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神と人の契約戦書 ~神話と共に人は生きる~  作者: 氷室莱那
第一章 新たなる神話の始まり
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第一章-③

キーンコーンカーンコーン 授業開始の時間となりました。生徒の皆さんは速やかに自分の席についてください。繰り返します・・・。


「ふぅ~何とか間に合った・・・。相変わらず、うちは時間に厳しすぎるなぁ。一分でも遅れたら、遅刻扱いはないでしょ・・・。というか、コメットの最高速度速すぎでしょ。さすが、アルテミスの眷属というべきか。でもさすがに何回も乗りたくないな・・・」


「おっ、今来たの翠波?」


「おはよう、蓮。相変わらず朝から元気だね。」

彼女は草川蓮。僕と同じ神約者だ。さらに、幼いころからの親友でもある。


「まぁね。翠波はなんかぐったりしているみたいだけど?」

まぁ、わかるよね・・・


「朝からアリスの説教が飛んできてね。今回に関しては、僕とばっちりだよ!?」

「しかも、朝から電車が止まっていてね・・・ アルテミスの眷属の銀狼に乗せてきてもらったんだ。その速度がとてつもなく速くてね・・・」


「またフレイヤさんか・・・まぁさすが美の女神といったところだね、自由だなぁ・・・しかも、その感じだと、アルテミスさんはまだ朝遅いんだね。というか、よく狩猟神の眷属に乗れたね?」


「まぁ、契約した時から一応一緒に世話してるからね」


そんな他愛もない話をしていると、教室のドアが開かれ、若い男性教師が入ってきた。


「みんな席についているな。今からHRを始めるぞ~」

そう言いながら、彼は教壇とホワイトボードの前に立った。


「みんなおはよう。今年も、君たちの担任となった榊功成だ。今年もよろしく」

榊先生は、去年もお世話になった僕のクラスの担任だ。人柄もよく、実力も申し分ない良い先生だ。まぁ、若いからか時々テンパって空回るのが玉に瑕だ。


「まぁ、自己紹介は去年もやったからいいとして、今から議事堂に向かうぞ。始業式を行うそうだ。一応そこで、去年の成績優秀者や学外で成績を残したものたちの発表があるみたいだ」

ふむ、去年は一年生だったからそんなことがあるなんて知らなかった。


「翠波、行こう?もうみんな行ってるよ」

蓮はもう、席から立って歩き始めている。

「了解、今行くよ」



「議事堂はやっぱり広いな。これだけで、日本の人口の半分は収納できるんじゃないか?」


「いや、さすがに無理でしょ。変なこと言ってないで、入るよ。」


ドアを開けるとそこには、ものすごい人ごみがあった。


「やっぱ、生徒数多いよねうち」


「まぁ、日本屈指の契約者たちの学園だからねぇ。人が集まるのは当然でしょ」


そんな雑談をしていると

「これより、黄華学園の始業式を行う。まず学園長の挨拶だ。では学園長」

呼ばれると、眼鏡をかけた初老の女性が壇上に登壇した。


「ああ。諸君おはよう。そして、在校生の諸君春休みは存分に休めたようでなによりだ。長い話は嫌われると思うので、手短に。今ここにいる諸君たちは、神話に描かれた神・悪魔・天使たちと契約を交わした人を超えし者だ。だからこそ、我々はその力を私利私欲に使うのではなく、大切なもの達を守るために使うのだ。そのことを胸に刻んで、今年度も勉学に励んでほしい。私からは以上だ。」

ここの学園長は、こういう挨拶が手短に終わるから、良い学園長なのではと少し考えている。実際偉い人の長い話というものは、誰だって聞きたくないだろう。それとこれは僕の偏見だが、長い話に限って中身がない。


「話短くって、良かったね翠波」どうやら親友にはばれているみたいだ。


「まあね、それでこの後ってなんだっけ?」


「この後は、二年だけそれぞれ科に分かれるんだって」


「ああ、そうだったね。だから空気が少しピリついてるんだ・・・」


「そうね。まぁ、このくらいのピリつきなら楽しいって感じるかな・・ 話は変わるけど翠波は少しめんどくさくならない?だって契約神が二柱でしょ?」


「そこなんだよねぇ。まぁ何とかなるでしょ。」

そんな話をしている間に、「神約科希望の生徒は、第二体育館に集合してくれ―!」と大きい声で呼んでいる。


「それじゃあ行こうか。」「おっけー」


「それにしても、神約科の希望者って結構少ないんだね。」

二年生では、僕たちを入れて五十人にも満たない。ここにいる人たちは、神と契約できたものたちだ。


「そりゃそうでしょ。まず、契約しようと思って、狙って神を呼び出せるわけないじゃない。ましてや、あんたは、二柱呼んで契約しているのよ。どんだけ、契約魂(キャパシティ)があるのよ。」


「それに関しては、何とも言えないよ。生まれ持ったものとしかいえないし…その理屈でいうなら、蓮だって、相当なものだよ。神と契約したくても、できなかった人だっているんだから。」


「それもそうね。それに、こんな話をしても私たちには意味ないわ。というか、もう着いたわよ。」

ガチャ ドアを開けるとそこには、多種多様の神が存在する。一種の神話が広がっていた。


「これは壮観ね。全員、自分の契約神顕現させてるじゃない。」


「じゃあ、僕たちもしておく?」


「そうね。顕現(コールライズ)‼」『虹の橋を守りし番人 今黄金と共に、現れよ‼ ヘイムダル‼』

そう唱えると、地面に黄金の陣が召喚陣が描かれ、そこから黄金の鎧を身に着けた男性が顕れる。

本来は、共に生活しているのでこのように喚ぶ必要はないのだが、この学園では必要時以外は顕現させていてはいけないので、このように呪文を唱えて顕現させている。


「ようやく喚んだか、蓮」


「ごめんね遅くなっちゃって」


「それじゃあ僕も、顕現‼」『其は、闇を浄化せし蒼銀の月 その輝きをもってすべてを撃ち抜け‼ アルテミス‼』


「ふぅ、ようやく喚んでくれましたね翠波様」


「うん、ごめんね喚ぶのが遅くなって」

「本当は、フレイヤも一緒に連れてきたかったんだけどね。ほら、ばらすわけにはいかないでしょ?」


「まあ、それは仕方ないですよ。本来は二柱の神と契約できないのですから」

そう僕が本来あり得ることの無い二柱との神と契約したことは、アリスと蓮や近しい人間のみだ。このことは学園側も知らないことであり、よほどのことがないとバラすつもりはない。


「というか、何でアルテミスさんなの翠波?」

それ聞いてくるんだ蓮、見てよアルテミスの顔。「何でそんなことを聞いてくるんだ」って顔をしてるよ。女神がしちゃいけない顔だよ。


「単純だよ、フレイヤはあまり戦闘に向いていないからね」


「それだけじゃないでしょ?翠波」

まぁ、連ならわかるよね。


「やっぱ鋭いね蓮。そうだよ、フレイヤを信用してないわけじゃないけど…」

「ほら彼女の魅了ってほとんどの生物に効くし、権能じゃなくて概念的なものだろ?だからだよ。でもいざとなったら無論顕現させるよ。」

そう、フレイヤの美貌は耐性のない生物には確実に毒なのだ。そうなると、僕の学園生活がとんでもないことになってしまう。


「そういうことだったのね。なら納得したわ。ただ、家に帰ったらフレイヤさんに埋め合わせはしてあげなさいよ。」


「わかってるよ…」


ほんと、埋め合わせが大変だ…


そんな話をしていると、壇上に一人の女性が上がって話し始めた。


どうやら、科別の授業の説明みたいだ。正直ここは聞き流してもいいだろう。というかここは、春休みの時に配られた案内を読んで、覚えた。

「ここからは、本命の契約戦書(ラグナロク)について説明していきましょう。」


ようやく本命の説明だ。


「契約戦書、それは契約者同士の戦い。一ヶ月に二回行われる模擬戦です。その模擬戦はこの契神科だけでなく、あと二つの魔使科、使天科との一対一の勝負になります。勝つことで相手の所属科、ランクに応じてポイントを獲得することができ、この学園にある無限の蔵書(ちしきのほし)への閲覧権限や、学園内で受けられる依頼のランク決まります。」

そう‥契約戦書があるからこそ、この学園のみ、いや、契約者ならだれもが参加したいと思うシステムであり、自分たちの価値を一番高められるところである。そして、一番地獄ともいわれる所以である。しかも無限の蔵書と呼ばれる世界最大の知識の海の閲覧権にも直結しているから、余計にだ。


説明が終わると「ねぇ翠波。私、ものすごく楽しくなってきた。」蓮が隣で、ものすごくイイ笑顔しながら言ってきた。


「だろうね。はたから見ていても伝わってくるよ。だってヘイムダルも笑ってるし‥」


「そういう翠波はあまり、やる気なさそうに見えるけど?」まぁ実際好き好んで闘う気はない


「まぁ、ある程度はやるよ。無限の蔵書の高位アクセス権欲しいし」

そう、僕は無限の蔵書の英知を読みたいだけなのだ。


「私もそこまで、やる気はないですね。それに仕事の件もありますから」


「そうだね」

 そうやって、契約戦書について話している間に、神約科のオリエンテーションは終了した。



「いや~この先楽しそうだねぇ」

教室に帰りながら、蓮は嬉しそうに話す。彼女はバトルジャンキーだから、仕方ないのだが…


「確かに楽しみではあるね、授業の方も共通以外はほとんど神約科の授業みたいだし、面白くなるね蓮?」


「うっ…気を付けます…

」そう蓮は、勉強があまり得意ではないのだ。これにはヘイムダルも呆れており、毎回のテスト対策をしてようやく普通なのだ。なのに、戦闘では恐ろしいくらいに頭が回る。


「それで、この後確か授業はなかったはずだよね。武闘所でも確認する?」

どれだけ、闘いたいんだ。そこは、すごく感心するよ。


「いや、別にいいかな。あの人からの依頼が夜に入っているから、帰って昼寝するよ」


「また、依頼入ってるの?昨日も入ってなかった?」


「今日は単純に人手が足りないから、フレイヤと一緒に『表』の方を手伝ってほしいって」


「なる。じゃあ私も手伝いに行った方がいい?あの人とは私も関わりあるし、それに家に帰っても両親はどっちも遅いし」

確かに来てくれるとありがたいけど…


「今日は大丈夫かな。また人手が足りない時に連絡するよ。アルテミス帰るよ。」


「わかりました。翠波さま」

「そ、じゃね翠波」

「それじゃあな、翠波、アルテミス」


そう言って、僕たちは学校を後にする。


「ただいまー」


「おかえり~ 今日速いね翠波君」


「今日は始業式とオリエンテーションだけだから、早いんだよ。それとフレイヤあの人からの依頼何時からだっけ?」


「確か、16時からだったよ。」


「ありがとう。それじゃ、少し昼寝するよ。アルテミス申し訳ないけど、フレイヤ見張っといてね」

これで、朝のようなことは起きないだろう。


「わかりました、翠波様。おやすみなさい」


「ちょっ、ひどくない?そこまで信用されてない?」


「当たり前でしょ。どれだけ、アリス様の説教を受けても治らないのだから警戒するしかないでしょう」


そんな、二人のやり取りを耳しながらゆっくりと身体を睡魔に委ねる。まぁ、あとでフレイヤの機嫌を直そうか…



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