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二人の朝は塩おにぎり  作者: 白妙スイ
1/7

朝はおにぎり作りから

 朝の陽射しがキッチンの窓から差し込んでくる。

 きらきらしたそれはなんだか雪の粒が降ってきているようだ、と、この初夏にはありえないことを思う。

 でもそれくらい気持ちいい。まだ冷房も要らないくらいの一番過ごしやすい季節。そんなときに寒さも感じず雪が感じられるなんて。

 そんな雪を浴びている僕は、先ほど炊飯器からボウルによそって、少し冷ましていた炊き立てご飯にしゃもじを入れる。軽く混ぜて、温度を確認。

 うん、いいだろう。

 まな板の上に広げておいたラップの上に、軽く塩を振る。さらさらっと、雪の粒がラップの上に散らばった。

 その上に少し温度の冷めたご飯を、しゃもじですくって乗せる。乗せたその上にも軽く塩を振って。

 ラップを両側から持ち上げるようにして、ご飯を丸くまとまるような形にして、手の中へ。

 僕の手の中にちょうど収まるくらいの大きさと量。ちょうどいいだろう。

 手の中に入れたら、きゅ、きゅっと優しい力で握っていく。

 力を込めすぎるとぎゅうぎゅうに詰まってしまうし、逆に弱すぎるとぼろぼろっと崩れてしまうだろう。

 だから力の加減をしながら、優しく握る。

 三角の形になるように手を使って、時々転がして位置を変えていくうちに、白ご飯は『ご飯』から『おにぎり』に育て上げられていく。

 しばらく握ったら完成だ。

 お皿の上でラップを半分剥がす。残ったラップ部分の上からそっと、お皿の上に着地させた。

 見た目はただの真っ白いおにぎり。

 実際、中にはなにも具などは入っていない。

 でも入っていなくていいのだ。

 このおにぎりを食べるひとは、まさにそれをご所望なのだから。

 この工程を何度も繰り返して、お皿の上には塩おにぎりが五つ並んだ。大き目のお皿だが、いっぱいになる。

 今度はおにぎりの状態が馴染むように少し置いておく。包むのはそのあとだ。

 さて、次は僕の支度。

 僕はあらかじめ作っておいた味噌汁の入った鍋の蓋を取った。

 ふわっと、出汁と味噌の食欲そそる香りが漂う。

 その香りに空腹を刺激されて、お腹が鳴りそうになった。

 味噌汁がしっかり煮えていることを確認したら、あとは簡単におかずを準備するだけ。

 フライパンをコンロにかけて、熱した上にウインナーを何本か投入した。ころころ転がすだけでいい。

 その間にレタスの葉を根元から剥がして、軽く洗って、小さく千切る。

 次には大きなトマトをまな板に置き、とんとん、と六つ切りにする。

 今日はこれだけ。でも立派な朝ご飯だろう。

 すぐにウインナーも焼けて、レタスとトマトと共にお皿に盛りつけた。

 味噌汁もお椀によそう。一人分しか作っていないので、それで鍋は空になった。

 塩おにぎりの乗ったお皿から三つを取って別のお皿に乗せて、さて朝ご飯だ。

「いただきます」

 小さめのダイニングテーブル。

 今日は独りで食卓に着いた。

 いや、独り暮らしなのだから、独りで着く日のほうが多いけれど。

 手を合わせ、まずおにぎりに手を伸ばす。

 ふっくら握れたそれを両手で持ち、がぶっと噛みつく。

 ふわっと塩のしょっぱさが広がり、それはちょうどいい加減であった。

 そのあとにはふっくら炊けて、優しく握られた白ご飯のほっこりした味。

 朝は塩おにぎり。

 少し前からそんな習慣になってしまったのだけど、今では欠かせない習慣になっていた。

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