第一章-➄
夜遅い東京の街中にて、一組の男女が何かを話しながら歩いていた。
「はぁ はぁ この力があれば俺は、俺たちは最強になれる。そうだろう?エクスシア」
「エぇ、モチロンヨ我ガ契約者」
暗闇にいるのは、一組の男女、片方は何かに酔ったような表情をしており、片方は赤髪の白い羽をはやした美しい女性だ。しかし、その表情は男と同じように何かに酔ったような表情をしている。
「この力は、素晴らしい!追ってきた『機関』の捕鎖官を返り討ちにできた。エクスシアよ、すべてを光へと消滅させろ‼」
「仰セノママニ、我ガ契約者。神ノ名ノ下ニ邪悪ヨ光ヘト還レ‼『光輝千零尖』‼」
エクスシアの背後に、光の槍が無数に発生し、彼女の手の一振りによって放たれ爆発音とともに街を壊滅させようと、破壊しつくしていく。
「なるほど、あの天使の権能は全てを破壊する光の槍ってところかな。シンプルだけど強力だね」
「しかも、近づけばさらに威力が高いものが飛んでくる。これは、急にクラスアップしたから手に入れたことによる恩恵かな?」
翠波は、あの天使の権能を視て少し首を傾げた。
「確かにのう。だが、その強すぎる力を制御しきれていない印象も受けるのう。それだけでなく、見た感じ正気を保っていないものと見た。厄介きわまりないぞ」
「そうだよねー、まるで安定してないし。それに、あの契天者の方も急にクラスアップしたからなのか同じように正気を保ててないしね」
「黎芭さん、彼らに協力者などは近くにいませんか?」
インカム越しに黎芭さんに確認する
【それらしき人物は確認できないよ、確実に単独犯だね。一応犯人の元々の能力まとめたけど・・・いる?】
「それは、依頼が終わってからお願いします」
【わかったよ、また何かあったら通信してね】
黎芭さんとの通信が切れた。
「黎芭はなんと?」
「どうやら、協力者はいないそうです」
「なら、作戦が絞られるわね」
翠波たちは、今その街中とは離れたビルの屋上でアルテミスを待ちながら捕縛対象の権能を確認しつつ、作戦会議をしていた。
数分後・・・
「お待たせしました。翠波様」
僕たちのいるビルの屋上に、アルテミスが到着した。
「いや、大丈夫だよアルテミス。今はまだ動かないからね。それにしても、相変わらずそれ大きいね」
アルテミスの背中には、彼女の身長ほどの大きさを持つ黒い鞄があった。
「そうですか?私からしたら、いつものことなのですが」
アルテミスが背負っているのは、スナイパーライフルだ。しかも、アルテミスの権能に耐えられる特注品だ。
「フレイヤ、一応アルテミスに情報共有をお願いしていい?」
「わかったわ、アルテミスこっちに来て」
アルテミスのおでこにが添えられる。
「なるほど、そこまで厄介ではなさそうですね。ですが、急にクラスが上がるのは確かに妙ですね。だから、捕縛ですか」
アルテミスは情報共有しただけで察してくれるからすごく助かる。
「それに、『機関』としても放っておけないんだと思う。クラスアップする方法があるとはいえ、それは時間をかけなければ出来ないこと」
「それをすっ飛ばして一瞬でクラスアップは、いくらなんでもおかしすぎる。だからこそ、その謎を解明するために『解析文官』に回すんだと思う」
「なるほど、だから捕縛なのね」
ようやく、フレイヤが納得してくれた。
「うんそういうこと。作戦はいつもの通りに、メティスさんはアルテミスの護衛とサポートをお願いします」
「それと、アルテミス狙撃ポイントは黎芭さんが教えてくれるから」
「翠波、それにフレイヤよこれを忘れるでないぞ」
そう言ってメティスさんが夜に紛れるためのマントを渡してきた。
「ありがとうございます」
このマントはメティスさんと黎芭さんが製作したマントで、ある程度の攻撃を無効化してくれ、こちらの正体がわからなくしてくれる優れものだ。
「それじゃ、いってきます」
「いってくるわね~ それとアルテミス、合図見逃さないでね」
そう言って翠波、フレイヤは街の闇の中に消えていった。
「では私たちも動きましょうか、黎芭お願いします」
【了解だよ、アルテミスさん。今、狙撃ポイントを割り出して端末に送ったから確認してね】
「確認したぞ。ゆくぞアルテミス」
「ええ」
アルテミス、メティスも黎芭に指示されたポイントへ向かっていった。
街中ではいまだ破壊が行われており、光の槍が、さらに周りにあるものを破壊していく。
「フハハハ全て光に消えろ!これが俺たちの力だ!クラスが高くないからと馬鹿にしたやつらよりも、今の俺は強い!『機関』の追っ手も倒せた!今なら、どんな奴が相手でも光へ消し去ることが出来る!」
悦に浸っている彼らの前にマントで顔を隠した一組の男女―僕とフレイヤが降り立つ。
「そこまでですよ、破壊魔いや破壊天使のお二人さん?」
「観念しなさい、あなたたちの破壊行為はここで終わりよ」
「てめぇら、ナニモンだ⁉ いや、そんなのは関係ねぇ、消し飛ばせエクスシア‼」
「光ヘト還レ『光輝千零尖』‼」
彼らに、街を破壊した時と同様の数の光の槍が押し寄せる。本来であれば、絶体絶命のピンチだが男性は落ち着いて隣の女性に告げる。
「頼んだよ・・・」
「木々たちよ、我が盾となれ『豊穣の呼び声』・・・」すると、道端に咲いていた数本の木が、急に彼らの前をふさぎ、光の槍に対する壁となる。大きな爆発音が発生する。
「なっ!?、防がれた!?そうか、お前らも契約者か!だが数本の木が壁になった程度でエクスシアの槍を防げるはずがない!」
「いや、防ぐことは可能ですよ。大前提として、天使と神じゃそもそもの格が違う。そして、もう一つが、たとえクラスが上がったとしても元々の契約魂が違う。その二つだけですよ」
僕は現実を突きつけるように、目の前の男に淡々と述べる。
「うるせぇ!そんなことはねぇ!エクスシアもう一度だ!」
そんなことがあるわけがないというように、吠えるように男はもう一度天使に告げる。
『光輝千零尖‼』
先ほどの倍以上の光の槍が僕とフレイヤを狙って射出される。それだけでなく、込められた『天光』も先ほどの倍以上ある。
「はぁ~ 防がれたのにわからないものだね・・・フレイヤ」
「了解よ。木々たちよ・・・『豊穣の呼び声』」メキメキという音ともに、先ほど光の槍を防いだ木々が再び翠波たちの壁になり再び大きな爆発音が発生する。しかし、今度は木々が粉々とまではいかないがバラバラになっていた。
「フハハハハ!二度目も防いだか、だがこれ以上何もできまい。もう一度放てば奴らは終わる!!、放てエクスシア!」
そう言うと再び放つ準備を天使は行う。しかも、確実に翠波たちを殺すために二度目以上の天光が込められた無数の槍が背後に創り出してゆく。
「なるほど、天光を込めるほどに放つ間隔が長くなるんだね。フレイヤ攻勢に出るよ。アルテミスにはいつもの合図を」
「わかったわ、翠波君。木々たちよ、砕けて散った木片たちよ。我が槍我が剣となって敵を討て!『豊穣の呼び声』」
そう唱えると、先ほどバラバラになった木は槍や剣となって天使を串刺しにせんと向かっていく。
「くそ!上空へ逃げるぞエクスシア。そこならば、俺たちの得意領域だ!」
そう言うと、天使は槍を創るのをやめて男を抱え、木々から逃げるように翼をひるがえし空を飛ぶ。
「よし作戦通り。あとは任せたよアルテミス」ぼそっと告げた。
「ビルなどが邪魔で対象が補足しづらいですね。」
指定された場所でアルテミスが構えて、合図を待っていた。
「まぁ仕方なかろうて。それにしても暇じゃのぅ、てっきり協力者でもいると思ったが本当に単独なんじゃのう。」
暇そうにメティスがつぶやく
「そうですね、てっきり情報にない協力者がいるとも思いましたが…」
そう話していると、アルテミスの場所に木で作られた鳥が飛んできた。
「フレイヤの合図です。ということは作戦は成功、対象は…いました!」
「よし、周りに敵はおらぬ。良いぞアルテミス」
「了解しました、一発で仕留めます。何物も我が弾丸我が矢から逃れることは不可能 撃ち抜け『神弾銀矢』」
ターン 弾丸は一直線に天使の羽を二枚とも撃ち抜いた。アルテミスがスコープを外すと天使がそれから崩れるように墜ちていく。
それを見ていたメティスが思わず「お見事じゃのう、アルテミス」と呟いた。
「アアアアア!!」
翼を二枚とも撃ち抜かれた天使は地に墜ち、喉が裂けるような叫びをあげている。
パタリ その後息が切れたように倒れる。
「大丈夫か、エクスシア!? 一体どこから!?」
男は、あらゆる方向を探している。
「終わりだよ、契天者。もう逃げられない」
翠波は最後通告というように冷たい声で告げる。
「まだだ!まだ、俺が‥」
メキメキ 男が抵抗をしようとするが、フレイヤが操った木々が拘束し締め上げる。
「逃がさないって言っただろ?」
「まさか、お前は…あの‥‥」
男は気絶し、フレイヤは木々から男を放す。
「ふう、依頼終了。アルテミスもありがとう」
[いえ、それよりも怪我がなくて何よりです。一足先に家に帰ってますので、遅くならないように]
「わかった、メティスさんにもよろしくね」
アルテミスと通信していると、僕のそばに数人の黒と銀の制服を着た男性が近づいて、話しかけてきた。
「お疲れ様です『執行者』殿。申し訳ありません、こちらの不手際で急に呼び出してしまって…」
「いえ、大丈夫ですよ。それよりも‥この男はやっぱり‥」
「えぇ、『解析文官』に解析してもらいます」
「わかりました、その結果がわかり次第こちらにも連絡をお願いします」
「了解しました、それでは失礼します」
『機関』の捕鎖官たちだ、黎芭さんが呼んでくれたのだろう。相変わらず仕事が早い人だ。
「翠波く~ん、帰るわよ~」
フレイヤが手を振ってこっちに来る。
「そうだね、犯人も『機関』が引き取ってくれたし帰ろうか」
そんな二人の上空には、星々が輝いていた。




