1(リーリエ)
「リーリエ妃殿下今日も本当にお美しい。」
(やっぱり、いくら美しくてもタイプじゃないとダメなのよ…)
「この黒髪に映えるプラチナの冠がよりとても白い肌と合わさって素敵に見えます。」
(はぁ、黒髪ってなんか高貴に見えないし彼が好きな子はいつも黒髪じゃないし…)
「今日はリーリエ妃殿下主催ですからめいいっぱい頑張りますわ。」
(私が主催って言っても迎えには来てくれないんだろうなぁ。)
「沢山のお褒めの言葉ありがとう。
皆が素敵に着飾ってくださるから社交界で沢山の人が褒めてくださるの。きっとあれはあなた達を褒めているのね。」
そなのよねぇ、よくお分かりになってるわね私。
社交界で皆さん褒めてくれるのは嬉しいけど皆さんが褒めてるのは私の美貌ではなく私を飾り立てたあなた達なのよ。
完璧王太子妃リーリエはまだ19歳。
完璧と言われはするもののまだまだ感覚は多感なお年頃なのです。
「あら、こんな時間。カイザー殿下の所へ参りましょう。」
あらあら慌てちゃって可愛い。
やっぱり今日も来てくれないようですね…
「えぇ、殿下はまだ準備が出来てないのかしら。本当に、もう。」
しまった、少し愚痴りすぎてしまったかも…
えっ!?なぜだか静まっちゃったわ!
「仕方ありませんね。どこの国の殿方も姫君を迎えに来ると言うのに、私はいつも迎えに行ってばかりだわ。」
…あら?フォローしたつもりだけどまた皆さんのお顔が沈んでしまったわ、、。
やっぱりパーティー用のヒールは履きにくいくて苦手だわ。
淑女なら音を鳴らさないでしょうけど、どうしてもなっちゃうわねぇ〜。
コンコン
(はい。どなたでしょうか。ただいま殿下はお取り込み中でございます。)
はい?なんですって?お取り込み中???
カイザー、貴方よくも毎回毎回羽目を外せるものねっ
「王太子妃リーリエ様がお越しです
どんな理由であろうとも直ちにドアの解放を願います。」
そうよアンナ!絶対にここを開けさせましょっ!
(申し訳ございませ…「開けなさいと申し上げているでしょう。」
しまった!なんてはしたないことをっ!
平常心。平常心よ。リーリエ。
「あ、いや。違うんだリーリエ。信じて」
はぁ、また''信じてくれ''ね。
この前はよく分からない金髪の令嬢と手を繋いでいたかと思ったら今度は栗毛の令嬢を膝に乗せているなんて、、、。
あと私何も言っていないのに何を信じろって言うの?!
まぁ、そうよね。私なんかより彼女達の方がいいに決まってるわ。
平常心よ。平常心。私は王太子妃なんだから。
「なんでもいい。はやくして。
各国のお客様を待たせているの。あなたは王太子でしょ?さぁ早く。急ぎなさい」
今この場でいざこざを起こすよりも、今日起こしにっている各国のご来賓の方々を優先すべきよね。そう。大丈夫。冷静よ私。
「それと、そこの女性に私が使わなかったドレスを1着。あと彼女の宮殿入りの支度を。」
いつか、彼女が公で挨拶をする日が来るかもしれないでしょうし。
悔しいけど、、、。
やばい。時間が無い。
急ごうと部屋を出た時侍女のアンナが話しかけてきた。
「リーリエ妃殿下あの女のことで追求しなくてよろしいんですか?」
アンナは私より3個下で、いつも年上の人ばかりに囲まれている私にカイザーが話し相手にいいだろうとつけてくれた子。
今は私が妹のように可愛がっているお気に入りちゃん。
「…いいのよ。王家が反映するためには沢山の子宝に恵まれることが第1だから。」
追求したくないって言ったら嘘だけど、
それでも私は王太子妃の務めを果たさなくてはならない。
私は何度も自分に言い聞かせてきた言葉をアンナにも言い聞かせるみたいに伝えた。
「…もし、リーリエ妃殿下のお子様が王権を取る事ができなくてもですか?」
子供…か。子供ね。そんな未来もあったのかもしれないわね。
「王権を誰が握るかは他者からどう評価され、どう本人が振る舞うか、で決まります。もし、私の愛しのわが子が王権を握れなかったらそれまで、ということなのです。」
まだ16の少女にこんな残酷な話をしたくは無いけど、それでもこの子がもし妾の方々のお付になった時柔軟な考え方をできるようにした方がいい。ただそう思って私は彼女へ返事をした。
時間が無い。さぁ、パーティーという名の戦場へと足を踏み入れましょうか。
歩きにくい靴を履いて私は今日もパーティーへとひとりで向かう。別に大丈夫よ。全然。
ご愛読ありがとうございます。