5 リーリエ
久しぶりに部屋を訪ねてきてくれたと思ったら
「妻と踊らない夫はいない」ですって?!
はいはい。どーせ私は義務的な妻、ですよーだ。
ふん。もう知らないから!
「ねぇリーリエ。これ、なんの匂い?」ですって?
あなたには全く関係ございませんっ。
「別に殿下には関係ないことなので……。」
絶対教えてやらないんだからっ。ムサム王国から頂いたのは私の方だしっ。、
「リーリエ、なんで殿下って呼ぶの?名前は?
あとさ、俺が分からないとでも思ってるわけ?ねぇ、リーリエやり直して?」
この男は昔っから呼び方にこだわるし、隠し事を嫌うし、その割に自分ばっか秘密を持ってるし絶対言わないんだからっ。
「…殿下もお疲れのようですし、今日はもうお眠りになったら?」
早く帰れっ!このバカ王子!!!!
「リーリエ、呼び方。やり直して。」
何事も上手くわけじゃないのよ。絶対やり直さないっ。
「はぁ。ムスカリの匂いだね。おそらく名産国で今回初参加のムサム王国からの贈り物じゃないかな。ねぇリーリエこっち向いて?」
やばい。これ絶対怒ってる。
銀色の前髪から見えている赤い瞳が揺れているのが伺える。
名前ごときでそんなに怒る?一体何に怒ってるのかしら?
キィャッ
え、何?横抱き?え、何この抱っこ、てか顔近いって。
「足、バタバタしないで。」
え、なんでベット?
「リーリエ、他の国の男の匂いを付けて俺の事煽ってる?リーリエはそんなこと思わないかもしれないけど男にとって匂いって1種のマーキングなんだよ?わかってる?」
え、やばい 押し倒されてるんだけど。、
キャっ。
え、何が起きた?首になんかチクってきたんだけど、え?
やばいって汗え?毒?なんかチクってしたんですけどっ
「お望み通り今日はもう寝てあげる。」
……寝て頂きあ、ありがとうございます?いや違う違う
「ねぇ、カイザー。カイザー。起きて、」
ダメだわ。完全に酔ってしまっている。
えー、これ毒じゃないわよね?髭かなんかでチクってしたとか?カイザーも男性だし。
まぁ一応夫婦だし2人で寝ても大丈夫よね。
えぇ、大丈夫よ。まだ私たちが潔白だからって皆舐めすぎよ!一緒に寝ることくらいできるんだから!フンっ!
……こんなかっこいい顔が隣にあったら。意識しすぎて寝れないわ。