第一章-➈
講堂から出て、コロシアムみたいなグラウンドに来た僕たちは、対戦相手のペアと向かい合っていた。
「よーし、全力で行こ!翠波」
蓮がものすごくうずうずしている。遊園地に行くのが待ちきれない子供みたいだ。
「ちょっ、落ち着いて蓮。戦えることがうれしいのはわかるけど、まずは、作戦を立てよう?じゃないと勝てるものも勝てないよ」
そんな蓮を落ち着かせるように、僕は声をかける。
「あっ、そうだね。ごめんごめん」
大体作戦を立てるために、声をかけると落ち着いてくれる。
というか、どんだけバトルジャンキーなんだ・・
「それで、作戦は?【執行者】の時の作戦を使うのか?」
基本的に、【執行者】の作戦は僕と黎芭さんが考えており、それをメティスさんにさらに修正してもらうことで実行している。
「そうだね、いつものパターンαで行こう。その方がやりやすいだろ?」
「パターンαって言うと、私とヘイムダルが前衛で情報集だね。りょーかい。きっちりこなすよ」
《聞いてたでしょ?ヘイムダル》
《あぁ聞いていた、マスター。後ろはいつものように彼らに任せよう》
「よしそれじゃあ、行こうか」
そう言って僕たちは言われた所定の位置につく。
「それでは、これより模擬戦を行う!各自、契約神の顕現を」
「顕現!『其は 闇を浄化せし蒼銀の月 その輝きをもってすべてを撃ち抜け アルテミス!!』」
「顕現!『虹の橋を守りし番人 今黄金と共に現れよ ヘイムダル!!』」
アルテミスは銀色の弓、銀色の軽装を装備して、ヘイムダルは黄金の剣と盾を持ち、金の鎧を纏って現れた。
「どうやら、万全の態勢だね。アルテミス」
「ええ、もちろん。作戦は聞いていました、いつものように動きます」
アルテミスはすぐに察してくれたようで、説明しなくて済む。ありがたい。
「おっ、やる気満々だねぇヘイムダル」
「まぁな、久々の戦いだ。心が躍るさ」
あっちもやる気満々みたいだ。
「よし、両ペアとも顕現し終わったようだな。それでは、始め!!」
「こっちから仕掛けるよ!ヘイムダル!」ダッ!
「おうよ!」ダッ!
蓮が、ヘイムダルから同じ剣と盾をヘイムダルから借りて、敵ペアへ一緒になって突っ込んでいった。
相手からは、驚愕の表情が見て取れる。まぁ、普通は驚くよね。契約者が一緒に突っ込むなんて、あり得ないし・・ っと思考に陥っている場合じゃないや、こっちも仕事をしないとね。
「いくよ、アルテミス」
「了解しました、翠波様。顕れなさい我が眷属たちよ!」
アルテミスは、昨日喚び出した銀狼の「コメット」だけでなく、猟犬や熊、鷹を喚び出した。
「行きなさい!「オリオン」はここで私と翠波様の護衛よ」
そう言って、銀色の毛をした熊を側において、その他の眷属はヘイムダルと蓮を援護するように走らせた。
♢♢♢♢♢
突っ込んで行って、すぐさま戦闘音が発生した。
ガキィン! ギリギリ・・刃と刃がぶつかり合う。ドゴォーン!爆音が轟く。
「なかなか、この守り崩せないね。ヘイムダルどう?相手見通せた?」
相手の攻撃をかわしつつ、蓮はヘイムダルに問いかける。
ヘイムダルの権能『世界を見張る者』は左目にあるモノクルを通じて、指定した人、物、時間の情報を見通すことが出来る。ただし、対象を指定しなければ見ることはできず、時間に関しては、未来を見ることはできず、過去も十分前が限度。
「見通せたが、これはさすがに厄介だな。この情報を、翠波とアルテミスに共有したいが・・・」
そうつぶやくが、相手の神からの攻撃は激しく中々抜け出せない。
「そうはいっても、こうまで攻撃が苛烈だとねー」
「それに、動きがいいんだよねぇ相手の。やっぱ、後ろのあの男の人が原因だよね‥?」
「いいぞ、お前たち!もっと楽しもうじゃないか!」
ネイトは、狂ったように笑いながら、さらに攻撃を仕掛けていく。
激しい戦闘の中に、二匹の動物の鳴き声が聞こえた。
「この鳴き声は・・」
「なるほど、あやつの眷属か!」
ヘイムダルには銀の毛をした猟犬が、蓮には鷹が援護に入る。
「ナイス!アルテミスさん。ヘイムダル!アルテミスさんに情報共有よろしく!この子たちが来たら、やれるでしょ!?」
「無論だ!」
そう言って、猟犬の頭に手を当て、権能で観た情報を猟犬に送る。
「よし、行け、主人のもとへこの情報を頼むぞ!」
情報を受け取った猟犬は、踵を返しアルテミスのもとへ戻る。
「だったら、私たちは相手の前衛に集中しよっか!」
「了解だ、行くぞネイト!そしてその契約者!」
情報を共有した後に体を敵の方に向け、目の前の敵ーネイトとその契約者に突っ込んだ。
「来るがいい、ヘイムダルとその契約者!!」
♢♢♢♢♢
「おや、アンタレスが戻ってきたようです。何か、頭に紋様がついてますね」
猟犬ー「アンタレス」が戻ってきた。頭には紋様ー金のモノクルがついている。これは、ヘイムダルの権能で手に入れた情報を共有した証。
「アルテミス、どうやらヘイムダルが敵の情報を「アンタレス」に共有させたらしい。早く共有を」
「わかりました」
アルテミスは手を、その紋様にかざし情報を手に入れる。
「なるほど、相手ペアの契約神の情報がわかりました。これは、結構厄介ですね」
アルテミスが顔をしかめる。どれだけ厄介なのだろう。
「今、ヘイムダルたちと戦闘しているのが軍神ネイト。戦いにおいては、ヘイムダルと同等ですが彼女は狩猟の女神の側面もありますので厄介です。また、戦士たちが死んだときそれを守る神ともされていますので、過去の戦士たちを喚ぶことも可能です」
なるほど、フレイヤの『戦姫召喚』みたいなものか・・・けどおかしい、それだけならアルテミスが厄介というはずがない。
「もしかして、相手のもう一人が一番厄介なのか・・・?」
「その通りです。彼はフツヌシ、軍神で刀の神様でもあります」
フツヌシって、確か日本神話の軍神の一柱。武勇に優れており、軍の大将としても優れている。
「それは、確かに厄介だ。多分、フツヌシの権能によってネイトの戦闘力が上昇しているってことだね?」
そう考えると、今あの二人が苦戦気味に戦っているのがいい例だ。
「そういうことです。ですから、私たちの役目は、フツヌシを倒す、もしくはその権能を使用不能にする。そのどちらかです」
アルテミスが、こっちの勝利条件を示してくれた。
「オッケー、それじゃあ行こうか!」
「はい!」
僕とアルテミスは「オリオン」の背に乗って、フツヌシへ駆けていった。
♢♢♢♢♢
ドゴォ―ン!! キンキン キャリィン!
「あっぶな!攻撃がまた激しくなってきたんだけど!?」
「さすがに、消極的にならざるをえないか・・・」
私とヘイムダルは攻めあぐねている。二人とも致命傷はくらっていないけれど、ところどころ傷が出来ている。
「というか、普通こんな激しく攻撃できないよね!?」
私は憤慨している。正直、ガチでキレそうだ。
「どうした、貴様らの力はこんなものか!?」
「もっと見せてみろ、その力を!!」
「言いたい放題言いやがってぇ・・・」
「落ち着け、マスター。多分後衛にいる、あの神の権能だろう。先ほど見たが、奴は軍神。その権能で味方であるネイトをサポートといった感じだろう」
「なら、あいつを倒せば・・・」
「それは、翠波たちがやってくれるだろう。我々は、目の前の敵を戦闘不能にするだけだ」
「オッケー、やってやろうじゃん! それに、ヘイムダル「あれ」使って!」
私は、ヘイムダルにある指示を出す。
「了解だ!我らが戦友よ この音を聞き打ち震えよ!! 『戦令の号令』!!」
ヘイムダルは、角笛を響かせる。すると、私とヘイムダル、そして翠波とアルテミスに力がみなぎる。
「よし、これならいける!行くよヘイムダル!」
私とヘイムダルは再びネイトへ駆けだした。
♢♢♢♢♢
「この音色は・・・」
「どうやら、ヘイムダルが『戦令の号令』を使用したようですね」
やっぱり、僕たちも力がみなぎってくる。
「アルテミス、射程距離は!?」
「もう、私の射程圏内です。いつでも可能です」
すでに、アルテミスは矢を構えている。
「よし、なら・・・来てくれ!「ポイボス」!」
僕がそう言うと、銀の毛をもった鹿が現れた。
「行ってくれ!」
僕が指示を出すと、ポイボスはフツヌシに向かって攻撃を仕掛ける。
「何奴!?」
それに気づいたフツヌシは、刀でポイボスに攻撃を仕掛ける。しかし、ポイボスはそれを躱しフツヌシを翻弄する。
「くっ!獣ごときがぁ!」
フツヌシは激高し、冷静さを失った。すると、パキィィーンと何かが割れたような音がした。
すると、ヘイムダルと蓮と戦っていたネイトの攻撃音が少なくなった。
「ということは・・・」
「えぇ、フツヌシに権能を壊した、もしくは解除させたのでしょう」
多分、後者だろう。フツヌシがポイボスに気を取られたことによって権能を使用する何らかの条件のひとつが破られ、解除されたのだろう。
「おぬし等よくもやってくれたな!」
フツヌシがこちらに気づき、高速で向かってくる。
「冷静さを失ったあなたの負けです」
矢に力を溜めていたアルテミスがいる時点で、すでにチェックメイトだ。
「アルテミス、決めよう」
「ええ、終わりです『神弾銀矢』!!」
力を込めた矢を放ち、地面を穿ち大きな穴を空けた。
フツヌシはその一歩手前で足を止めている。
心なしか、フツヌシが震えているのがわかる。
「まだやりますか?」
「儂の負けじゃ・・・」
フツヌシは悔しそうに顔を歪め、降参した。どうやら、フツヌシの契約者も了承したようだ。
それと同時にネイトの契約者も了承したようだ。
「そこまで!!勝者草川蓮、天華翠波ペア!!」
ワァァア!!!
「ふう、終わったぁー」
「お疲れ様でした、翠波様。さすがにハラハラしましたね」
「ほんとだよ、ヘイムダルの権能がなければ負けてたかもね」
「まぁ、何はともあれ無事に終わって良かったよ」
蓮が笑ってこっちに駆け寄ってくる。
「いやー勝てて良かったよ。翠波おつかれ!」
そう言って、蓮は手を、出してくる。
「蓮の方こそお疲れ様」
それに応えるように、僕も手を出し、パァン!
ハイタッチを交わした。
何とか、戦闘描写を書き上げました。いやー難しいですね、すらすら書ける人が羨ましいです。
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