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缶コーヒーの置かれた場所

作者: きつねあるき

 皆さんはよく缶コーヒーを飲みますか。


 一口に缶コーヒーと言っても、ロング、ショート、ボトル缶とそれぞれ形状が異なりますね。


 今回のお話はショート缶についてになります。


 (さかのぼ)る事数十年、1990年代の初頭において僕は大学生でした。


 その時、大学近くのアパートに下宿していた小林君の部屋によく行っていました。


 何故なら、90分講義(こうぎ)休講(きゅうこう)になった時に、(ひま)をつぶす場所が無かったからです。


 当時は、当日の休講を知るには構内の掲示板(けいじばん)()られた小さな用紙を見るしかなかったのです。


 僕を含め自宅から通う学生は、その度に時間つぶしに奔走(ほんそう)しました。


 だから、大学の近くにある彼の部屋は、同級生の間では男女問わず争奪戦(そうだつせん)になっていました。


 ただ、彼の部屋はワンルームなので、居られるのはせいぜい5人が限界でした。


 一番広い洋室の床にはベージュの絨毯(じゅうたん)()かれていて、そこが仲間の()まり場になっていました。


「あ~あ、真面目に来たのにまた休講だよ」


「俺なんて1限と2限が連続で休講だよ」


「私なんて必修科目なのに休講よ…」


 この時、部屋の(かぎ)をどう回していたのかは定かではないですが、休講になって彼の部屋に訪れると誰かしらが居たのです。


 ここに来る仲間の三宅(みやけ)君は、いつも缶コーヒーを持って彼の部屋に来ていました。


 缶コーヒーは小さい方が美味しいのか、三宅君はいつもショート缶のコーヒーを飲んでいました。


 それは別に何の問題もないのですが、困った事に彼は飲み物を少しだけ残すという(くせ)がありました。


 それに、彼が缶コーヒーを飲んだ後は必ず絨毯の上に置くのです。


 缶コーヒーの中身を少しだけ残して絨毯の上に置くと、立つには立ちますが不安定な感じになります。


 そこで、誰かがこう言うのです。


「ちょっとトイレを借りるね」


 そこで、大概(たいがい)飲みかけのショート缶に足を引っ掛けて、絨毯に(こぼ)してしまうというのが定番でした。


 その場に小林君がいたら、烈火(れっか)のごとく怒るんですけどね。


 小林君が居ない時は、皆が(あわ)てて零れたコーヒーを()き取って臭いを消して乾燥(かんそう)させるのです。


 三宅君が飲み物を少し残す事に、皆が何度も注意しましたが態度を改めないので、数ヶ月後には絨毯がガビガビになっていました。


 僕も一回は缶コーヒーを倒した一人ですが、あの時は時間を掛けてもっと綺麗(きれい)に拭き取ったんだけどなあ…。


 ショート缶って視界に入りにくいんですかね。


 それと、飲みかけの缶コーヒーは絨毯の上には置かない事をお勧めします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 青春の1ページですね。
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