8ダラム
「ダラム殿なんだか嬉しそうですね。」
そうなのだ。
今日我は坊ちゃんのご成長に胸が弾んでいるのだ。
坊ちゃんと呼ぶことがさすがに阻まれつつあるため直接呼ぶことは無いが我にとって坊ちゃんことカイザー殿下はまるで孫のように敬愛する存在である。
「余計なことを話さず業務に取り掛かれ。」
我こんなこと言っちゃってるけど内心とんでもなく浮かれておるのだ。もう時期70になるというのに情けない……。
坊ちゃんの恋愛教育として娼婦を読んで2年5ヶ月と11日。
やっとやっと坊ちゃんが思いを遂げることが出来たのだと思うと歳だからであろうか涙が溢れてくる。
「ダラム。女性とどのように接すればいいのか知っているか?」2年前顔を赤くして聞いてきた坊ちゃんを思い出すとやはり大きく成長なさった。
「黒髪で色白、あと身長が少し高めの女性は呼ばないでくれ。絶対だ。」
娼婦の皆様にご教授頂こうと提案したところ返された言葉がこれであった。
おそらくリーリエ妃と似ている方はダメなのであろうと思ったが年頃の青年が果たして理性を保てるのだろうか……などと初めは下世話な心配をしてしまった。
でもまたこれは驚いたことにカイザー殿下は本当にリーリエ妃以外には反応なさらないのだ。
1匹の番のみを愛する狼のように彼女を昔から殿下は愛してらっしゃる。
良かったですな。殿下。きっとリーリエ妃も喜んでおられますよ。長かったと文句を言われるかもしれませぬな。
――――――――――――――――――――――――――
ダラムはあの日の夜、何も無かったことを知らない。