13カイザー
油断した。
まさかこんなことになるなんて…
もっと警戒しておくべきだったんだ。
気がついたら俺はあろうことか一国の王子を蹴り倒していた。
キャァァァァアアーーーーー
後ろでは悲鳴が聞こえる。
あぁ煩わしい。
「おい。こいつを地下へ連れていけ。」
リエル・ロブザンダー絶対許さない。お前の国を潰してやろうか。
「か、か、カイザー殿下。私は、だいじょキャッ」
もう何も言わなくていい。
すまなかった。
こんな暴漢まがいなことをされて怖かっただろう。
「カイザーっ降ろしてっ。この会を台無しにしたくないのよっ。」耳元でそう囁くかの彼女の口からは僅かに酒の匂いがした。
クソっ。まだ俺だって柔らかなキスしかしたことがないのに。あんなくずに汚されてしまった。
「おい。水をもってこい。」
俺が悪かったんだろうか、リーリエが俺が選んだドレスを着てきてくれて、うれしくて、調子に乗っていたからだろうか。
こんなに彼女を自分のモノだと主張しても何故か彼女は腕から逃げていく。
リーリエの部屋に着いた。
「ンん。カイザー。こわかったの。あのね、私本当にこわかったのよ。」
ベットへ横たわらせると彼女が話し始めた。
「あぁ怖かったよな。ごめんな。絶対にあいつを許さないから、」黒い艶やかな髪の毛を手に取った。
「ねぇカイザー。キスして。あのね。私怖かったの。キスをするならカイザーがいいの。」
こんな火照った顔で上目遣いでキスを要求してこられるとコッチだって我慢が……
「り、リーリエ!?おいっ!どうしたっ!おい!寝てしまったのかい!?」
嘘だろ!?この状況で?
おいおいおいおい嘘だと言ってくれ。
酔ってたってことか。リーリエに酒を飲ませたことはほとんどなかった。耐性がついていなかったのか、甘えたさんになってしまった。
もう絶対他の者の前では彼女に酒を飲ませることは無いだろう。こんな可愛い姿を見せたら今よりも危険だ。
「……ごめんね。せっかく君が頑張ったのにぶち壊してしまって。」髪にそしておでこに、口に優しくキスをしてうっすらと浮かべられた涙を拭った。
俺は部屋を後にし地下へと階段を下った。
「おいっリエル王子。他人の妻によくもあのような事をしてくれたな。」キンッと音を響かせ俺は剣を引き出した。
「冷めきった結婚など彼女が可哀想なだけだ。俺は悪くないぞっここから出せ!!!おれの国ではよくあることだ。それに相手の幸せを願うことがいちばん大切だぞ?フンッ」
俺の腕の中に居ないリーリエが幸せなわけないだろ。
俺以外の誰かといるリーリエなんて考えたくねぇんだよ。
「残念だったな。貴様の態度はずっと気になっていた。
もしやお前我々オレティに喧嘩を仕掛けているのではあるまいな?」
お前は俺の前で1番言ってはならないことを言ったんだよ。
リーリエが俺以外の男と?たまったもんじゃない。
「え、いや。そうでは……」
「いいだろう。受けて立つ。そちらがその様な気を起こすなら戦争だ。」
首を洗って待っておくんだな。
「おいっ。リエル王子の国へ宣戦布告を出せ。」
俺は彼女のためになら悪魔にでもなれる。