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一章 一話 始まり


 「さい,,,ください,,,起きてください!!」 


可愛らしい女性の声が聞こえてきて目を覚ました。

 

「俺は、生きてるのか...」 

  そうつぶやいた俺の声に重なるように謎の声は言った。

 「いえ、あなたはちゃーんとしにましたよ!」

元気のいい可愛らしい声が聞こえた。

体を起こして声の方向に顔を向けるとそこにはかわいらしくもあり美しくもある、まさに天使と思われる女性がこちらを見ていた。


「ここは,,,どこですか?」 


俺は心からの疑問を彼女に投げかけた。彼女は言った。


「そうですね,,,言うなれば天国か地獄を決める前の場所、でしょうか。」


「つまり、今から俺がどっちに行くか伝えられるということでしょうか。」

「そう、なんですけど、実は厄介なことがおきてまして,,,」

彼女は目を逸らしながらうつむいた。

「厄介なこと?」

「ん-、何と言いましょうか...人には運命というものが決められておりまして、生まれた時から大体の人生は決まっているんです。」



予想外のメタ発言に驚いた俺は今までの人生を無駄に感じ、馬鹿らしくなった。


「でも、あなたはまだ死ぬ時じゃなかったんです。なので代わりにあなたを異世界に送ろうと思っています。もちろんあなたが望めばですけど,,,」


本当にこんな事があるのか、聞きたいことや納得出来ないことが頭に流れ込んでくるがどうせ俺は一度死んだ身だ。異世界で何かに成るのも悪くない。流れに身を任せてみようと思った。


「異世界には是非いかしてもらいたいのですが、いわゆる能力といった物は授けていただけるのでしょうか,,,?」

 何かに成るためには能力は必須だろう。

チート能力をもらえるのだろうか、心を躍らせながら俺は尋ねた。

「もちろん能力は授けるのですが、まずは能力の適正を見たいのでここに触れてもらっていいですか?」


俺は言われた通りに水晶のようなものにワクワクしながら触れた。


「普通の人なら5~6個は出るのでなにが出るのか楽しみですね~     あれ?おかしいな,,,

一個しか出ない...こんなこと、いままでなかったのに...!」


「あの...なにかあったんですか?」

俺は不安になって尋ねた。

「えーと、機械が壊れたんですかねぇ おかしいな、あはは...あ、いけない!もうこんな時間、とりあえずこの能力だけ授けておきますので、異世界ライフを楽しんでください!あ、あと能力はステータスから確認できますので!それではいってらっしゃいませ!」


そう言って半ば強引にこの空想世界のような場所の扉を閉じられ、奈落へと落とされる感覚に陥った。


ー--


 鳥のさえずり音、草木の揺れる音が聞こえてくる。


深い森の奥で目を覚ました俺は意外と落ち着いていた、適応力には元々自信があるほうだ。


「さて、どうしようか。」


まず俺は天使の言葉を思い出しステータスの確認からすることにした。

「どうやって見るんだろう、こういうときにありがちな言葉といえば,,,ステータスオープン!」


羞恥心を感じながら口に出した俺の前によくあるRPGのような画面が浮かび上がってきた。

HP.MP.攻撃力.防御力.知力の欄がある。

HP1000、MP500、攻撃力200、防御力200、知力は500か、基準がわからんが、まあ悪くない気がする。スキルはと,,,身体強化、か。これも悪くない気がする。

でも普通は5~6個って言ってたからなぁ、まあ当たりではないんだろうな、俺は異世界でもダメなのか...


絶望しかけたが、落ち込んでいても仕方がない、俺は歩きだすことにした。


「まず、ここはどこなんだ...周りには草木しかないな。日が落ちる前に森を抜けないと...」


いくら適応力があっても持ち物も何もなく、サバイバル知識もない俺にとってここに留まるのは死活問題だ。

俺は足元にあったいい感じに太い木を杖替わりにし、目印として木に傷をつけていくことにした。


1時間くらい歩いただろうか、日はすでに落ちてきており、冷たい風が吹いてきた。

このままでは最悪、死に至ってしまう。せめて食料か水分は確保しなければ。出口を探すという目的は一度無視し、まずは川と寝床にできそうな所を探すことにした。


冷たい風が吹く方に歩こうとしたその時、


大きな爆発音が聞こえた。

音の方向に足を進めるとそこには倒れた女性、そしてその向こうにはゴブリンらしき大きな緑の体のモンスターが見えた。


それは明らかにゲームで見るような雑魚モンスターの風貌では無く、死の感覚をビリビリと肌に感じた。

息を殺しながら木に身を隠す俺をよそに、モンスターはうなだれている女性にゆっくりと近づいていく。


逃げよう。俺は何も見ていない、ここで俺が出て行った所でなにも出来ずに被害者が増えるだけだ。



そう思い込み静かに背を向けた俺の耳に女性の呻き声が聞こえてくる。


2.3歩進んだ俺は自分の情けなさに無性に腹が立ち、自分に問いかけた。


お前はまた逃げるのか?そうやって自分に都合の悪い事から逃げ続けるのか?

何かに成るんじゃなかったのか? 



そうだ、俺は逃げ続けて生きてきた、変わるには今しかないんだ。助けるんだ、助けろ、足を動かせ、変わるなら、今だ。


「おい!こっちを見ろ!気持ち悪いモンスター!俺が相手してやる!」


そう言って飛び出したが、こっちを見るモンスターの殺気に足が笑う。やめとけばよかった。せっかく異世界にきたのにもう死ぬのか。



いや、俺はコイツを倒して変わるんだ。戦ってやる。手に持っている木を剣代わりにしてモンスターにとびかかった。


「くらえ!おらあ!!!」

 出せる力を全部腕に乗せて振りかぶった。


「バキィ!!!」

木が折れる音が大きく響いた。確実に手ごたえがあった。俺は顔をあげてモンスターを確認した。


 モンスターの口がニタァと笑う。 


効いてない、だと?


そう考えた俺の腹にモンスターの腕がめりこむ。何も見えなかった。激痛を感じ5メートルは吹っ飛んだだろうか。


勝てない、死ぬ。


今のパンチの衝撃でいくつの骨が折れただろうか。


「ぐあああああああ、いてえ、いてえよ、死ぬ!!!」


情けなく叫ぶ俺の声が森に響く。


モンスターは勝ちを確信したのだろう。余裕な表情でゆっくりと歩いてくる。


その足取りと見下した視線に怒りを覚えた俺は、声を絞り出して一か八かに賭けて叫んだ。


「身体強化!!」



 体に力がみなぎるのを感じる。痛かったはずの全身は嘘の用に軽い。

自分の体をまじまじと見ていると、自分の影を覆い隠すようにモンスターの大きな影が見えた。


すぐそこにいる。


見上げるとそこには腹立たしく憎たらしい顔があった。


このスキルがどこまでこいつに通用するかはわからない。


だがこの憎らしい顔を歪ませたい。歪ませなければならない。


俺は拳を握りしめ、がら空きのあごに渾身の一撃を繰り出した。


「いつまでも見下してんじゃねぇ!!」


拳にとてつもない重みと痛みを感じた次の瞬間、目を開けるとそこには首から下だけのモンスターの体があった。


体感では二秒後ほどだろうか、少し離れた所に思い物体が落ちる音がして、赤い雨が降ってきた。真っ赤に染まっていく景色を見ながら、俺の体は地に伏した。


ー--


 目を覚ますと見覚えのない天井が見えた。ここはどこだろう、どれくらい眠っていたのだろうか。

体を起こそうとしたが激痛が走って不可能だった。


その時ドアが開かれ、驚いた表情の可愛らしい女性が立っていた。年は17くらいだろうか。綺麗な金色の髪の毛をしている。


「やっと目を覚ましたんですね、もう私死んじゃったのかと思って...よかったぁ」


女性は力が抜けたようにその場に座りこんだ。どこかで見た記憶があるが、思い出せない。


「あの、あなたが助けてくれたんでしょうか。」


「いいえ、助けてもらったのは私です。あの時来てもらってなかったらモンスターの食量になっている所でした。本当にありがとうございました。」


女性は立ち上がり深く頭を下げた。 


どうやらあの時助けた女性のようだ。ビビりすぎて何一つ覚えていないが。

 

まあ、こんな可愛い子の命を守れただけでこの世界に来た意味があるだろう。

 少し自分に自信を持てた。


「そういえば自己紹介がまだでしたね、私はヘルメ・ヴァレンタイン 好きな用に呼んでください!」

キャピキャピとした笑顔をこちらに向けてくる。


 すでに惚れてしまいそうです、どうしましょう。 最初に言っておく、俺は童貞ではない。

二年前までちゃんと彼女もいた。 いや、ほんとです。


「俺は松前ハジメ 呼び方は任せるよ。よろしく、ヘルメ。」

 ほら、普通に話せただろ?



「よ、よろしくお願いします、」

彼女は顔を背けて言った。


どうやらキモかったようです、やっちまいました。

さっき持った自信はもう無くなりましたとさ。めでたしめでたし。




「俺はどれくらい眠っていたんだ?」


気まずい空気に耐えられなくなった俺は勇気を振り絞って聞いた。


「えっと、一週間くらいでしょうか。ほんとに死んだかと思いましたよ...」


は。一週間? 俺は一週間もの間飲まず食わずだったのか? なんで生きてるのか不思議なくらいだな。 そういえばさっきからお腹がすいて仕方ない。


「そんなに眠っていたのか。本当に迷惑をかけて申し訳ない。

 ところで、厚かましいようですまないのだが、 何か食べ物を恵んでは貰えないだろうか...。」


「そうですよね!!すぐ持ってきますから、ハジメさんは休んでいてください!」


「ありがとう、本当に助かるよ。」


俺の言葉を聞き、ニコッと微笑んでパタパタと駆けていった。


 それにしても、身体強化を使えば代償にこんなことになるのか。まだ体が痛むぞ。 


これ、完璧にハズレじゃねえ?


いや、威力は本物ぽかったし。ポジティブに考えよう。簡単には使えねえな。


そんなことを考えているうちにヘルメが食事を持って部屋に来た。 いい匂いだ。


一週間ぶりの食事にゴクリと唾を飲み、パンにかぶりついた。


「シチューは熱いので冷まして食べてくださいね?」

彼女はクスッと微笑んだ。


ー---


たくさん食べて眠ってしまった男を見て金色の髪をした少女は頬を赤らめながらつぶやいた。


  「急に呼び捨てで呼ばれてびっくりしちゃった、もう。」


 






ここから本格的にストーリーが進んでいきます。よろしくお願いいたします。

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