リーリエ
「ねぇ、カイザー、カイザーってば、ちょっと早いって」
逃げるようにアイザン公爵家を出ていくカイザーに腕を捕まれ私はついて行くのに必死だった。
「ねぇリーリエ。なんで俺の隣を離れたの?」
急に止まったと思ったら振り返ってきて顔が近くて少し動揺してしまった。
…え、どうしたのかしらいきなり。離れたって言っても別にお酒も飲んでないし、何も問題を起こしてもないわ。
「離れたって言っても一瞬じゃない。あなたも公爵とお話になっていたし…。ね?」
真っ赤な瞳が少し俯いた気がした。
すると今度はさっきよりゆっくりでそれでもって優しくエスコート付きで歩き始めた。
「やっぱり揃いの服装できた方が良かったみたいだな。」
こんな私的な場所で揃いの服なんてそこまでしないと私たちは仲良く見えないのかしら…。
「それとも、この服装の意味が奴らには分からなかったのか、、。」
服装?服装って黒地に金のロープやらボタンが着いていてスッキリしていながらも高級感溢れるそれ?
その服ならいつも着ているわよね?それで何かを察しろって言われる方もたいへんよ。こんな暴君王子がいたら周りの人のご機嫌取りも大変ねぇ。
「そうね。あなたがこんなにもかっこいいのを誰も気が付かなかったなんて国家問題だわ、」
今は誰もいないからご機嫌を取るのは私。
まぁ、才能に満ち溢れていてその顔の美貌が薄れてしまってるのは事実だし、でもまぁ顔もすんごくかっこいいのよね。
「…そ、そ、そ、そ、そんなことが言いたい訳では無いっ。」
あは、顔を真っ赤にする程見当違いのこと言ってしまったかしら。やっぱり王子って気難しいのね。
「ふふっ。」
こんなに大きな図体してるのに繊細だなんて面白いわ
「何を笑ってるんだ?」
「いいえ。、何もふふっ。」
「ほら、前見ないと危ないぞ。手貸して。」
気がついたら馬車のところまで来ていて彼が馬車へ乗るのをエスコートしてくれた。
本当にカイザーって紳士的なのよね。
「よっこらしょ。」
「なんで隣に座ってくるのよ。」
さすが王家の馬車。どこの馬車よりも広々としていて乗り心地は最高と周りからもよく褒めていただくこの馬車。
2人しか乗らないのに詰めなくていいのよ。なぜ隣に座ってくるの?
「隣にいないと君はすぐどっかに行ってしまうから。」
はぁ、またさっきのことを言ってるのかしら。
「ほら、手出して。」
手?何故かしら。
「ヒャッ」
「繋いどかないと、心配だから。」
いや、そんな耳まで真っ赤で言われたら勘違いしちゃうじゃない、もしかしたらあなたは私の事が好きなのかもしれないって何百回もした勘違いをまたしちゃうじゃない。
ねぇ、なんでずっと窓を見てるの?
ねぇ、一体あなたはどんな顔を今しているの?
「リーリエ。俺の隣から離れないでね。」
…どういう意味、離れていくのはいつもあなたの方でしょ?
「」私はその時返事をすることが出来なかった。




