第一章-①
四月の朝、カーテンの隙間から日光が差し込む。この部屋の主―翠波は目を覚ます。
「う、う~んもう、こんな時間か。て、なんだこの重さは?」
「スゥ~スゥ~、ウフフ」体を起こそうとすると、腕に違和感を感じた。
「はぁ~またかフレイヤ・・・ しかも、服着てないし・・・」
そこには翠波の契約神の一柱フレイヤが翠波の腕を枕にして、幸せな表情で眠っている。しかも、体全体で翠波に抱き着いている。
しかも一糸まとわぬ状態で・・・
「いつの間に僕に寝室に侵入してきたんだ?入って来た時の音はしなかったし、布団に入ってきた気配も感じなかった。神だからできることなのか・・・?」
そんな変なことを考えているうちに目を覚ましたのか、僕の首に手を回して抱き着いてくる。
「う、う~んふわぁぁ・・・おはよう~翠波君。今日もいい日になりそうね。」
「おはようフレイヤ。そろそろ、朝ごはんの時間だから布団から出ようか?じゃないと彼女たちからまた、説教をもらうよ。」
「まぁまぁいいじゃない。たまには朝から、堕落に過ごしましょう?昨日の夜、仕事を終えて、今日は休みということで…。」
「いや、今日学校があるんだけど!?というか早く服を着てぇ!?」
「別にいいじゃない・・・ それに私は寝るとき服を着ないの・・・」
「なら、早く自分の部屋に戻って!!」
なんてことを言いあっていると、僕の部屋のドアが静かに開いた。
「何がいいんですか?フレイヤさん?」
体の芯から底冷えするような声が、僕の部屋の入り口から聞こえた。
「「アッ」」
そっちに目を向けると、フレイヤとはまた違う感じの金髪の女の子が僕とフレイヤを冷たく見ていた。
リビングで僕とフレイヤは正座していた。それもフローリングの上で、しかも自分より年下の女の子に怒られながら・・・
「もう!!何しているんですか義兄さんとフレイヤさんは!!今日から学校だって昨日言いましたよね!?それなのに、義兄さんとフレイヤさんは堕落に過ごそうとして、学生の自覚はあるんですか!?」
「ちょっ、何で僕まで怒られてるの!?僕被害者だよ!?しかも、いつもクールなアリスはどこへ行ったの!?」
そう今僕とフレイヤを説教している義妹―アリス・インティーカは普段はアルテミスと同じように冷静沈着な性格なのだが、たまにそれを忘れて説教してくる。
ちなみに、彼女は僕の家で一番ヒエラルキーが高い。まぁ、基本的に家事全般をやっているから当たり前なのだが・・・
ちなみにフレイヤは最下位にいる。神様なのに・・・
そんなわけで、フレイヤはアリスに勝てず、正座しているわけだ。
ちなみに僕はって・・・・ 聞かないでください、今正座していることが証拠です・・・
「そんなクールさは今はいりません!!」
この義妹、『そんなの』って一蹴したよ!
「大体、何でフレイヤさんは義兄さんの部屋に入って、しかもベッドに潜り込んでいるんですか!?少し羨ま・・ゲフンゲフン不埒なことを朝からやめてください!!」
うん?なんか変なことを言ったような・・・
「落ちついてください、お嬢。今は説教をしている時間はないですよ。確か今日は日直でしたよね?」
「はっ!そうだったね。ぐむむむ・・・・はぁ仕方ないですね。今回はこれで許しますけど、また平日にこのようなことがあれば容赦しませんからね。」
アリスは少し恨めしそうにうなった後、ため息を吐いた。
「ありがとう、ホルスさん。」
そう僕は、アリスの肩に飛んできた緑銀の羽をもつ鳥―ホルスに声をかける。
「いえいえ、私からも忠告ですが・・・さすがに学校のある日はやめてくださると助かります。この後のお嬢確実に機嫌が悪くなるので、なだめるの大変なんですよ。」
ホルスさんは顔に苦労をにじませたような表情になり、こちらとしてもさすがに申し訳なく思う。いや、ほんとに・・・
「それじゃあ、義兄さん私は学校へ行ってきます。そちらも遅刻しないようにしてくださいね。行きますよ、ホルス。」
「かしこまりましたお嬢。」
そう言って、アリスはホルスさんを肩にのせ、学校へ行くために玄関へと向かった。
「えっ・・待って?私このまま置いてきぼりなの? 足がしびれて立てないのだけど・・・ アルテミスたすけて~!!」
フレイヤの足がプルプルしている、痺れているのだろう。
「えっ・・・?僕もそのままにしていくの・・?アルテミス~!!起きて―!!」
フレイヤを置き去りのまま、朝は過ぎてゆく。
ちなみにアルテミスは、まだ起きていない。彼女は朝に物凄く弱いのだ、休日は昼の一時くらいまで寝ているのだ。
理由は彼女が月の女神だから・・・
あ、足がしびれてきた・・・・アルテミスー!!早く起きてぇー!!