第三章ー⑩
エイナと楓ペアの模擬戦後の話になります。
視点は翠波に戻ります。
エイナさんと楓さんのペアの模擬戦が終わった後・・・
「ねぇ、彼女たちのペアどう思う?翠波」
蓮が、今やっている模擬戦を見ずにそんなことを聞いてくる。
「どうっていうのは・・?」
意図がわからない、急にそんなことを聞いてくるなんて・・・
「簡単に言うと、敵になった場合脅威になるのか・・・もしくは、味方とするのかってこと」
そういうことか・・・
「う~ん敵にするなら、ユピテールの権能が正直脅威かな。発動までにタイムラグがあるけれど、多分そこを突かれないために楓さんが前に来るだろうし・・・」
しかも純粋に威力が高いから、正直きつい・・・
「味方にするなら・・・?」
「味方にするなら、エイナさんを最後衛に配置して、蓮と楓さんを前衛にする。僕は遊撃に徹するかな・・」
蓮と楓さんで大体敵を荒らせるだろうし・・・それに、エイナさんの権能の範囲に入れば確実に持久戦に持ち込める。
そして、僕の推測通りならばきっとユピテールの権能のひとつは・・・
「何考えてんの、翠波?」
蓮が顔を覗き込んでくる。
「何でもないよ、それよりもほら・・」
顔を、ある方向に向けると蓮もその方向に顔を向ける。
そこには・・・
「エイナさん!!楓ちゃん!!」
♢♢♢♢♢
「やっほー 蓮ちゃん。いやぁー疲れたよー」
さっきの敵の攻撃が当たっていたのか、制服の所々に傷がついている。
とは言っても、ほとんどがかすり傷なのであまり痛くなさそうだ。
「それにしても二人ともすごいね~ ほとんど完封に近い勝ち方をするなんて、どこかで戦闘経験を積んでいたの?」
いきなり、凄いこと聞くなぁ~
そのことを感じたのか、楓さんは
「いやぁ~、一度も戦ったこともないよー。それにエイナはこういう戦うのが嫌いだしねぇ」
「そ、それよりも蓮さんたちが行った前回の模擬戦を見ていましたけれど、お二人も凄くお強かったですね」
「ええ、本当にこのお二人は強かったですね・・」
エイナさんとその契約神であるユピテールが話しかけてきた。
「ええと・・・あなたが・・」
「はじめまして、エイナの契約神ユピテールです。どうぞよろしくお願いします」
ユピテールさんが挨拶してきた。
「天華翠波です」
「草川蓮だよ」
その挨拶に僕たちも挨拶を返す。
「僕も忘れてもらっては困りますね・・」
楓さんの後方から、優しく低い声が聞こえた。
「どこ行ってたの、バルドル?」
「少し、保健室に行っていたんですよ・・ 女性がかすり傷でもそのままにしておくのはさすがにどうかと思いますので・・」
なるほど、模擬戦が終わってからすぐに保健室に行っていたのか・・・
どうりで楓さんがこっちに来た時、一緒に来なかったわけだ。
「それにしても、よく勝てたね。相手の神様も強かったんでしょ?」
そう、見ていた感じ相手の契約神はどちらも武神か戦神の類だった。
正直、ここまで傷が少なく勝つとは思っていなかった。
「まぁ、強かったよ~ でもねぇ私とバルドルのコンビネーションに結構不意を突かれたんだろうね、一気に攻め込めたよ」
「ですね。とは言っても結構あの状況で権能使うのは怖かったですよ。操作を誤ると、主に当たりますから・・・」
なんか今とんでもないこと言ってなかった?
「えっ!?あの光の権能って敵味方の識別ないの!?」
蓮が物凄く驚いてる。エイナさんも聞かされていなかったのか、驚いた顔をしている。
ユピテールさんは、我果敢せずというように飛んできた小鳥と戯れていた。
「ええ、ありませんよ。ただあの光は僕が全て操作しているので、敵は逃げられませんし迎撃には最適な権能ですよ」
それは、確かにそうだ。
「あたしとバルドルよりも、エイナとユピテールの方が凄かったと思うよ?だって、無傷なんだもん」
「そ、そんなことないよ。楓ちゃんがしっかりと相手を止めていてくれたから、ユピテールの権能が発動できたんだよ・・・ それに、私が勝ったのはユピテールの権能があったからだよ・・・」
本当に、戦うのが嫌いなんだな。
それに、ユピテールさんも戦うことがあまり好きじゃなさそうに見える。
「そう!!ユピテールさんの権能すごかったね!!あんな範囲での嵐を巻き起こして、操るなんてすごい権能だね!! 」
「正直、私とヘイムダルでも打ち破ることはできないと思ってるよ。というか無理を承知で突破するしかなって思ってる」
蓮が、ここまで言うなんて初めてだ。
『執行者』の『依頼』の時にもこんなことを言わなかったのに・・・
「や、やめてくださいよ・・・ 私あまり人を傷つけたくないんです・・・」
「で、でも【無限の蔵書】のアクセス権が少しでも手に入るので・・・」
エイナさんもアクセス権を狙っているのか・・・
「何でアクセス権を手に入れようとしているの?」
蓮がその理由を聞いていく。
恐れを知らないな~
「私読書が趣味なので、多くの本を読みたいんです。だから、アクセス権を少しでも上げたいんですよ。それに、いろんな物語、神話を読むことが出来るのは夢みたいじゃないですか!!」
うわぁ、物凄く目がキラキラしている。
何かを悟ったのか、楓さんは「あちゃ~」と言いながら手を頭に置いている。
バルドルとユピテールさんは、小鳥だけじゃなくどこからか顕れたのかアルテミスが喚んだ眷属と戯れている。
「だって、【無限の蔵書】ですよ!?国内でも有数の本の宝庫ですよ!!そんなの生きているうちに読める分だけ読みたいに決まってるじゃないですか!!」
「しかも、地域の図書館にはない本がいっぱいあるんですよ!!それだけじゃなくて過去絶版になった魔導書や神話が、どれほどそこに眠っていると・・・」
「もしかしてエイナさんって・・・」
楓さんにおそるおそる聞いてみると・・・
「あんたの思っている通り、超がつくほどの本好きだ。しかも一度話し出すとユピテールさんですら止めることは難しいほど・・・・な」
仕方ない、ここはその引き金を引いた蓮を生贄にしよう。
胸の前で手を合わせると、僕の意図が通じたのか楓さんも同じようなポーズをとった。
「聞いてるんですか!?蓮さん!?」
はい、どうも作者です。
今回は模擬戦後の話でしたが、どうだったでしょうか?
エイナの戦う理由、一言でまとめるなら本が好きだから。この一点ですね。
そして、地雷を踏んだ蓮。ああなるとエイナは止まりませんよ。
皆さんもあるでしょう?好きなものを話すとき止まらなくなるの。
とは、言っても本当にエイナが戦う理由はそれだけなので・・・
ただし、その地雷に悪い方向で触れちゃうと・・・・ あとは察してください・・・
まぁ、というわけでほとんどエイナ回になっちゃいましたね。次回はまた『執行者』も絡めていきますのでお楽しみに~
それでは!!




