第一章ー⑩
「いやー、満足満足」
模擬戦を終えた蓮は、ホクホク顔で隣に座っている。
「蓮が満足そうで良かったよ。それに、課題も見えたみたいだしね?」
「まぁ、それは追々話すとして・・ねぇ今やってる模擬戦どっちが勝つと思う?」
「あたしは、今攻めてる方かな。攻めが激しいし、それに契約神どうしの連携もいいし、勝利間違いなしかな」
「いや、僕は今守りに入ってる方が勝つと思うね」
「なんで?「攻撃は最大の防御」ってよく言うじゃん!?」
蓮はいつも攻め一辺倒だから、そう思っているのだろうけど・・・
「実は「防御は最大の攻撃」っていう言葉もあってね。守りの方が強い時もあるのさ。現に今の状況がそうだね」
そう、今の状況は一見すると攻めの方が有利に見えるが、実際は守りの方が有利に動いているのだ。
守りに回っている方のペアが、動きは良い。多分、そういう権能なのだろう。
「ほら実際に・・・」
そう言って、僕はグラウンドに目を向ける。
「あー!ほとんどの攻撃が当たらなくなってきた!」
そう、攻撃が当たらなくなってきたのだ。そして・・・
「反撃に転じた!しかも、防ぐ暇もない連続攻撃だ!」
「これで、僕の予想が当たったね。今日の帰り何か奢ってね」
「はぁ!?そんな約束してないじゃん!」
「今決めた。というわけでよろしく」
「いや、何がよろしく!?まぁ、いいや。実際今日勝てたの翠波のおかげの部分あるし、奢るよ」
そんな他愛のない話をしていると、模擬戦が終了した。
♢♢♢♢♢
「ねぇ…見た?最初のペア。天華翠波と草川蓮の二人、あの二人は完全に戦いなれてるやつの動きだよ」
「ああ・・見たぜ。あいつらは、今年の神約科の中で別格だ」
冷や汗を流しながら、翠波と蓮を見つめる。
「ああ、明らかに連携しなれている。面白いやつらが入ってきたものだ」
「それに、戦闘開始と同時に草川蓮が敵に突っ込んだ。これは、奇襲でしょう。それに、敵の情報をペアである天華翠波に教える為でもあるでしょう」
「でも、あの二人そんなそぶりなかったぜ?」
「天華翠波の契約神が呼び出した猟犬の額に情報共有して、そこから情報を渡したのでしょう。よほどペアを信頼していないと出来ないことです。現に額に紋様が浮かび上がっていたでしょう?」
どうやら、この女性はヘイムダルが行ったことを見抜いていたようだ。
「まじかーそんなん気付かなかったわ・・・」
「あの二人いいねぇ、生徒会に欲しいなぁ、勧誘しようか」
会長がぼそっと呟くーどうやら他の人に聞こえていたらしく。
「あたしは賛成するぜ。強いやつは大歓迎だ、それに書類整理もやってくれそうだしな」
先ほど、冷や汗を流していた女子はその意見に肯定的だ。
「俺は、どちらでも構わん。入るのであれば歓迎はしよう。それに、お前のことだ、反対しても強行するのだろう?」
腕を組んでいる男性は果敢せずだ。
「あららぁ、ばれてる?」
「当たり前だ。何年ともにいると思っている」
会長と呼ばれた男性はバツが悪そうな顔をする。
「では、その方で書類を作成しますがよろしいですか?」
「ああ、任せたよ副会長」
そう言って、四人はこの会場を後にした。
♢♢♢♢♢
「そこまで!」
最後の模擬戦が詩菜先生の一声で終了した。
「これですべての模擬戦が終了した。みな、現在の自分たちの実力がよく分かったと思う。しかし、そう悲観するものではない。実力がわかったということは、みなまだまだ成長できるということだ。幸いペアの相方がいる、私たち教師がいる。使えるものは使いこれからの皆の成長を期待する!」
「今日の授業はこれまで」
(ようやく終わった・・・・)
僕は、ほとんどの模擬戦を蓮とどちらが勝利するかを予想しながら、時には解説をしていた。だからこそ、疲労困憊なのだ。
「今日の授業は終了か・・帰るか・・」
そう言いながら、蓮を探す。
「翠波ー帰るよー」
蓮が手を振りながら、僕を呼んでいる。
「わかったー今行くよ」
蓮の声に応えて、駅に向かう。
―電車の中
「蓮は今日バイトだっけ・・・」
「うん?それがどうしたの」
「いや・・今朝言っていた予想を黎芭さんにも伝えるのかと思ってね・・」
「当たり前だけど、なんで?」
蓮は「何言ってんだこいつ」みたいな目で僕を見る。
「不確定すぎるんだよ、今回の事件。今までこんな事件は起きたことがなかった。だからこそ、予想という曖昧なものは伝えるべきじゃないと思ってね」
今朝、蓮には僕たちの予想を伝えたのに、これじゃあ矛盾している。
「だからこそ、伝えるんだよ」
「えっ?」
「不確定だからこそ、ある程度自分たちの落としどころを持っておかないと、ずっと暗闇の中にいることになるよ」
まさか、蓮にそんなことを言われるなんて・・・
「そう・・だね・・わかった黎芭さんに蓮の予想を伝えておいて。それでその後、また話し合おう。まだ、アリスには伝えないよ。さすがに彼女には厳しすぎる」
アリスは『執行者』ではないが、僕たちの仕事を知っている。
「オッケー黎芭さんに伝えておくよ」
「おっもうちょいしたら駅だ。いつものコンビニでいいんだよね」
「ああ、もちろん」
蓮のたまに核心を突く洞察力は馬鹿にできない。むしろ今のもやもやを取り払ってくれたから正直ありがたい。
そう思いながら、僕らは電車を降りた。
来週には、今登場しているキャラのプロフィールをまとめますので少々お待ちを・・・(m´・ω・`)m ゴメン…




