じ、頷くかのように上下に揺れた。

窓に映った大蛇を撫でるかのように、冷たい窓ガラスに手を触れる。


「………」


芦屋晴道は呪われている。


産声を上げ、世界を目に映したその瞬間から隣にいる。



この巨大な蛇に呪われている。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

用語解説


・『芦屋晴道』→今作主人公。ご先祖さまの罪を償い続ける男の子。黒髪にひと房だけ白い髪を持ち、相棒に電車サイズの大蛇を持つ。上層部にペコペコしているが本音では芸能人の楽屋裏のように怨嗟の声のオンパレードである。

・『異形魔』→今作の敵のようなもの。お化け、妖怪の類。自然に発生したものや、人や動物の意思によって産まれたものなど種類は様々。

下級、中級、上級に分かれており、中級以上から人を襲ったりする。さらに上には呪災指定という存在がいる。

・『大蝦蟇』→新潟県にある山にて人を喰い続けていた巨大な蛙。最初は下級の異形魔だったが心霊スポットかつ自殺の名所である山にて力を蓄え、大きくなっていった。

・『二次呪災』→異形魔の出現、能力や体質などによって環境にもたらされる災害。空気や水などの自然環境の汚染から、人々の身体機能の損傷など多くの影響をもたらす。

・『異力』→人や動物、異形魔が持っている魔力みたいなもの。まだよくわかってない。

・『祓い人』→異形魔を狩る人達の総称。国から極秘に存在を認められており、都道府県にそれぞれ支部がある。主人公が所属しているのは厳密には京都(本部)なのだが、本人が本部の人間を毛嫌いしているので東京に住んでいる。(本部には交通の便が良いからと言っている。)

・『紫紙』→祓い人のランクを表すもの。上から紫、青、赤、黄、白、黒。主人公の紫紙しがみは特別なランクであり、該当する人物は主人公を含めて現代では2名が在籍している。

・『呪災指定異形魔』→出現するだけで大災害を引き起こす天災クラスの異形魔。今まで一度も討伐されたことが無く、この異形魔を討伐することが全祓い人の最終目標になっている。計7体が存在しており、出現した期間や場所もバラバラだが現在まで再出現は確認されていない。

・『血の呪い』→芦屋家に代々引き継がれる呪い。遺伝する。



見切り発車です。

モチベーションが続けば続きを書くと思います。

評価、コメント、アドバイス等いただけますと作者がとても喜びます。とっても。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 用語を覚えるのが大変だと思ったら、最後に解説がりわかりやすかった! 呪いの遺伝というのが個人的に好きな設定です。 [気になる点] 今後どんな異型魔が出るのか気になる。 [一言] とても続き…
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