第一章-⑪
電車を降り、駅を出た僕と蓮は、コンビニに寄り品物を見ていた。
「それでー、買うものは決まったの~?」
蓮は、飽きたように僕に聞いてきた。
「うん、ごめんね。それじゃこのパンとこの飲み物、奢ってくれる?」
そう言って選んだのは、僕があまり食べなそうな紅茶と、おしゃれなパンだ。
「えっ? 翠波あんまりこういう系のやつ買わないじゃん」
「これらは、フレイヤへのお詫びというか・・・」
「ご機嫌取りなわけだ。わかった、買ったげる」(それ結構お値段するんだけど!?)
蓮は顔を引きつらせながら、レジに品物を持っていく。
「ありがとう、蓮」
「まぁ、これも約束だしね。私、約束は守る女だから」
(こりゃ、バイト代が入るまで少し我慢の日々だよ・・・ あぁー!『依頼』がどっさり入ってこないかなぁ!そうすれば、バイト代も報酬で跳ね上がるのにー!)
《それは、さすがに不謹慎ではないか蓮よ?『依頼』が入ってくる。つまりそれは平和ではないことを意味するのだぞ?》
《うっ、それはわかってるけど・・・》
「それじゃ、私はバイトに行くね。また明日」
「ああ、また明日。何か情報がわかったらまた連絡して」
「りょーかい、んじゃ」
そう言って二人は別れ、歩いて行った。
♢♢♢♢♢
「ただいまー」「ただいま帰りました、フレイヤ」
「おかえりなさい、義兄さん、アルテミスさん」
「アリス?もう帰ってたんだね」
出迎えたのは、フレイヤではなく、アリス。どうやら、先に帰っていたらしい。
「あれ?その手に持ってるのは・・・」
アリスが、翠波の手に持っているコンビニの袋に気付いたようだ。
「ああ、実は・・・」
「また、蓮さんと何か賭けでもしたんですか?」
普通に気づいてるし!
「まぁ、そんなところだよ。それより、フレイヤは今何してるの?」
「話を変えましたね・・・まぁ、何でそうなったか追々聞くとして・・・ フレイヤさんは今ワルキューレさんと一緒に料理を作っていますよ」
「へぇ~ ってフレイヤが料理!?今まで、「絶対ヤダ!」って頑なに断っていたフレイヤが!?」
一体どんな心境の変化だろう、想像がつかない。実際アルテミスも口を開けて、呆けている。よっぽどびっくりしているのだろう。
「驚くのはわかります、ですが現実なので楽しみに待ちましょう」
玄関からリビングに行くと・・・ 緑色のシンプルなエプロンを着ているフレイヤがいた。
「おかえり~ 翠波君、アルテミス。アリスちゃんから聞いてると思うけど、夜ご飯は私が作るからちょっと待っててね~ ワルキューレ!手伝って!」
ほんとに、料理を作ってる・・・ というかエプロンが似合っている。
「これは、すごい量の夕飯が出てきそうですね・・・」
「まぁ、いいんじゃないかな。それに今日は疲れただろう?」
昼から、急に模擬戦があったから正直おなかがものすごく減っている。
「それで、義兄さん、今日学園で何かあったんですか?」
「ご飯の時にしっかり話すよ」
「わかりました。どうやら、もう完成したようですね」
「ご飯できたよ~ フレイヤ特製のローストチキンとコンソメスープだよ~」
そこには、とてもいい焼き加減で焼かれたローストチキンと、しっかり煮込まれたコンソメスープが出てきた。
「これを、本当にフレイヤが作ったのですか!?」
「そうよ~ ところどころヴァルキリーに手伝ってもらいながらだけど、ほとんど私が作ったわよ~」
フレイヤに、こんな才能があったなんて・・・
「さぁ冷めないうちに食べましょう~?」
「そうですね、ホルス一緒に食べましょう」
アリスは、部屋の止まり木に止まっているホルスを呼びだした。
「わかりました、お嬢」
「みんな揃ったね?それじゃ、いただきます」
「「「「いただきます」」」」
「まずは、ローストチキンから・・・」
パクッ・・・
「美味しい!美味しいよ、フレイヤ!」
「ええ、本当に美味しいですよフレイヤさん」
「皮はパリパリ、お肉はジューシーよく作れましたね・・・」
「次は、スープの方を・・・」
ずずっずずっ
「これも、美味しいよ。しっかり野菜の甘みが出ている」
「そうですね、それに気をてらずシンプルに仕上げている。お見事ですフレイヤ嬢」
「良かった~ やったわね、ワルキューレ」
( ´∀`)bグッ! ワルキューレさんもサムズアップをして嬉しそうだ。
「ローストチキンとスープもまだまだあるから、おかわりしてね~」
フレイヤの料理に舌鼓をうちながら食べていると、アリスが・・・
「義兄さん、学園で今日何があったか話してくれませんか?」
そんなことを聞いてきた。
「わかったよ、ご飯の時に話すって約束だしね」
「実は、今日がそれぞれの科での顔合わせでね、神約科に行ったんだけど・・・」
「行ったんだけど・・?」
「自己紹介もなしに、いきなり二対二の模擬戦をしてね・・」
「えっ?いきなりですか?」
「うん、いきなり。幸いペアは隣にいる人物って指定があったからよかったけどね。隣が蓮だったし」
「それは、幸いというか・・・ 他の人達はドンマイというか・・・」
それを聞いていたフレイヤが
「結局、模擬戦は勝ったの?負けたの?」
「勝ったよ。さすがに、戦闘経験があまりない神約者に負けるわけにはいかないよ。『執行者』としてね」
「そうよね~」
そう言っているが、フレイヤの目は、「負けてたら恥ずかしいよね?」と訴えてた。その目は、アルテミスにも向けていた。
「それじゃあ、そのコンビニの袋は?」
「蓮との賭けに買ったから、蓮に買ってもらったもの。最近フレイヤがほしいって言っていたパンと紅茶」
この二つを買うときに、蓮の表情引きつってたな~
「あら~覚えていてくれたのね。嬉しいわ、翠波君」
喜んでくれるのなら、何よりだ。
その後は、他愛もない話をして夕食を食べ終わり・・・
「ごちそうさまでした」
「「「「ごちそうさまでした」」」」
「片付けもやっておくわね~」「手伝いますよ、フレイヤ」
フレイヤとアルテミスは一緒に洗い物をしている。
「アリス、父さんと母さんから何か来た?」
「義兄さんが帰ってくる前に、手紙が届きまして、お二人とも今は、GDAにいるそうです」
「相変わらず、海外諸国を飛び回ってるね・・・ まぁ、らしいと言えばらしいけど」
「二人とも、強い神約者と契天者ですし大丈夫ですよ」
「そろそろ、お風呂に入って自分の部屋に行きますね。おやすみなさい、義兄さん」
パジャマを持って、お風呂場に向かう。
「うん、おやすみアリス」
「翠波君~ アリスちゃんは?」
「お風呂に行って、自分の部屋に行くって」
「アリスちゃんに、この前のこと伝えないでいいの?」
「巻き込むわけにはいかないよ。それに、まだアリスは戦闘経験があまりないから」
「そうだったわね~ なら仕方ないわね」
そう、この事件は僕たち『執行者』と『機関』で終わらせなくちゃ行けない。そう僕は決意した。
次の話から、第二章になります。
それと、食事シーンでホルスとアルテミスが話していませんでしたが、この二人は食事中は静かに食べることが好きなので、これからの食事シーンでもあまり話しません。




