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出会い、誘拐、奇々怪々

高校からの帰り道、僕はとある少女とすれ違った。


少女と言っても僕と同い年くらいだと思うのだが、その少女の容姿を見ると日本人のそれとはかけ離れていた。


身にまとっている洋服には宝石が散りばめられていて、この辺の店には売っていなさそうな高級品のようだった。


儚げな表情で、それでいて迷いのない足取りで歩いていた彼女の後ろ姿に、僕は吸い込まれるように声をかけた。


「あの!こんにちは。どこから来たんですか?」


「え?うーんと…遠くから、かな。」


彼女は艶やかな髪を靡かせながら振り向き、答えた。


髪色は…なんと表現するといいのだろう。緑色を少し薄めたような髪色をしていて、派手髪と言うには少し物足りない。


「髪、凄いなんか、いい色だね。どこの美容院?」


「染めてないよ。いわゆる地毛ってやつ」


かと言って外国人でそんな髪色の人種は居たか?と考えてみるも、やはり見たことも聞いたことも無い色をしていた。


顔立ちもとても整っていて、男に街角アンケートを実施したら八割はタイプだと答えるだろう。


「あなたは何をしてるの?お名前は?何が好き?」


「質問攻めかよ。僕は学校から帰ってる途中で、名前は優月で、君が好……」


「ん?」


「ど、読書が好きかな〜アッハッハ」


「学校、それに読書か!偉い偉い、優月君をよしよししてあげよう」


「やめてよ、惚れちゃうから…それで、君の名前は?」








「………あれ?」


彼女からの返答は返ってくることはなかった。


いつの間にか、隣に居たはずの彼女の姿がどこにも見当たらなくなったのだ。


裏路地や、公園、川、店の中など隈無く探してはみたものの、僕が彼女を見つけることは叶わず、時刻は18時を過ぎようとしていた。


彼女はどこに行ってしまったのか、僕は必死に考えた。高校生探偵もびっくりするほど考えた。


「………まさか、誘拐?有り得る。めっちゃ可愛いし」


考えた結果、彼女は容姿端麗すぎて誘拐犯に捕まってしまったのだという結論に至る。


だがしかし、頭の出来は眠りのおっちゃんの倍悪い自覚がある僕は、どこに連れていかれたのかを推理できなかった。


2度目のだがしかし、これだけ隈無く抜かりなく捜索したので、行っていない場所は限られているはずだ。


「まだ行ってなくて…誘拐犯が好きそうな人目がない場所……あの廃墟か!」


僕の住んでいる住宅街とは外れた場所にある、5年ほど使われていない廃墟。薬物売買の取引に使われているとか、お化けが出るとかの噂があるとか無いとか。


「怖いけど、行くしかない。あの子が酷い目にあうのは嫌だ。」


急げ、急げ。


勿論途中で見つけられたら御の字だし、道中も捜索を欠かさなかった。ありえないだろうけど、マンホールの中も見た。

止まってる車の中も覗いて見た。人乗ってた。気まず。


「マジか、空想の奴だろ、あれって…ほんとに居るの?」



僕は信じられない物を目撃した。



「クックック……効かないね」


「…困ったな。このままじゃ…」



誘拐犯だったら、どんなに良かったか。


廃墟の中に入ると、彼女と吸血鬼が戦っていた。


背中には僕のイメージ通り黒いマントを付けてるし、周りにちっちゃい蝙蝠がウヨウヨしていた。


「ドラキュラ初めて見たよ!俺。よ、さっきぶり!」


「優月君!?なん」


「周りを気にするか?余裕だな」


「うわああああ!!!!こっち飛んできた!!!!!!」


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


「落ち着いて!優月!こっち!」


カッコつけて登場してこのザマですよ。笑ってくれ。


僕は彼女の手を必死に掴んで彼女に守られるようになんとか回避した。情けない。


「ククク、荷物が増えて大変だな、お嬢さん」


吸血鬼は両の目をを赤く光らせてマントに隠れた羽を羽ばたかせ始めた。


「あれ、大技が来る感じ?お嬢さん」


「うん、何とかするから貴方は隠れてて!あとその呼び方嫌!」


「ごめん、でも何とかってどううばばば」


華奢な体からは考えられない程のパワーで踏み込み、土埃を起こしながら吸血鬼に向かっていった。


「……アニメの世界に居るのか?僕。」


「そう考え無しに突進して何になるというのだ。娘よ」


「キャア!!!」



敵の吸血鬼が羽でとてつもない風を巻き起こすと、彼女は簡単に巻取られた。


「うわッ!!……痛た…大丈夫か?」


「ありがと!次来るよ!」


幸いにも僕の方に吹き飛んできたので何とか受け止める事が出来た。


「2人纏めて闇に散れ。秘伝!ヴァットバット!」


しかしそれは吸血鬼の作戦だったようで、子分?の蝙蝠を大量に飛ばしてきた。


「やばいやばい!あれ何?死ぬ?必殺技?」


「あれは喰らったらダメなやつだね文字通り必ず殺す技。」


「まだ死にたくねえ!!助けて!てか冷静すぎ!」


「大丈夫、何とか間に合ったみたい。」


ちび蝙蝠は僕達の寸前でピタリと止まり、バサバサと音を立てて地面に落ちた。蝙蝠達が落ちていく中、視界の隅に1人、誰かが立っており、吸血鬼の姿は見えなかった。


「子供?」



「ぐっ!!!何故、だ!再生、できない!」


「見て分かんない?武器屋に作って貰った特注の吸血鬼特効の剣。以上」



本元の吸血鬼はバラバラになって倒されていたのだ。

そしてその眼前、というより足前には刃物を持った子供が座り込んでいた。


「クソォ!殺せ!俺を殺せ!」


「やだよ、そういうの嫌いなんだ。てかそんな切られたら死ねよ。あ〜ごめん、死ねないのか。不死身も考えものだね」


「クソ、クソ!」


「あーいいこと思いついた。日光に照らせば灰になるんだった。良かったね、死ねるよ。ジリジリ。」


「や、やめてくれ!それだけは!やめてくれ!」



ぶっきらぼうに吸血鬼を見下す子供のことを、カッコイイと思ってしまった。下手したら10歳にもなってない子供だ。


そんな子供が、あの化け物を切り刻んでしまった。


「あの、サインください」


「………誰?あんた」


「伊藤優月。ファンです。」


名前を名乗ると子供はムスッとした年相応の表情で彼女の方に振り返った。


「ジーナ?どういう事?こっちの人間でしょ?」


「ごめん。でもね?ハロイ、この子はともだ」


気絶したかのように、僕の視界は真っ暗になった。


正確に言うと視界が真っ逆さまになって、少しの間意識があった。彼らの会話が聞こえていた。


「ハロイ!この子は!私を助けに来てくれたの!」


「こっちの世界の人間にバレたらこうするのが決まりでしょ?俺はそれに従ってやっただけ。これが俺の役割。気が乗らないけどさ」


「じゃあ、優月も仲間にする。決定権は私にある。これも決まりだよね?」


「……戦えないよ、コイツ。俺の攻撃に何も反応できなくて首チョンパだよ?」


「私の能力、半分こする!それなら戦えるよ!」


「だめ……って言っても決定権はそっちにあるんだった。好きにしな?王女様。」


「やったあ〜!!」


首チョンパ………能力……半分こ………王女様…ジーナ。何がなんだか分からないが、2つだけ分かっている事がある。


1つは、とんでもない事に首を突っ込んでしまったこと。


「ジー………ナ。」


「……! はは、 タフさは認めよう。」


2つ目は、″異世界から美女がやってきた″という事だ。








































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